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ストレンジャー  作者: ESP
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二章【驚愕】

うん?なんだか滅茶苦茶頭が痛えな…二日酔いにも似た症状に誘発され、俺は目を覚ました。

身体を起こし、辺りを見回す。どうやら自分の部屋ではない様だ。

いくら俺の家が貧乏だからって、一面石壁で剥き出しにはなってはいない。よくみると所々ヒビ割れや黒く変色してやがるよ。…うわっ地面も埃だらけのデコレーションつきだ!案の定俺の着た美女がデッサンされてるTシャツまでもが見事に被って浸透していた。とりあえず手でほろえるところは落とす。

こりゃあ顔も髪も酷い有り様だと予想した。

話し変わり、どうやらここは牢屋の様だ。見るからに硬そうな鉄のドアがあること以外、全く何もない。

てかトイレぐらいは設置した方がいいだろ。…是非匠によるビフォーアフターを受ける事をお勧めするね。マジで。

…とか言ってる場合じゃねえよな。あの時の話し合いの内容から察するに、物騒な事になるのは間違いない。だが、映画みたいに脱走なんかはっきり言って無理だ。非現実な状況にいるが、俺自身はごく普通の少年ですから、残念。

と俺が真剣に悩みだしていると、唯一の入り口であるドアが勢いよく開け放たれ、ゴツイ顔と体格の大男が静かに入ってきた。

こういう奴はやられ役だと相場が決まっている。そしてこれが脱走の好機…!

「出ろ」

「はい」

………ていうか、何も言えないでしょ。こんな大男にドスの効いた大地が震えるかの様な低音ボイスで言われたら、ね?嫌な予感で胸一杯お腹一杯の俺は一切の抵抗も質問もせずに、金魚の糞状態で後に続く。

連れてかれたのは、無数の人間がひしめきあう広場だった。

皆服装はあの小力が着ていた茶色のコートで、場に俺が来た途端何故だか騒ぎ始めた。

これは予想通りというか、かなりヤバい状況だ。男達は広場の中央を囲む様に立っており、中央には小力。そして鎧と剣で武装した今時流行らない中世のコスプレをきめた男。

明らかに処刑する気満々の空気だ。多少古めかしい空気だが、殺気つうものがバシバシ伝わってきている。

ここで、俺はとうとう諦めた。小力が何か言っている。なんだかもうどうでもよくなり、連れられるままに進み出た。

「今からお前に対して尋問を行う。返答によってはこの場でぶっ殺す」

野次馬から歓声が上がる。返答も何も殺す気満々じゃねえか。

…だが、妙に落ち着いている俺に、内心驚いている。

これから生きるか死ぬかっていう時に、だ。

街の不良に絡まれただけで萎縮していた俺にとって、これは極めて異例だ。てゆうか、すげえぞ俺。

しかし、死ぬ直前になって成長するなんて、俺はサイヤ人か。

「…っ聞こえてんのかぁっ!!」

突如小力の怒鳴り声が響いたのと同時に、俺は後方に思い切りぶっとんだ。

…どうやら俺が思考している最中に、色々言っていたらしい。反応のない俺にキレた小力が、俺を殴り飛ばした様だ。鼻に激痛が走り、俺は手で押さえながら転げ回った。

声もなくのたうち回る俺に、投げかけられる嘲笑の渦。畜生、殴られたのは初めてなんだぞ!親父にもまだ…

「…もういい。殺れ」

そうそう…もう早いとこ殺っちゃってくれ。こんな痛い思いするぐらいなら、死んだほうがマシだ。

「こんな舐めた奴は初めてだ。存分に苦しめてな」

…まじすか。

ちょっと洒落にならんことになってきた。せめて楽に死なせてくれても……ぁあ、コスプレ野郎が剣抜いちゃったよ、見るからに切味鋭そうじゃん。

逃げようにも、多勢に無勢。こりゃあもう…。

い、今頃怖くなってきた…!嫌だ死にたくない!!

剣が大きく振り上げられる。俺は血と涙で汚れた顔を醜く歪め、絶叫した。

目を閉じ、叫び続ける俺。

その瞬間が長すぎたのに気付いたのは、男達の動揺したざわめきだった。

俺はゆっくりと目を開け、状況を確認する。

そして俺は、信じられない光景を目にした。

つい数瞬までそこにいなかった筈の黒ずくめの人間が、コスプレ野郎の剣をなんと二本の指で挟む様に受け止めていた。

そして、更に驚愕。

剣を受け止めた腕で、なんとそのままコスプレ野郎を持ち上げたのだ。片手で、しかも指だけで。

場内に沈黙が走る。コスプレ野郎は持ち上げられたまま放心していた。

俺はもう何がなんだか判らず、殴られた痛みも殺されかけたのも忘れ、ただただ呆然するのみだった。

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