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duality  作者: eight
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ep60 猛火獣

レックス達はサッカの町まで南下していた。

町には既に人影は無い。

「ここの住人も避難させたんですか?」

レックスがゼムに尋ねる。

「ああ、流石にグレイズに近すぎる。事が終わるまでは南部に向かわせたい。」

「追っ手の数はそこまででも無いらしい。」オリビアが言う。

「我々がここに残り、追っ手を食い止めるか?」

ベイルの言葉にゼムが答える。

「いや、済まないが後の事を考えると出来るだけ町の被害も抑えたい。」

「確かにそうだな。だが、森に入り、追っ手を分散させてしまうのも危険だ。出来るだけ開けた場所で引き付けたいところだな。」

「住人達は南へ?」レックスが訊く。

「ああ。」

「南東へも道がありますので、僕らでそっちに引きつけましょう。」

「あっちにも町はあるが、それなりに距離はあるから、その方が良いかもしれない。」


その時、大きな衝撃音が響く。

「何だ!」

皆が音のした方を見ると、一頭の魔物がその巨体で家を破壊していた。

サイの様な風貌であるが、その皮膚は岩の様にゴツゴツとしてヒビ割れている。そのヒビの奥で赤い光が燻っていた。鼻先には角の替わりに火打石代わりのハンマー状の岩がついていた。

「何だあれは・・・」


驚く一同にゼムが答えた。

「フレイムオセロス。魔界の火山地帯に住む猛火獣の一種だ。あんなものまで連れてきていたとは。」

猛火獣が頭の岩を地面に叩きつけると火花が散り、皮膚のヒビから炎が噴き出す。

「これは街道を行くしかないな。あんなものが森に入れば一帯が火の海だ。」オリビアが呟く。

「あそこの馬を使ってくれ。南に来た追っ手は俺達で何とかする。」

「はい!」

レックス達は馬に乗り込むとベイルが猛火獣に向け、剣から風の衝撃波放つ。

衝撃波を受けた猛火獣がこちらを見ると雄叫びの替わりに頭部を2回地面に打ち付け威嚇した。


「来るぞ!」

ベイルの言葉に皆は馬を走らせた。

街道を走り抜ける一同に猛火獣が突進してくる。

馬の方が速い、だが速度を落とせば追いつかれる。その巨体の一撃を貰えば、ただでは済まない事は明白だった。

「森を抜けるまでは危険だ!」

一同は周りの森に火が移る事を心配しつつ、全速力で街道を駆け抜けた。






ヤルグはほくそ笑んでいた。街に鳴り響く警鐘など、気にもならなかった。

聖剣の代価など、特に考えてもいなかったが、予想を大きく上回る収穫が得れた。

自身の身体の一部。ガフと殺りあうだけの材料は揃った。

ヤルグはその胸に、角を突き刺した。

すると吸い込まれるように角が消えていく。

全身が震え、体中を魔力が駆け巡る。

ヤルグはふらついて膝を付いたが、その魔力を感じて口元だけは笑っていた。

数分後、震えの止まったヤルグは、両手を見ながら、そっと握り締めた。

「待っていろ、ガフ。貴様の命に終わりを告げてやる。」

ヤルグは立ち上がる。遠くには二人の四天王が戦う姿が見えた。





どれだけの時間、走り続けたかは分からない。

先頭を行くオリビアが叫ぶ。

「道が開けるぞ!」

森を抜けると平原が広がり、奥には湖も見えた。

「しめた。水があるのは助かる。」

一同は標的を散らす為に、バラバラに広がり走る。

猛火獣は最後尾だったベイルをそのまま追い続けた。

ベイルは馬ごと湖に突っ込む。

猛火獣は湖の前で急停止すると口惜ちそうに鼻息を鳴らし、ゆっくりと振り返ると次の標的を探す。

全員、馬から降りて、馬を逃がした。

「やばいと思ったら湖に飛び込め。」オリビアが言う。


次なる標的はレックスだった。

レックスは突進のタイミングを見計らい、大きく横に跳んだ。

突進中の軌道修正は高くないが、その巨体故に大きく避ける必要がある。その所為で反撃に転じる事は出来ない。

湖から上がってきたベイルがオリビアに言う。

「まずいことになった。」

「どうした?」

「あそこに町がある。」ベイルの指さす先、湖の近くに小さな町が見えた。

「住人はいるのか?」

「分からん。フィーナ君!」

ベイルに呼ばれたフィーナが近づいてくる。

「何ですか?」

「あの町まで行って、住人を避難させてくれ。」

フィーナも町がある事に気づいて驚く。

「分かりました。」

「いや、私が行こう。」

「オリビアさんが?」

「ああ、奴を見るところ、近接でどうにかなるとは思えん。魔法の使えない私よりフィーナを残した方が良いだろう。」

「なるほど。では頼む。」

「ああ。」オリビアは再度馬に乗り、町の方へと駆けていった。


レックスが何度目かの突進を躱そうとした時、猛火獣は直前で止まり、地面に頭を打ち付けた。

身体から火が噴き出し、レックスを襲う。

咄嗟にフィーナが水魔法を放ち、火を消したが、レックスの鎧が少し焦げた。

「レックス!大丈夫か?」

「なんとか・・・」

「全員、万が一の時に火を消せるよう湖を背に戦え!」


全員が湖の傍に並び、魔法を撃てる者がそれぞれ放つが、効いているようには見えなかった。

猛火獣が全身に火を纏わせ、そのまま大きく前脚を上げて、思い切り地面を踏みしめると、背中の炎が火球の様に飛んでいく。

全員が何とか避けるも、着弾した火により、地面が燃え、段々と逃げ場が失われていった。

「泳いで逃げますか?」

「いや、町に行ってしまう可能性がある。」




町に着いたオリビアが住人に呼びかけた。

「魔王軍が襲ってきている。全員、ここより南の町へ退避してくれ。」

住人達は顔を見合わせて、頷く。

「我々も戦います。」

「いや、気持ちは有難いが、あなた方では無理だ。」

「いえ、我々には強力な守護者がいるのです。」

「守護者?」

「アニー!あの笛を吹きなさない!」

少女が首から下げていた蒼い笛を目一杯吹いた。

プスーと空気の抜ける音だけが鳴る。

オリビアは困惑したが、住人達も同様だった。

「今ので大丈夫なのか?」

「あの方だけに聞こえると申してたしな・・・」

「どういう事なんです?」

オリビアは住人達に尋ねた。



その時、レックス達の後ろの水面に大きな渦巻きが発生していた・・・



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