第14話 中間試験の後で
「テスト終わったー」
古典のテストの答案用紙が回収され、先生がドアから出て行った途端に教室がにぎやかになった。
「これであとは、文化祭を待つだけだ!」
そう、ついに中間テストが終わったのだ。これであとは来週末の文化祭に向けて準備をするばかりとなった。
「よっしゃ、テスト終わったぜ守!」
「別の意味でも『終わって』ましたとか言うなよ?」
「それはまあ……気にするな! 数学が前回よりも手応えあったからいいんだよ!」
早速雅史がテンション高く絡んできた。何だか最近、こいつはハイなテンションでいることが多い気がする。無理してないといいのだが。ここのところは少なくなってきたとはいえ、まだ『声』は続いているんだし。
「それで今日はどうする? 文化祭も近いって言うのに、部活も休みになっちゃったし」
「ああ、そうだな……どうだ? 久しぶりに駅前のゲーセンで勝負でもするか?」
「おう! 前回連敗した分の借りは今日返してやるぜ!」
「俺も参加させてくれ! 俺も瀬川には前回負けた分を返さなければならないからな!」
そんな話をしていると、山崎が話に加わってきた。二人は前に行ったときに俺が一方的な勝利をおさめていたのを根に持っていたようだ。あの時は自分でもビックリの連勝記録だったからな。
「いいぜ。逆にお前らの連敗記録を増やしてやるよ」
「今回こそは勝たせてもらう! ジュースでも賭けようぜ」
「ああ。和田は?」
山崎は鞄を持って教室を出て行こうとする和田に話しかける。
「すまん。俺はこれから早速部活なんだ」
「うわ、大変だな。頑張れ」
「新人戦も近いからな」
こういう時に運動部の人たちは大変だな、と思う。新聞なら時間に余裕のある時に集中して作っておいて、後の作業を減らしておくことができる。だけど、日々の練習が大切なスポーツではそういう訳にはいかないのだろう。
”俺も中学の途中まではあんな感じだったのかな”
雅史の『声』を聞いて思い出す。たしか、雅史は中学の時、二年の途中まで陸上部。県内でもそこそこの実力を持つスプリンターだったと聞いた。本人は膝を痛めたからやめた、と言っていたがやはり未練というものはあるのだろうか。パソコン部でひたすらプログラミングの勉強をしていた俺にはよくわからないが。
かつての短距離走者は内心とは裏腹に、いつも通り人懐っこい笑顔をしている。
でも俺には、その顔に少し影が差しているように見えた。
雅史、山崎と一緒に俺は教室を出ると、そこにはサクラがいた。いや、タイミング良く通りかかったと言うべきか。
「あ、守に雅史! どうだった?」
サクラは以前と同じように元気に声をかけてくれる。
「まあまあといったところかな。まあ、いつもと同じくらいには点数も取れただろ」
「む、強者の余裕ってやつ? 響香ほどには勉強していないように見せておいて、守って結構いい点数を取っているんだから。特に理系科目」
わざと頬をふくらまして怒ったふりをしているサクラは、なんだか可愛らしかった。
サクラの言葉に雅史も続けて言う。
「だよなー。守って頭いいし、裏で暗躍とかしてそう。いろいろと」
「暗躍ってなんなんだよ」
こいつの俺に対するイメージって何なんだ。
「あ、そうだ。真面目な話になるけどさ」
俺たちは昨日の、佐々木との一件についてサクラに話した。
「うーん。やっぱり響香が暗くなっちゃっているのは変わらないのか……」
「何が原因ってあの『声』しか思い浮かばないよな」
だけど、それだけであんなに怯えるのはどうしてだろうか。
その後山崎が声をかけてきたので俺たちは別れた。
文化祭まで、あと八日だ。




