その香りに惹かれて
お読み頂き有難うございます。
「ふんっ!」
「ユララちゃん、コツをつかんだねー」
「偉い偉い」
「うふふ、頑張ります!」
悩む暇もなく貝が籠に大盛りな光景、港町ならではよね。今日も貝剥きが実に捗るわー。
港町マダム達からのお褒めの言葉も有難いし!
手に嵌めて使う爪みたいな器具と、ヘラみたいな器具でガシガシ剥いていくわよ!
そう、悩んだけれどね……。
……面倒だったけれど……。こう、仕事の時は仕事に勤しまないとね。
「うおよいせっ!」
はあ、ゴツゴツした貝からこんなツヤツヤしたクリーミーな貝の身が隠れているなんてね……。
ザルに載せた姿も実に映えてるわ……。絵を描けたら名画になりそう。
さてと、コレが店頭に置く最後のザルかな。
コレ置いたら2階に預けてるレニアを迎えに行って……お昼ご飯何食べようかな。
料理がド下手くそなものだから……精進しないととは思ってるけど……。気楽に裏のパン屋の惣菜パンか、はたまた……新規のお店を開拓すべきか……。
「お早うございます、ユララ嬢! 仕事熱心ですね!」
……んん?
然りげ無くノシノシ入ってきたの……何処かで見たイケメンいや、昨日モメたイレイブ副団長様じゃないの。
「……お早うございます……?」
「これ、弁当です! 昼飯はまだでしょうか?」
「え? あ、はい……?」
つい、簡素だけど小綺麗な包みを渡されてしまったわ。わ、いいソースの香りがするわ……。重さからしてお肉系を挟んだパンかしら。労働後の胃にクリーンヒットするわね。
……しかし何処製のお弁当なのかしら? 見たことない包みねえ。何処のデリかしら。
案外交易都市も広いから、開拓出来てない道も多いのよね。
「……あの、イレイブ副団長様」
「オレオンとお呼びください! レグザンドの方は兄貴と一緒ですので棄て置いてください」
「いやお名前は棄て置きませんけれど……本当に頂いても宜しいのですか? 大変美味しそうですが」
「俺の手製です!」
「まあ凄い。ですが、……お昼を譲って頂くわけには」
「あ、此処にもう5つあります。焼き菓子も有りますので」
……え、すっごい。近衛騎士で副団長で料理男子とかどんなレアケース騎士なの。二次元騎士なの? はたまたスパダリというツチノコ的存在? そしてよく食べるわね。このサンドイッチぽいパン、私の両手を広げたよりデカいわよ。どんなデカさのパンなのよ。
「レニアちゃんはどうしたんですか?」
あ、昨日に可愛い我が子と呼ぶのは流石に止してもらったわ。外聞もあるけど、何より小っ恥ずかしいから。
「預って頂いており寝ております。今迎えに行くところです」
「成程……。もしかして、今の職に就かれたのは、レニアちゃんを預ける事が出来るからですか?」
「左様ですわ」
そりゃね。前職で培った文官的な技能は使わないの? みたいな葛藤は有ったわよ。
悲しいかな、そういう所で働くとなると……1日仕事で残業ありでしょ。そんなに沢山の時間預けたら託児所料金が高すぎて無理なの。後、普通にレニアと離れたくないわ。
まあ、事務仕事そんなに好きじゃないし、魚屋さんで働くのは人間関係素晴らしいの。しかも、結構お魚の端っこ貰えるし大好きよ。因みに美味しい魚と適当な野菜も放り込んでも美味しい適当なスープが私の主食。肌艶も良くなったわ。
いやあ、いい職場を見つけたわね。
「ご、ご苦労されて……!」
「いえ、苦労なんてしておりません。此処へ来て良い職場の方々に恵まれましたし……お昼ご飯を有難うございます。広場で頂きますわ」
「お、俺もご一緒しても?」
「お……どうぞ」
いけない、一瞬断りそうになったわ。
交流しないといけないんだった。
と言う訳でレニアを背負って像のある広場にご飯食べに行く事になったわ。
「あ……」
滅茶苦茶雨降ってくるまではね……。
大時化ってやつね。船が帰ってきてからで良かったけれど、こりゃ明日は魚は捕れないわね。休みだな。
「……あの、俺の宿の」
「流石に殿方と密室にいる訳には……」
子持ちとは言え一応未婚の女なもんで……微妙な所なのよね。一夜の過ちとかはっちゃけといて! なのだけれど。
まあ、気にしなきゃ良いんでしょうけれど、其処まで開き直れないし……。
後、普通にオレオン様に迷惑を掛けたくないってのもあるの。
中途半端よね。
「ち、違います。1階に机と椅子が有るので借りましょう」
「それなら……」
だから、ご招待に預かることにしたわ。
ユララの主食は素材感を活かしたスープです。味付けは殆どなしなので、塩分は昼食で摂っております。




