ep21 それぞれの道
数日経ったファーラン城は活気だっていた。
デルタニア本国から送られてきた大工達によって外壁の修理が急ぎで進められている。
取り返した城を再び奪われるわけにはいかない為、今まで以上に強固な外壁へとする必要があった。
また、オリビアと共に雑務に必要な人材も到着し、前線拠点とする為の準備が進められていた。
城内の一室で主要人物達による今後の動向についての話し合いが行われており、レックスも同席していた。
「ノビエの守備隊もこちらに呼び寄せた。先ずはここの防衛面を確固たるものにする。私は中隊を率いてコルシュ街道を北上し、ポルガへの増援に向かうつもりだ。ベイル殿はどうなさる?」
オリビアの問いにベイルが答える。
「ノワルドの中隊もオリビア殿に同行して、ポルガへ向かわせて下さい。私はレックス、フィーナと共にヌドラ湿原を抜けようと思います。」
「ヌドラ湿原を?」
「本来は我々も同行したいところだが、ポルガまでの道は遠い。レックス君は兎も角、フィーナ君では辛いものがあるだろうからな。その為に隊の進行を遅らせる訳にもいかない。道は良くないが、大きく迂回するコルシュより直線で抜けれる湿原の方が良いだろう。あの辺りならそこまでの危険も無いでしょうしね。」
「なるほど、了解しました。ではそうして下さい。」
「残りのノワルド軍はここに留まり、防衛に当たってくれ。ヴィクトールは小隊を率いて、周辺の調査に頼む。」
「次に攻め入るとすれば、北西のギルメル砦辺りでしょうか?」
「ああ、後は西のボルム城だな。メルダーナ山脈に沿うようにアリアンに抜けるルートも確保しておきたい。」
「了解しました。」
「氷壁はどうなりましたか?」一人のノワルド兵がオリビアに尋ねた。
「ああ、済まない。まだ破壊は出来ていないようだ。思ったよりも幅があるらしい。今は人が通れるだけの穴が開くようにギザ殿が尽力されている。開通したらこちらからもノワルドに隊を出す予定だ。」
会議を終え、部屋から出てきたレックスの元にフィーナが駆け寄ってくる。
「勇者様。どうかな、これっ!」
フィーナは今までの地味なローブから一転、黄色く可愛らしいローブを身に纏っていた。あの怪鳥の素材で出来た物だ。
「あぁ、その、凄く可愛いね。」レックスは少し戸惑いながら答えた。
「だよね!軽いのに丈夫で、しかも雷の耐性も高いんだよ!」
フィーナは満面の笑みでベイルにも同意を求めた。
「凄く似合ってるよ。」
「ありがとうございます。」
「おっ、出来たのかい?」後ろから出てきたオリビアが言った。
「あ、オリビアさん!本当にありがとうございました。」
「いやぁ、気にすることは無いよ。うちの鍛冶屋も普段は鉄やら皮やらのごつごつした物ばっか作ってるから、そういうのが作れて喜んでいたよ。」
オリビアとフィーナは「ここが可愛い」などと楽しそうに話しながら歩いていく。
レックスとベイルは二人を見届け、レックスが聞こえないように小さな声でポツリと言った。
「あれ、可愛いですよね・・・」
「ああ、だがあの色はな・・・」
「戦場では目立ちますよね。」
「ああ、しかもこれから行くのは湿原だからな。」
「すぐ汚れますよね。」
「まぁ、本人は喜んでるわけだし、君が上手くエスコートしてやってくれ。」
「が、頑張ります・・・」
ムシュラを閉じ込めた後もヤルグは書物を読み漁っていた。
ヤルグの死後から今日までの事も大体把握することが出来た。あの日戦った格闘家がポルガを建国したこと、騎士アレンは聖剣を人知れず隠し、その後僧侶と結婚してルベンドと言う国に移ったらしいが、後の戦争で国は失われている。位置から考えて、今も子孫が残っているのならノワルドにいるのだろう。
(魔王を倒して、平和を取り戻しても結局戦争を起こすところ、所詮人間も魔族も変わらんな。)
そして、魔力を上げるために重要なことが分かった。いや、正確には分かっていたが、魔族ではあまり活用しない物だった。
「装飾品」だ。特定の宝石や魔物の素材を用いた装飾品は着用者の能力を高める力がある。しかし魔族はそもそも人間と違い、身体の形状や大きさの違いが大きく、装飾品を均一な大きさで量産出来ない為、装飾品は権威や身分を示す為に着けることがほとんどだ。
それに魔力格差が人間の比ではなく、装飾品程度では焼け石に水と言っていい。精々、杖や武器に宝石を使用し術者の魔力を収束させる程度だった。
しかし今のヤルグは人間であり、十分に恩恵を受ける事が出来る。本来の力には遠いが、今よりは白炎を使いやすくなるはずだった。
ポーちゃん、もといルグリアスとの会話でそういった物に精通している嘗ての配下の所在は聞いていた。
ヤルグは支度を済ませると部屋を出た。
知らぬ間にムシュラの叫び声は聞こえなくなっていた。恐らく片割れが死んだのだろう。
奴が八傑集だったということは、片割れもそうだろう。
少なくとも3人は死んだか。
そう思いながら、ヤルグは砦を出て南へ向かった。




