まだ見ぬ神様を探して2
「まぁ、それはともかく。」
と、話を元に戻す紅ちゃん。さっきまでの嬉し恥ずかしタイムはあっけなく終わった。
しかし、自分のカグラ舞は褒められたことが無く、今でこそ毎朝、紅ちゃんとの特訓のおかげでカグラ舞での火や水の形成はある程度速くなったものの、アカデミー入学当初は学年でも、下から数えた方が早いくらいの落ちこぼれだった。
形成のスピード、威力、命中。どれを比べても、これが出来る!と言ったものが無かった。アカデミー初等部の頃なんか、”取り得無しの能無し夕華”と男子からいじめられたりもした。
しかし、十五夜紅事、紅ちゃんがいじめてくる男子たちから私を守ってくれた。本人曰く、大した事はしていない。と言っているのだが、昔の私からしたら、凄く心強くとても感謝したのである。感謝の気持ちは今でも変わっていないが・・・。だからこそ、自分のカグラ舞を褒めてもらった事が嬉しくて、紅ちゃんにもっと褒めてほしい、認めてほしい気持ちがあり、あっけなくこの話が流されてしまったのが、地味にショックだったんだけど、仕方ない。今はカグラ士としての依頼が優先だった。
「今、空から見て、ざっと周りを見渡して来たんだけど、ここは森の中っていうよりも山の中だね。それも5合目くらい。半分って所かな、周りを見ても山、山、山で何処に神様がいるか検討もつかない。でも・・・。」
「でも・・・?」
「でも・・・今の場所よりもうちょっと登った場所、7合目くらいかな?そこに滝があった。」
そう言って滝のある方向を指差す。
「滝?」
質問する私に紅ちゃんは腕を組み考え込むようにしながら
「そう、滝。かなり大きめ。高さもそれなりにある。もしかしたら、その近くに神様がいるかもしれない。」
その言葉を聞き少し安堵した。まだ”いるかもしれない”と言う可能性の段階だけれど、ただ闇雲に歩いて探し回るより、手がかりがある方が遥かに効率的である。そして神様は山の頂上や、大きな木、岩などの信仰の集まり易い所に好んで住み着く性質があり、滝なども勿論信仰の対象にも成りうる。それだけに行って見るだけの価値は十分にある、それに何よりこのまま悩んでいても仕方ないし、悩む前に行動!が私のポリシーでもある。
「よーし!それじゃあ、その滝目指して、山登っていこっか!」
次に私達の目標地点が決まり、元気よく私が言うと紅ちゃんも続けて、
「おーう。」
と緊張感がまったく感じられない、気合の入った?返事をした。
そうして、私達の初めての神様の探索が始まった。
同時刻・龍神の滝へ続く山道
木々が生い茂る山道の斜面を小さな小鳥と一人の女の子が、ゆっくり、ゆっくり一歩ずつ噛み締める様に登っていた。
山道はキレイに整備されたものではなく、かろうじて小さな動物達が通った痕跡が分かる程度の獣道だ。
その獣道を、まだまだあどけなさが残る小さな女の子が通るのは不自然だった。
しかも、その少女の姿は獣道を通り歩いて行くにはあまりにも不釣合いな格好をしていた。
その女の子は、裾の所にかわいいフリルの付いた長いスカートの白のワンピース、足には小さなリボンの付いたサンダルを履いていた。容姿はアカデミー小等部の1年生の子よりも幼い。そして何より目を惹くのが、女の子の背に生えた、大きな4枚の黒い翼だった。その翼は黒々としており、自身の体を包み込めるくらいの大きさである。女の子が山道を登るたびに、その大きな翼がゆっさゆっさと大きく揺れる。
「ま、待ってよぉ・・・。くーちゃん、まだ・・上手にお空飛べないから・・・そんなに・・早く・・すすめない・・。」
その女の子はハァ、ハァと肩で息をしながら、目の前にいる小鳥に話かけた。
小鳥が山の中の木々を鮮やかにすり抜けて飛ぶのに対して、女の子は木を掴み、うんしょ、よいしょと言いながら額に滲む汗を拭きながらゆっくり進んでいく。まだこの獣道を小さな女の子一人で登って行くのはかなり負担が大きかった。それでも小鳥は急かす様に女の子の周りをクルクル飛び回っていた。
「う~~・・・急かさないで~・・・。」
その小鳥は女の子に何か伝えようと必死に鳴き声を上げながら飛び回っていた。女の子もまた、小鳥が必死な姿で何を伝えたいかが分かっており、それに応えようと必死に足を前に進めていた。
「この・・・みちを・・・こえれば・・・もうすぐ・・・・・」
もう少しで目的地に着くのか、女の子の気合もより一層高まってくる。しかし、小さな女の子一人で山道を登っているせいで、体力をかなり消耗しており、女の子の足取りも、だんだんとふらふらして行く。
「もうすぐ・・・とう・・・ちゃ・・・・きゃあ!」
疲れのせいか、女の子は足が上がらず、足元にあった、木の根っこに足をつまづかせて、大きく前に派手に転んだ。
「うぅぅ・・・いたい・・・。」
痛みのする所へ目を向けてみると、右足のひざから、血が少し滲み出ていた。そうすると女の子は、見る見るうちに目に涙が溜まっていき、今にも泣き出しそうになる。
「うぅ・・ぐすっ・・・いたいけど・・くーちゃん強い子だから・・・だから・・・泣かないもん・・・ぐすっ・・・。」
膝を抱え、三角座りになると、自分に言い聞かせるように呟くと、女の子はずずずっと鼻をすすり、目に溜まった涙を両手で擦り
「くーちゃん、強い子だから頑張るもん!」
と自分で気合を入れ直し、立ち上がると転んで汚れてしまったワンピースの裾をパンパンと掃い、右足の擦り傷の痛みを我慢しながら、目の前を行く小鳥の後を追いかけ、山道を登って行くのであった。




