第12話 試験の日
更なる展開を迎えたのは、中間テスト初日だった。
守はいつもよりも少し早い時間に学校に着く。この時間なら教室で静かにテスト直前の勉強ができるかな、と思ったが下駄箱を見る限りどうやらみんな考えることは同じようだ。
運動靴から上靴に履き替えると、雅史が昇降口から現れた。
「おはよう、雅史……お前もか」
「おう、守。おはよう。とうとうテスト当日になっちまったな……」
「ああ」
”なんでテストも文化祭の準備もあるこの時に、こんな状況になってるんだよ……”
雅史の『声』が聞こえてきた。うん、激しく同意だな。
「だからって点数が悪くなった言い訳にするなよ?」
「し、しねーよ!今回は少なくとも前回よりもマシなはずだ……多分」
こいつは基本的には学力は学年平均かそれよりも少し上なのだが、苦手な科目になると本当にダメなんだよな。特に数学とか、数学とか。
「大丈夫だ……野沢先生(数学担当)にもあれだけ教えてもらったんだから今度こそは……!」
そのセリフ、一学期の期末試験の時にも言って、結局夏休みに補習を受けていたような気がする。本当に大丈夫だろうか。さっきはああ言ったが、今回は正直言って『声』の件でテスト勉強のほうに支障が出てもおかしくない状況だ。
「まあ、ケアレスミスには気を付けようぜ?前回数学の後の現社で一六点を取り逃した雅史君?」
「うっ……分かってるよ」
雅史は前回数学でライフポイントの残りが少なくなってしまったのか、その直後の現代社会のテストでケアレスミスを連発。せっかくの八二点が六六点になってしまっていた。もったいなさすぎる。
「おはよっ守。それから雅史も」
「俺はおまけなのか!?」
後ろから明るい声をかけてきたのは、もちろんサクラだ。サクラはあの校舎裏での一件以降、以前のように、いや以前よりも明るくなったと思う。
”本当に良かった、サクラが元気になってくれて”
「えっ」
やばい、と思ってサクラの顔を見ると真っ赤になっていた。
「えっと、いや、これはだな……」
俺も緊張してうまく話せない。やばい。
「じゃ、お二人で仲良くな」
雅史は無駄に気を利かせて去って行ってしまった。貴様、友を見捨てるのか!
しかし文句を言っても仕方ないので、俺はサクラに向き合う。
「まあ、テスト頑張ろうぜ……」
だけどありきたりの言葉しか口にできなかった。
サクラはうん、と言って自分の教室に向かおうとする。だけど、すぐに振り返った。サクラの瞳がまっすぐに自分を見つめてくる。
「守、この間は本当にありがとう。わたしが勝手に変なこと言ったのに聞いてくれて」
この間、というのは校舎裏の一件のことだろう。
「いや、俺こそ無理矢理に聞いたようで悪かったな。すまん」
「守が気にすることじゃないよ」
だけど、とサクラは続けた。
「今度は響香を助けてあげて」
えっ、と以外の言葉に驚いてサクラを見る。
「響香は何か一人で抱えてるように見えるよ。たぶん、だけど……」
「まあ、俺もそうは思っていたけれど。サクラ、結構他の人のことも見ていたんだな……」
あれだけ悩んでいたのだから、気づいてないのかと思っていた。
「うん。あ、SHRまでに時間がないから急ごう?今日のテストが終わったらまた話そうよ」
「ああ」
俺たちはそれぞれの教室に急いだ。




