最弱魔王は外へ行く
ーーーアリティア王国
王都は人間領の北西側に位置するため、魔族領から最も遠い王都。
国の面積は人間領の国の中では一番広く、人口も多い。
『勇者あーるぴーじー』の主人公の村もこの国の中にあった。
ゲームの序盤の大半をこの国で過ごすことになる。
主人公と幼馴染は村を滅ぼされた後、この国に来て魔王が復活したことを報告する。
そして復讐のためこの国で冒険者となり、魔物を倒して力を付けていく。
この国で序盤のパーティは主人公と幼馴染の二人しかいないため、比較的敵のレベルが低く設定されている。
なので、レベル1の俺でも安心して過ごすことができる国というわけだ。
しかも、隙があれば主人公と幼馴染に会いにいくことができる。
せっかくこのゲームの魔王になったんだ。
少しくらい主人公にあっても罰は当たらないだろう。
というかめっちゃ会いたいし、なんでもいいから話したい。
うん、最初に行くのはやっぱりアリティア王国だな。
「魔王様、紅茶でございます」
執事のダクトが紅茶を机の上に置いた。
あとゲーム内ではあまり語られることはなかったが、この世界には素材は少し違えど日本の食べ物や飲み物が普通にある。
俺がここに来て最初に食べた物もめっちゃ美味いステーキだった。魔物の肉らしいが、食べれる物でほんと良かった。
魔族の主食が虫とかだったら早々にリタイアしてたかもしれない。
そういう点では魔王の威厳を保ててよかった。
「本日のご予定はありますか?」
「少しだけ外の様子を確認したいからロンガルドの外に出ようと思っている」
今日はこの魔王城がある街、ロンガルドの外へ行く。
その理由としては、二つある。
一つ目はこの世界における戦闘について。
二つ目は敵とのエンカウントについて。
ゲームではターン制を採用しており、この世界における戦闘はどういった形で行われるのか調べる必要がある。
この世界でゲームっぽいところはただステータス表示ができるという点のみだ。
この城に住む者達はNPCではなく自我を持っているし、ゲームとは違いアイテムも無制限に持つことはできない。
ここはゲームの世界だが、限りなく現実的なものになっている。
敵とのエンカウントも同じ。
ゲームではエンカウント係数を用いており、その係数が歩く度に減少する。そして0になった時に敵との戦闘が強制的に始まるのだ。
こんなに現実的なのに、強制戦闘やターン制は想像できない。
しかし、一応確認するだけしてしないと万が一があるからな。
「かしこまりました。ファミリエーテ様にお伝えします」
え、ファミリエーテに言っちゃうの?
「む、ファミリエーテは忙しい。別の者でも良いのでは?」
ファミリエーテの性格的に付いてきそうだ。
緊張感が半端ないからできれば違う人の方が嬉しかったりするんだよなぁ。
「申し訳ございません。もうお伝えしてしまいました」
「は?」
部屋の外からドタドタドタドタッと音が聞こえる。
コンコンッ。
「は、入れ」
「アレク様、お外へ行かれるのならばこのファミリエーテをお供に」
そこにいたのはファミリエーテだった。
幾ら何でも早すぎない?
全く連絡しているそぶりを見せなかったんだが……。
ダクトの『念話』スキルか。
正直、この執事は優秀すぎて怖い。
いないと思ってもいつのまにか背後にいたり、喉が渇いたなぁと思ったら紅茶を出してきたり………あげればきりがない。
ファミリエーテに教育されたと考えれば確かに納得なんだけど………スキルでしかできないようなことを平然とするんだよなぁ。
一応ダクトのスキルは確認済みで、心を読むようなスキルはない。
スキルを誤魔化しているとは思えないし、まぁ何も俺の弱さに気がついてないっぽいから放置でいいか。
「アレク様! どうか私を!」
ぼけーっとダクトについて考えていただけなのに何かを勘違いしたのかファミリエーテがそう言った。
「わかった、ファミリエーテにお願いするとしよう」
「ありがとうございます!」
ファミリエーテが嬉しそうに微笑んだ。
普段キリッとしてクールなファミリエーテとのギャップにやられそうになるが、なんとかポーカーフェイスを保ちながら俺はこう言った。
「よし、それでは一時間後に行くとしよう。準備をしておいてくれ」
「かしこまりました! 失礼します!」
ファミリエーテは軽い足取りで執務室から出て行った。
こうして世界最強と二人きりの外出が決定した。
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