ep54 ポルガ崩壊
その日、ポルガの街に突如として警鐘が鳴り響いた。
城から出たロイが一人の兵を掴まえる。
「何事だ!」
「リベルが大隊を率いて街に向かっているとの事です!」
「リベル?奴はムビアナに向かったのではないのか。」
「分かりません。現場は混乱しております。」
「全兵を門前に集めよ!一匹足りとも街に入れるな!」
指示をしたロイも急いで街の入り口に向かった。
街の門の前に全兵を集め、その真ん中にロイが立っていた。
「ここで全てを食い止める。奴らにポルガの地を踏ませるな。」
統率の取れたポルガの兵たちは同時に返事をする。
街に続く道の向こうから、魔物の群れがやって来る。
その中央にはリベルがいた。黒曜石で出来た馬鎧を着ける二本角の馬のような魔物に乗っている。
魔物の群れが近づき、両者の間が5m程のところで止まった。
「済まないが、今日からこの地はガイラック様が貰い受ける。」
「抜かせ。ここを貴様の墓とする。」
「実現せずとも、口にするのは貴公の自由だ。」
その時、街の中から2つの岩が飛ぶ。投石機から放たれた物だ。
1つは魔物の群れに落ち、数体の魔物を弾き飛ばす。
もう1つはリベルの槍から放たれた炎の刃に寄って粉砕された。
「賢しいな。」呟いたリベルが馬で駆け出した。
それを切っ掛けに両軍が駆け出し、ぶつかり合う。
リベルが馬上から振り上げた槍で数名の兵が飛ばされる。
ロイが跳び蹴りを仕掛けるが、避けたリベルが切り払う。
ロイはその槍を掴み、槍の上を飛び越えるように蹴りを放つ。
顔に当たったが、リベルは動じずに、馬の前脚を上げ、ロイを弾き飛ばす。
ロイは空中で体勢を立て直し、着地と同時に構えた。
リベルが馬を降りる。混戦となる以上、馬では小回りが効かないからだ。
リベルが馬を撫でるとけたたましい鳴き声を上げ、馬鎧の無い部分が燃え上がる。
そのままポルガ兵たちに突進し、その角で突き上げた兵を燃やした。
その動きを追って振り返ったロイだったが、気配に気づき素早く屈む。
その上をリベルの槍が突き抜ける。
前に受け身を取りながら振り返ったロイが拳を弓の様に引きながら力を溜め、凄まじい速度で正拳を放った。
リベルの腹に直撃し鎧にヒビが入る。怯んだところを追撃の回し蹴りが入り、リベルを吹っ飛ばした。
立ち上がったリベルが槍を両手で構えた。
「なるほど。名ばかりではないと言う事か。」
ロイもまた深呼吸し、構え直した。
突進したリベルが三連突きを放つ。
それを見極めたロイは、全てを擦れ擦れで躱す。
だが、最後の一突きで槍が火を噴き、爆発する。
ロイは吹き飛んだが、何とか受け身を取った。
「拳で得物に勝てると思うのか?」
「勝たねばならんだけだ。ポッソムの仇は討たしてもらう。」
「仇討ちか・・・戦争に死はつきものだ。全ては小事に過ぎない。」
「小事だと!」ロイが拳を強く握った。
「私は任務を遂行したに過ぎない。守れなかった以上、貴公が殺したのと変わりない。」
「貴様!」
ロイが跳んで蹴りを入れる。
だが怒りから力任せになったその動きはリベルは読まれていた。
リベルはその足を掴むと地面に叩きつけた。
「ぐはぁ!」
地面に倒れたロイに槍を向けたリベルが言う。
「民の死で心が揺れるなど、所詮は貴公もあの愚かなライムと同じだな。」
面前に槍を突き付けられたロイがその鋭い目で睨みつける。
「妹は・・・ライムは愚かではない。」ロイの声が低くなる。
地面につけた両手に力を溜める。
「愚かなのは貴様だ。」
ロイが力を放った瞬間、一帯の地面がドゴッと揺れる。バランスを崩したその隙に足で槍を逸らし、そのままバク宙するようにサマーソルトをリベルの顔に入れた。
衝撃でふらついたリベルが片膝を付く。
「妹を侮辱する事は俺が許さん。」
「家族愛か・・・また下らない物を持ち出す。」
リベルが槍を構えると槍先が燃え出す。
「本当の強さと言うものを貴公に教えよう。」
「それはこちらの台詞だ。」
ロイも構え直す。
その後もロイとリベルは一進一退の攻防を続けた。
リベルの軍勢はポルガよりも遥かに多かった。
しかし、ポルガの民は鍛え上げられた肉体と卓越した格闘センス、そして日々の訓練による統率された連携能力を持っている。
ロイがリベルを引き付ける事で、彼らはリベル軍の猛攻を防いでいた。
徐々にではあるが、敵を街から遠ざけ始めた時、衝撃音と共に兵の悲鳴が響いた。
ロイが音の方を見ると、街から投擲された岩がポルガ兵に当たっている。
「馬鹿な!味方に当てたのか!」
背後からリベルの声が聞こえる。
「違う。味方ではなく、敵に当てたのだ。」
「どういう意味だ!」ロイはリベルを睨みつける。
近くにいた兵が門を指差し、震えた声で言う。
「ロイ王子・・・あれを・・・」
ロイが振り向くと、街の門の中から魔物達がやって来るのが見えた。
「何故だ・・・街には一匹も入れていないはず・・・」




