最弱魔王は恐怖する
少し短めです!
ロンガルドは大きな森に覆われており、ここに主人公が来るのはゲームも後半ということでかなり強い魔物が出現する。
本当ならばレベル1の雑魚が来るところではない。
しかし、今回共に行動するのはファミリエーテだ。
魔王が俺である以上、世界最強はファミリエーテに間違いない。
本当は俺の護衛を沢山連れて行った方が安心できた。
しかし、ファミリエーテはそれを提案しなかったと言う事は、必要性を感じなかったと言う事。
通常だったら「万が一何か起こった際に、私共が盾になることができます!」とか言ってくるだろう。
その発言がなかったと言う事は、ファミリエーテはかなり自分の実力に自信があり、尚且つそれ以上に俺への信頼が厚いのだろう。
なので、俺から護衛をもっと連れて行きたいと言うのは明らかにおかしい。
場合によっては俺がファミリエーテを信頼していないようにも思われるし、自分の実力に自信がないとも取れる。
まぁここにいる魔物が何体襲ってこようがファミリエーテは1ターンで全滅させられるだろう。
ゲームではそれほど圧倒的な存在だったので大丈夫だとは思っている。
後は、ファミリエーテのやる気を出させれば俺の身の安全は保証されると言うわけだ。
「今日、私は戦闘には参加しない。成長したお前の姿を私に見せてくれ、期待してるぞ」
「はっ! ご期待に応えられるよう頑張ります!」
ファミリエーテは嬉しそうに返事をした。
よし、これでファミリエーテのやる気を出させることに成功したので俺たちは森の中へ入っていく。
ゲームだったら森の中を歩いているとエンカウント係数が減少するので、等間隔で魔物に出会うはずだ。
しっかりと時間を数えておかなければな。
あと、魔族と魔物の違いは言葉が喋れるか喋らないかの違いのみだ。
魔物は知能が低いため、魔族にも普通に襲ってくるらしい。
しばらく足場の悪い森を歩いているとファミリエーテが足を止めた。
「アレク様、お気付きのようですが右斜め前方から魔物が接近しています」
え、魔物接近中なの?
全く気がついてなかったんだけど。
一体、ファミリエーテの俺に対する評価はどうなってるんだ?
「う、うむ。では頼むぞ」
「お任せください」
そして姿を現したのは、全長三メートルほど真っ白な虎だった。
フリーズタイガー。
ロンガルドの森に出てくる魔物の中で下位に位置する魔物だ。
レベルは500ほどなのだが、その素早さと攻撃力が厄介だった。下位とはいえ、通常攻撃か氷属性であるため、装備もちゃんと揃えなければその素早さと攻撃力であっという間に全滅してしまう。
ゲームの世界でしか見たことのない魔物に少しだけ興奮したが、あっという間に恐怖へと変わる。
レベル1とレベル500の圧倒的な差に絶望しか感じなかった。
覚悟はしていたがかなりきつい。
震えそうになる足を精一杯我慢していると、ファミリエーテがこう呟いた。
「フリーズタイガーですか。雑魚ですね」
そう言い終わった時には、フリーズタイガーの首がポロリと落ちていた。
なにも見えなかった。
攻撃する素振りから何から何まで見えなかった。
それも当然だ。レベル500ほどの魔物が全く反応できないで死ぬのだ。
レベル1の俺なんかが反応できるわけない。
そして、遅れたように勢い良く吹き出る血を見た俺は腰を抜かしそうになるが、なんとか耐える。
元サラリーマンの俺にグロ耐性なんてものはない。
吐き気や目眩などがひどいが、ここは耐えるしか俺の生きる道はない。
ここで倒れたらすべて台無しだ。
そう自分に強く言い聞かせならが平然をできるだけ装う。
「次に行きましょう」
ファミリエーテはなんでもないようにそう言って再び歩みを始めた。
その後ろ姿に、俺はいつでも殺される立場にあることを再認識した。




