第15話 文化祭開始
「それではこれより、第32回和泉祭を始めます!」
体育館全体で歓声が上がる。ついに金、土、日曜日の三日間にわたる文化祭が始まったのだ。
野泉南高校の文化祭、和泉祭は各クラスと文化部(及び一部の運動部)がそれぞれの展示を開く。また、体育館に設けられたメインステージでは、軽音楽部などの部活、及び有志による発表が行われる。さらに言うと初日が校内発表。土日である二日目と三日目が一般公開だ。
まあ、いたって普通の高校の文化祭であろう。
「ということで……ついに文化祭が始まったわよ!」
開会式の後部室に集合すると、まず原田先輩の言葉に続き中村先輩が改めて説明を始める。
「今日から三日間の仕事は打ち合わせ通り。新聞を配布しつつ、三日間で各展示物やステージ参加者の取材の済ませ、文化祭が終わったら『号外!文化祭特集号』を発行する」
予定が決まっている時点で『号外』とは呼べないよな、と思ったのは俺だけだろうか。
「取材のメンバーは決めてあるんだし、アポもとってあるんだから遅刻しないように」
「「「「はい!」」」」
あと、と中村先輩は言葉を続ける。
「結局『声』に関しては解決とまでは行っていないが、それでも前よりは少なくなっているしな。まあ、俺たちにできることは特にないみたいだから。今まで通り、何か問題や気になることがあったら相談して対処していこう」
俺の初日の仕事は午後からなので、まずは他の展示を見て回ることにした。
「ここがサクラたち二組の教室か……」
一年二組の教室の前に立つと、そこには『レイジ~起死回生のゲーム~』という看板がかかっていた。おそらく某大人気映画のパロであろう。
「あ、守。来てくれたんだ」
教室の中に入ると小さな待合室があり、サクラが受付をしていた。
「ああ。早めに来ておかないとな。クラスの仕事と部活と両方あるからさ」
今日は午後の、クラスの模擬店担当時間の前にとにかく回っておかないと。二日目からはさらに人気が高いところを調査して、素早く取材を済ませなければならないのに。
「まあ、大変だよねー。そういえばさっきもさ、原田先輩が”アタシに何も言わずに模擬店の担当時間を勝手に変えるんじゃない! 取材の時間とかぶるでしょうが!”って。かなりの大声だったよ?」
あの人は教室でも平常運転のようだ。原田先輩がクラスの人たちに向けて怒鳴るその光景が俺たちはリアルに想像できて、俺はサクラと二人で腹を抱えて笑った。
「いつも通りみたいなんだよな。安心したよ」
本当に先輩たちはすごい。
「あ、順番来たから教室に入って。というか、一緒に入ろ?」
「ああ。っていいのか? 仕事があるんじゃ?」
俺が言うと他の受付の人たちが何か意味ありげな目をしながら肯定したので教室に入る。俺とサクラは『そういう』関係じゃあねえぞ?
それからは俺がスロットで一番高い点数を獲得したり、サクラがなぜかじゃんけんゲームで連戦連勝だったり、サクラの友達の鈴木優子が半分涙目になってサクラに子ども扱いされたりと、このクラス展を楽しんだ。
教室を出たところで、サクラが話しかけてきた。
「守すごいねー。あのスロットって本当はものすごく損させる予定で作ったゲームだったのに」
「そうなのか? 案外すんなり得点できたが」
「いや、あれが完成してからみんな何回かやったんだけど、まともに得点ができた人なんてうちのクラスでも2,3割くらいだったよ? それも何回かやってコツをつかんだうえでだったのに」
どうやら今日の俺は非常にツイているようだ。
その後しばらくサクラと話してから、今度は佐々木のいる四組の教室に向かった。




