第13話 決意
中間テスト、第一日目が終了した。
「初日から数学とか……きつすぎるぜ」
廊下に出ると雅史は疲れた顔をするが、それほどがっかりとした表情をしていない。前回よりも少しは手ごたえがあったのだろうか。
「俺はまあまあといったところだったな。まあ、これで数学のことを気にかけずに勉強できるじゃないか」
これで古典が終われば言うことなしだ。まあ、最終日にあるのだが。
「まあ、化学は明後日だし! 今日は少しは遊べるぜ!」
雅史の得意科目は基本的に文系であり、俺は理系である。二年の文理選択でもそのようにした。ちなみにテスト日程は
一日目 数学 現代社会
二日目 現代文 英語
三日目 化学 古典
といった具合になっている。
「まあ、数学が終わったのはいいな! 気が軽くなる」
「俺は明日の英語が憂鬱だけどな」
山崎と和田が言う。
「まあ、明日に備えるために今日は早く帰るか」
俺がそう言うと、三人も同意して教室を後にした。
四人で昇降口まで歩いて来ると、佐々木を見かけた。俺は後ろから声をかける。
「おう、佐々木。どうだったかは……聞く必要がないだろうな」
優等生の佐々木のことだ。文系とはいえ数学でも十分な点数を取っていることだろう。
「あ、守君……守君も、今帰るところ?」
「ああ」
佐々木はいつも通りにふるまうように努めているようだが、少し暗い顔をしているのが見て取れた。
『今度は響香を助けてあげて。響香は何か一人で抱えてるように見えるよ。たぶん、だけど……』
『俺たちは自分でできることって限られているだろ。だから自分一人じゃあ今回のことに限らずさ、何かを解決していくのって難しい気がするんだよ』
ふと、思い出す。サクラの言葉と、自分の言葉を。
もう同じ轍は踏まない。目線で雅史と相談した後、山崎と和田には先に帰ってもらい勝負を始める。隣にいる雅史とは、具体的なことは何の打ち合わせもしていない。でも親友を信じて、力を借りる。
「なあ、佐々木。今更だけどさ。俺たち、普通は信じられないような、大変なことになっているよな」
サクラの時と同じ言葉で始める。
「だけどこんな状況だからこそ、もっと人を頼ってもいいんじゃないかと思うんだ。俺たちにできることは、限られているんだから」
「そうそう、俺も結構守に迷惑かけっぱなしだしな! 少しくらい迷惑かけるほうが友人としての距離も縮まるってもんだ!」
「お前にはこれ以上、新聞部での尻拭いはやめてもらいたいけどな。特に誤字脱字」
「いやあ、少しくらい間違った場所がないとチェック者も退屈じゃん?」
「なわけあるか!」
傍から見たらふざけあっているようにしか見えないだろう。いや、現にふざけあっているのだ。
この『声』を解決できる方法なんてわからない。だけど、マンガの主人公みたいなかっこいい方法では上手くやっていけるなんて、思えないのだ。
だって、俺たちは普通の高校生だから。
高校生らしく、仲間と些細なことでふざけあいながら、今を楽しみながら。でも、真剣に、全力で取り組んでいこう。弱音も吐こう。大変なことには、大人しく助けを求めよう。
それに、今話してもらう必要はない。さらに先輩からもアドバイスをもらったではないか。
『本当のことを言いたくないんだとしたら、それを言った場合本人に何らかのデメリットがあるってことでしょ? だったら告白することにメリットがあることを示せばいい。あと、何を言われようと構わないって姿勢をみせることも大事だね』
つまり、これからそのメリットを見せつけてやればいいのだ。相手が話したくてたまらなくなるくらいにな。
文化祭まで、あと11日だった。




