物事は大体地味な土台で出来ている
お読み頂き有難うございます。
そもそも他人の魔力なんて、そうそう見えないんだわ。
そりゃ強い魔力の人の傍に寄れば何か強そうだなってのは分かるけれど。
チートは限られてるからチートなのよ、きっと……。チートに会ったことないから伝聞だけど。
だから、無理矢理にでも凡人が具現化させなきゃならん訳で……。
……あー、物語みたいに透明の謎玉に手を置いたらピカーッて分かる、的なのだったら良いんだけど……そんな便利なものは無いわ。
現実は、悲しくも非マジカルでガチローテクで滅茶苦茶アナログなのよねえ。謎の力でテクニカルになーれ! と何度も思うわ。
血統鑑定は大変なのよ。
まず、念入りに熱湯消毒した特別製の硝子容器に、調べたい人の魔力を注ぐでしょ。
でも、この時点で失敗率は4割。
……魔力操作に慣れてない人ばっかだからねえ。
この丸ごとチキン入りそうな大きさの容器でも、零さず注ぐ、という魔力コントロール出来なくて、硝子容器を割る人多いのよ。
やり直し過ぎた挙句の果てに、魔力欠乏に陥る人も多いし……。
若干口が窄まって細くて、デカい割に乾かしにくいし……!
で、無事注げた人の魔力に、私が古代光魔術を掛けると……硝子容器の中でウネウネと魔力が動くの。光る中でこう……神秘的とキモいの半々くらいの動きでね。
「何アレ、きっも……」
「……」
一生懸命消毒した硝子瓶8個も割っといて、何だコイツぶん殴るわよ……。
そんなイライラも隠さないといけないのよ。
よく見せる為に無駄に光らさないといけないし……。無駄に瓶を掲げた腕が疲れるわ……。
もう少し容器小さくして欲しかった……。
魔力だけだしカラみたいなものだけど、硝子だから若干重いのよ……。指が入らん謎の取っ手も要らんでしょ。ビーカー的コップとかで良いんじゃないかしら。
「理系美女、光る探求の君が出てきたぞ……」
「滅茶苦茶光ってるな、相変わらず」
あー。
私文系目指したかったのに、理系に進まざるを得なかったんだけどなー。 辛うじて理系テストに合格出来た程度の文系なのに!
因みに、このダサい『光る探求の君』は職場ネームとなっておりました。
あの魔力のウネリは……無駄光りしてて目が霞むんだわ……。目盛りが光って読み辛いし!
「閣下、10001型の木の魔力、85型の水の魔力が合わさっております」
「ふむ、説明せい」
「何っこの女! だから何っ! イチイチ長いっ!」
この犯ざ……いえ、詐称女煩っいなぁ。
だから、今現在登録されてる王族の魔力パターンとは被らんってことよ。事前に膨大なデータベースとにらめっこして目と肩が疲れたわ……。
しかし、この詐称女は呑気ね。
遠くにガタガタ音鳴らして歩いてくる騎士団の軍靴の音、聞こえないの?
ピンチ度マックスさが分からんのかしらね。危機感を持って欲しいわ。
「10001型の木の魔力は、主に東南東のクイキ森からの波長による魔力です……」
「光る探求嬢は今日も麗しいなぁ……」
「ミステリアスだ……」
気が散る……。変な合いの手いえ、褒めてくれるのは嬉しいけどさ。
光浴びまくりで過敏症になった皮膚を庇う厚化粧と、同じく光に弱い目を庇う遮光ヴェールに囲まれた顔なんだけどな……。
イマジナリー美女ビジュアル、滅茶苦茶この派手ヴェール補正なんだよなあ。
本来はソバカスが鼻と頬にキツく散ってて、ド近眼もキツくて、髪も纏まり悪くてうねるし雨の日はボンバーなヘアスタイルだし……毎朝鏡に向かうのが辛いわ。
「つまり、どの国の王族とも合致しません」
「捕らえよ!」
「いっびゃあーーー!」
で、めでたくあのくねくね上半身半回転系お嬢様は、血統を偽った罪で囚われの身の上にとなりましたとさ……。
今回はあまり同情出来なかったわね。
真剣にしんどくてドロドロなケースも有るから、今日はスッキリ系だとも言える……。
スピード逮捕だったしね。
疲れた……。
噛まずに発表出来たかしら。
でも、この派手なパフォーマンス、毎回本当に要るの? お役人が粛々と私らがデータ集めた奴を牢屋の前でダーッと読み上げれば良くないの?
この時もひたすら辞めたかったわ……。
何かこう、人けのないサイレント仕事がしたい……。
ひたすらパンにチーズ挟むとか……。お腹空いた……。
しかもラストは無駄にしずしずお辞儀して、後ろ下がらなきゃならないしね……。転んで後頭部打ちそうだったわ。疲れてたわね。
「今日は、ユララお姉様」
「……ルシアン、貴方、何故此処に」
「おお、水仙の射手の君……」
「並ばれると更に神々しいな」
そういや、この時も従兄弟のルシアンに遭遇したわね。
パフォーマンスは大変です。




