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ど近眼の鑑定令嬢ですが、あの一夜が見えていませんでした  作者: 宇和マチカ


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12/14

またしても覚えがない

お読み頂き有難うございます。

「しかし、俺が絡まれたばかりにユララ嬢へご迷惑を」

「お、お顔を上げてください。オレオン様がお悪いのでは有りませんわ」


 申し訳ないし、ボッタボタと机に雨水が掛かる……。

 頂いたサンドイッチを食べきっておいて良かったわ。派手に塗れちゃうし。

 そうだわ。お礼言わなきゃ。


「それに頂いたお食事、大変美味しかったですわ。オレオン様は料理上手でいらっしゃるのですね」

「食べてくださったんですね! 良かった……。あ、其処の簡易竈で温かいお茶を用意しますね」

「オレオン様に其処までして頂く訳には」


 ……此処でお茶なら私が淹れます! って言う少女漫画的ムーブをすべきだと思うのだけれど。

 ……5回に1回程度しか成功しないメシマズ系だから御迷惑は掛けられないのよ。

 だって、火を着けるのは兎も角、竈の火力の強弱なんてとても操れない! タッチパネルなんて言わないけれど、強弱のツマミは必須でしょ!?

 あーでもこういう所、前世ムーブしてて滅茶苦茶嫌!

 ああ、繊細な料理スキルが欲しい……。レニアの為に!


「どうぞ! 砂糖は要りますか?」

「え、あ……有難うございます。砂糖は結構ですわ」


 ホッカホカな香り高いお茶が私の眼の前に現れた! しかも、イケメンの微笑みと共に!

 ……私って、無能が過ぎる。

 因みに甘味だけれど、白いお砂糖は高価だから黒糖よ。

 って、オレオン様滅茶苦茶砂糖ポットから黒糖入れるわね。5杯はヤバくないかしら。


「ホッとしますね……。ユララ嬢の顔を見ながらだと余計に」

「そ、そうですかしら。そんなに見られる顔でも有りませんが」


 ……仕事用薄化粧だしねえ。オマケに湿気でヨレてそう。しかも髪も膨らんでボンバーしてそう。

 ちょっと恥ずかしくなってきたわ。


「貴女が俺を救ってくださった時と同じく、貴女は美しいです」

「……? 私がオレオン様を救った、ですか?」


 人助けですって? しかも恋に落ちちゃうレベルの人助け?

 ……全く覚えがない。

 と言うかそんなのばっかりだけれど……。


「ええ、アレは俺が10代の頃でした」

「まあ……」


 と言うかオレオン様ってお幾つなのかしら。

 私はこの間21歳になったばっかりだけれど。


「何故か母が不貞を働いたとの疑いを掛けられまして」


 滅茶苦茶前の仕事でよく取り扱うよくあるケースだったとは。

 滅茶苦茶有りすぎて覚えてないわ。インパクトのあるケースって酷すぎるの多いからなあ……。しかし、イレイブ家……全然思い出せない……。

 多分不貞を疑う父親がコッソリ血統鑑定しようとしたら煩雑すぎて出来なくて、バレてモメて泥沼化した一般的なケースかな……。


「ですが、血統鑑定は私だけの力ではありませんよ」

「勿論、ウラディーブ一族のお力だと承知はしています。ですが、あの時母と俺と弟に掛けてくださった言葉があったから、俺達は……」


 ……全く覚えがない。私以外のウラディーブ一族(しんせきのだれか)では無いのかしら……。

 依頼者は総じて凹んでるから、気遣いの言葉は欠かさないし……。多分見えてなかったと思うし。

 私も色んな人に声掛けしたけれど……そんなにオリジナリティ溢れる科白言った覚え無いわ……。

 ……取り敢えずお詫びしておこうかしら。


「……覚えはありませんが、お気持ちを和らげる為にお掛けした言葉が、少しでも慰めになれば幸いです」

「やはり、貴女はお優しい……。覚えてなくても同じ言葉です」


 えっ、そうなの?

 ……私の中で鉄板なテンプレ科白だったの!? いい加減過ぎるわ……。


「しかし、ユララ嬢へ迷惑を掛けたあの兵士は見逃せません。今度見つけたら後ろ手に縛ります」

「余罪が早く分かるといいのですが」


 豪雨の中でも飛ぶあの鳥が、早く答えを携えて帰ってくるといいのだけれど。

 変な被害が出る前に……。





概念美少女に凹んでいた時に優しくされたので恋心を抱いたオレオン少年……という少女漫的画展開です。

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