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ど近眼の鑑定令嬢ですが、あの一夜が見えていませんでした  作者: 宇和マチカ


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歩み寄りは証拠になるか

お読み頂き有難うございます。

「紙とペンで何か出来るのですか?」


 オレオン様の髪の毛、未だ濡れてるわね。

 此処で『んもうっ、ちょっとズボラなんだから☆

 私が拭いてあげまーす』的少女漫画展開になるルートがチラ見えした気がするけれど、無礼だし無視ね。


 だって、無断で人様の頭に触るとか無礼すぎやしないかしら。しかも大して仲良くもないのに。

 ……少女漫画ヒロインの礼儀ぶん投げ図々しさって、紙一重よね。大体、騎士に無礼なんてしたら物理でぶん投げられそう。


「はい、この足跡を写します……」

「移す? とは。……おお、神々しい光が」

「えっ、何で光った!」


 あ、ギャラリーが集まってきちゃった。

 さっきの女騎士が騒ぐから……。

 ……もっと地味にやりたいわ。光るのなんとかならないかしらねえ。


 えーと、なんていうのかしら。

 原理的には濡れた足跡に紙をベチャッと載せるでしょ。

 それを古代光魔術で写し取るのよ。

 細かい調節は必要だったけれど出来ないかなーと思ってたら出来たわ。あぶり出しみたいなノリだったのよ。他の親戚達にもやらせてみたら出来たから、あの時は盛り上がったわねえ。

 因みに原理はよく分からないわ。

 

他の属性の人って細かい原理とか分かるのかしら。なんかそれっぽい指導書とか読んだけれど、フィーリング脳筋系か理屈至上主義みたいだったしなー。


「す、凄い! 紙に足跡がついてます! こんなにコンガリと」

「……ざ、ざっとこんなものですわ」


 やべ。考え事してたら光源強すぎた。紙が焦げてるわ。


「それで、足跡の形を紙に焦がしてどうするのですか?」

「ええと……足跡って、色んな情報が詰まってますのよ。歩く時の力の入れ方で靴底の減りが違いますし」

「そうなのですか! 流石ユララ嬢は目の付け所が違う」


 ……前世の科捜研的な番組の受け売りだけどね……。

 あのオレオン様への言い寄り方……高位貴族へすり寄って国外追放された詐称女に似てる気がするのよね。見えてなかったから勘だけれど。


「それで何故靴跡を紙に?」

「証拠を残して、問い合わせしようと思いまして」


 そもそも科学がないから魔術で捜査……とかもあんまり無いし。

 お家乗っ取りは大罪だから、お金掛けて血統鑑定がされるけどね。


「証拠……ですか?」

「先程の方、お名前もナナ・トプスさんとお聞きしましたし……。余罪があるのではないかと」

「……あの者はそんな名前でしたか」


 いや知らんのかい。

 付き纏われてたかといって、名前すら知らないとは。まあ、関係持ちたくないのかな。それでも関心がなさすぎる。


「この前もアプローチ……秋波を送られておられましたでしょう?」

「秋波? あの者は第五騎士団所属の臨時雇いだと思うので勧告しておきました」


 あの派手なアプローチが効いてないの……。さては常にモテモテだからスルー耐性が付いてるのかしら。

 と言うか、あの人騎士じゃないし兵士だし経歴詐称じゃないの。

 詐称多いなあ。


「この紙をスッテヌコロリンへ問い合わせしてみようかと思います」

「……まさか、血統詐欺ですか?」


 ……今更だけど故郷の国の首都名はスッテヌコロリンっていう……派手に転んでそうな名前なのよね。毎回半笑いになりそうよ。誰が付けたのよ。


「先程も申し上げましたが、血統鑑定は大変手間と費用と時間が掛かります。

 ですから、刑の確定した犯罪者は足跡やその他の特徴も保存するようにしました」

「なんと……」


 所謂簡易だけれど、犯罪者データベースを作ってある訳よ。

 いやそれも有ったからブラック業務で上乗せされたってのも……有るか……。私のせいでも有るのか……。いかんわ、持て囃されたからって、変な前世ムーブしてるかも。しかもバックレして……反省しないと。


「しかし、犯罪者は兵士になれない筈では……」

「臨時の兵士全て血統鑑定は致しませんし」

「……た、確かに……」


 でも取り敢えずあの人怪しいし、何とかしなきゃ。

 手紙は伝書鳩的な魔獣がいるから、結構早く着くのよね。

 それに、詐欺師って似たような手段を別の場所でもよく使うからなあ……。

 変な成功体験が有るからかしら。


「俺がもっと早く職務怠慢で切り棄てていれば……」

「往来でそれはいけません。通行人に心傷を負いますし」

「そうですね。ユララ嬢は本当に聡明だ」


 ……あんまり褒められた気がしないなー


微妙な関係の時に突撃出来るヒロイン的豪胆さはユララには無いようです。

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