第二話 ざまぁ裁判所に出頭したら被告席に座らされた件について
第二話 ざまぁ裁判所に出頭したら被告席に座らされた件について
俺の名前はナーロウ。
元は女だ。
ここ重要。
なぜなら最近の読者は一話でも読まなくなると平気で設定を忘れるからである。
元々の俺は上位世界に存在する監察局所属の監察官であり、異世界転生世界や追放世界や悪役令嬢世界など、日々量産される下位世界を観測して報告するのが仕事だった。
要するにサラリーマンだ。
異世界サラリーマン。
夢も希望もない。
そして前作で色々あって。
本当に色々あって。
説明すると長いので割愛するが。
俺は下位世界で活動するために人格投射用アバターを作ることになった。
その結果。
「せっかくだし最近流行りの主人公になってみるか」
という軽いノリで。
男になった。
正確には男主人公テンプレートを使用している。
おかげで身長は伸びた。
筋力も増えた。
声も低くなった。
しかし業務量も増えた。
最低である。
監察局に労基はない。
さて。
そんな俺が今いるのは。
断罪大陸。
ざまぁ裁判所。
名前の時点で嫌な予感しかしない。
そもそもここ数年ほど下位世界を調査していて思うのだが、なろうランキング界隈というのは定期的に巨大流行が発生する。
異世界転生。
追放。
悪役令嬢。
ざまぁ。
無自覚最強。
勘違い。
ダンジョン配信。
そして掲示板。
流行そのものは別に悪くない。
問題は世界が流行を真面目に受け止めすぎることである。
追放が流行る。
すると追放自治区ができる。
ざまぁが流行る。
すると断罪大陸ができる。
割と頭がおかしい。
監察報告書に毎回そう書いている。
毎回却下される。
「頭がおかしいだけでは具体性に欠けます」
と返ってくる。
十分具体的だろ。
そんなことを考えながら裁判所へ到着した。
目の前には巨大な建物。
高さ数百メートル。
敷地面積は王国並み。
入り口にはこう書かれている。
ざまぁ総合司法テーマパーク。
「テーマパーク化するな」
受付嬢が笑顔で頷いた。
「人気ですので」
「夢の国みたいに言うな」
「本日のイベントはこちらになります」
パンフレットを渡された。
断罪ショー。
婚約破棄ライブ。
元婚約者お披露目会。
公開ざまぁ選手権。
「娯楽施設じゃねえか」
「よく言われます」
もう誰も否定しない。
すると突然。
場内放送が流れた。
「本日の特別公演!」
観客が沸く。
「おや」
「来ましたね」
受付嬢が笑う。
俺は嫌な予感しかしなかった。
大体こういう場合。
嫌な予感は当たる。
予感さんは真面目なのだ。
絶対に仕事をする。
巨大なモニターが点灯する。
そこに映し出されたのは。
俺だった。
「は?」
会場がざわめく。
「本日の特別ゲスト!」
嫌な予感しかしない。
「上位世界から来た監察官!」
もっと嫌な予感がする。
「元女性主人公!」
やめろ。
「現在男主人公!」
やめろ。
「ナーロウ!」
歓声。
拍手。
紙吹雪。
花火。
爆発。
ドラゴン。
なぜかドラゴン。
「最後なんだ」
観客席から声が飛ぶ。
「監察官だー!」
「生ナーロウだ!」
「性別変わった人だ!」
「そこばっかり!」
そして次の瞬間。
巨大な法廷の扉が開いた。
現れたのは金色の法衣を着た男。
背中には巨大な天秤。
頭上にはランキング王冠。
手には評価ポイントの杖。
「出たぞ」
受付嬢が震える。
「ざまぁ大法官です」
男は俺を見た。
そして静かに言う。
「ナーロウ監察官」
「なんでしょう」
「貴様を訴える」
「なんでだよ」
「お前は下位世界を観測しすぎた」
「仕事だからな」
「分析しすぎた」
「仕事だからな」
「考察しすぎた」
「だから仕事なんだよ!」
ざまぁ大法官が杖を掲げる。
「罪状」
嫌な予感がする。
本当にする。
「テンプレを暴きすぎた罪」
沈黙。
「罪なの?」
「罪だ」
「なんで」
「夢がなくなる」
観客席が深く頷いた。
なんでだよ。
さらに大法官は言う。
「加えて」
「まだあるのか」
「次回、お前には悪役令嬢学園へ潜入してもらう」
「裁判じゃなかったのか」
「人気エピソードの調査命令だ」
「急に本筋へ戻るな!」
すると会場の天井が割れた。
空から巨大な学園都市が降りてくる。
何百人もの悪役令嬢。
何千本もの縦ロール。
何万枚もの婚約破棄通知書。
その異様な光景を見上げながら俺は確信した。
次回は確実にもっと頭がおかしい。
なぜなら悪役令嬢というジャンルは、監察局の危険度評価で長年Sランク指定されているからである。
主に登場人物の九割が破滅フラグを認識しているせいで。




