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まだ見ぬ神様を探して1

11:00 天界・高天原 龍神の滝近くの小屋


「空~~~、お空~~~~。」

一人の少女が小屋の周りをうろうろしながら叫んでいる。

「まったく、何処にいったんじゃ、いつもあれほど勝手に出て行ってはいかんと言うておるに。」

少女は幼く見える外見とは別に、年老いた渋いしゃべり方をしている。

少女は、う~~~んと腕を組み、まぶたを閉じて何やら考えこんでいた。そして、ハッ!とまぶたを開けると


「やはり、あそこしか考えられんの~。」

呟くと、やれやれといった様子で、

「迎えに行ってやるとするか。」

そう言って少女は右腕を垂直に挙げると、右腕をグルッと半円を描くように回しながら、体も一周させた。そう、カグラ士が使うことのできるカグラ舞と同じものだ。

舞が終わると少女の足元には、風の渦ができており、ヒューーーーっと音を立てている。


「最近は信仰も薄れてきおったからの、神力を使うよりも効率的じゃ!」

と独り言を呟くと少女は地面を軽く蹴り、ジャンプした。そうすると、少女の体には重力が無くなったかの様に、ふわりと高く飛んだ、飛んでから落下するスピードもゆっくりとしたもので、まるで空中をゆっくり散歩しているかの様だった。


「神力を使えば、もっと早く空を飛べるのじゃがの。」

と少女は少し頬を膨らませながら、ふて腐れた様に言った。


「お空の奴、連れて帰ってきたら、少しお説教が必要じゃの。」

と言いながら、どうを説教してやろうかと考えながら少女は龍神の滝に向かうのであった。



11:05 天界・高天原 天の岩戸前


「わぁ~~~、ここが高天原か~、凄く広いね~。}

カグラ士協会の中の天の岩戸を通ると、一瞬目の前が真っ白になり、ゆっくりまぶたを開けるとそこは、木々が生い茂る森の中だった。

カグラ士協会内は様々なテクノロジーが発展していたが、ここ高天原は正反対の大自然がありふれていた。

「確かに、アカデミーで高天原の事は色々勉強してたけど、思っていた以上だね。」

紅ちゃんが驚くのも無理はない。アカデミーでも高天原がどんな場所で、どういった生物がいるか、などは習ったが、実際聞くのと、感じるのではまったく別物なのだ。


「ほら、紅ちゃん耳を澄まして!」

二人して耳を澄ましてみると、辺りからは、小鳥のさえずりや風で木々でザァーーーと揺れる音が聞こえてくるのだ。


「凄く心地良いね、昼寝に最適だね。」

と言いながら紅ちゃんはうとうとしている。私達二人は耳を澄ましたまま、ただボーーーっと空を見上げていた。初めての高天原のゆっくりとした時間の流れを満喫して、しばらくして私は我に返り


「ハッ!紅ちゃん、ボーーーっとしてる場合じゃないよ!今回の依頼を叶えてくれる神様を探さないと!」

まだ空を見上げている紅ちゃんの肩を揺らし意識を取り戻させた。


「う~~~ん、ほんとに昼寝したいかも・・・。」

「ダメだよ~~、早く神様探さないと、日が暮れちゃうよー?」

そう言うと紅ちゃんは、分かったと頷き、周りをキョロキョロと見渡した。


「どうしたの?」

私が首を傾げながら紅ちゃんの顔を覗き込むと、紅ちゃんは腕を組み下を向いて何やら考え出した。


「ねぇ、夕華。」

「なぁに?紅ちゃん。」

いつもは頭で考えるより、先に行動を起こす事の方が多い紅ちゃんが何か考え込む事は珍しく、私は興味津々に聞き返した。


「どうやって神様を探すの・・・・???」

あまりにも衝撃的な発言に私は一瞬目眩を起こしそうになった。なぜなら、私も探し方が分からなかったからだ。

「えっ?紅ちゃんわからないの?」

と淡い希望を抱かせながら紅ちゃんに聞き返すと

「うん。」

と一言。この瞬間私の淡い希望は糸も簡単に崩れ去った。

「でも・・。」

と続けて紅ちゃんが言う。まだ私の希望は崩れてはいなかった!?


「アカデミーで習ったのは、神様は大きな木や、岩、滝と言った自然の中でも大きな物の近くに住んでるって習ったよね。」

と腕を組んだまま、習った事を思い出すかのように言葉を繋いでいく。

確かにそうだ。神様は信仰が集まりやすい所に住む傾向があるとアカデミーで教わった。流石は紅ちゃん、アカデミー№2の実力を誇る優等生。普段の言動からはあまり感じられないが、実際、カグラ舞の実力はアカデミー内でも5本の指に入るほどである。特に火を使った舞では、右に出るものはいないと言っても、過言ではないでしょう。しかし、今はそんな事より神様を探す方が先決だよね。


「うん、確かにそんな事も言ってたような・・・。」

記憶の中にあるアカデミーでの授業の内容を必死に思い出す。ちなみに私はアカデミーでの成績は中の上、まったく、勉強ができないわけではないのだけど、それと言って得意ってほどでもない。


「でも、どうやって探そうか?ここの森凄く広そうだよ??」

そう、今まさに私達がいる場所は森の真っ只中だった。周りを見渡しても、木、木、木360度木に覆われている。かろうじて、天の岩戸を出た先に獣道が続いているだけである。


「確かにそうだね。闇雲に歩いても迷うだけかも・・・。実際カグラ士協会に帰る時も、この

天の岩戸を通るか、うずっちに連絡して強制送還してもらうかだし。」

「初の依頼で強制送還は嫌だなぁ。」

紅ちゃんの言う、うずめさんによる強制送還は事実上、依頼の失敗を意味する。うずめさんは気軽そうに言っていたが、結局の所何もできないままカグラ士協会に戻るだけなのだから。ましてや初の依頼で強制送還など、恥以外の何物でもない。


しばらく二人とも考え込んだ後、紅ちゃんが、あっ、っと呟いた。


「どうしたの?」

「”アレ”を使ってみる。」

「”アレ”って?」

そう言って紅ちゃんは右腕を垂直に上に挙げ、大きく半円を描きながら右腕を下に下ろすのと同時に体を一周させた。

そう、これが、カグラ士が使う”カグラ舞”だ、このカグラ舞を精霊に奉納する事で加護を得て、火水土風といった様々なものを形成できる。ちなみに今、紅ちゃんが行ったのは風を形成するときの舞だ。


「これ、最近練習してたんだ。」

と自慢げに話す。自慢げにと言っても、普通の人が紅ちゃんの表情を見たら変化がなさそうに見えるが、そこはアカデミーからの親友の私だからわかるのだ。ちょっとした私の中での自慢でもある。

そんな事を思ってる内に、紅ちゃんの両足の周りには、風の渦が出来上がる。


「これは?」

私が知っている風のカグラ舞は、風を起こして相手を吹き飛ばしたり、追い風にして相手との距離を詰めたりするものだった。なので、紅ちゃんの両足にできた風の渦が何なのか私には検討も付かなかった。


「これはね、風の力を足に集中させて、ジャンプ力を高めるカグラ舞だよ。」

そう言ってから紅ちゃんは地面を両足で蹴りジャンプした。タンッ!と地面を蹴る足音が聞こえたと思ったら、紅ちゃんは足に翼でも生えたかの様にふわりと空に飛んで行った。そして、そのまま周りの木々よりも高く飛び、


「凄い・・・。」

私は空に向かって飛んで行く紅ちゃんのうしろ姿に、ぽつりと呟いた。そして軽い感動を覚えた。まさか風のカグラ舞に、こんな使い方があるとは思ってなかったからだ。この時、カグラ舞は本当に奥が深いと純粋にそう思った。

そんな事を思っている内に空に飛んで行った紅ちゃんがゆっくり降りてきた。


「ただいま。」

「おかえり紅ちゃん、すごいね!まさかカグラ舞で空を飛んじゃうなんて、こんな使い方知らなかったよ!」

興奮気味に言う私を見て、紅ちゃんはいやいやと首を横に振った。


「まだまだ練習中の技だからね。風の渦の形成スピードが遅くて、まだまだ実戦までには使えない。残念・・・。」

そう言ってうつむく紅ちゃんであったが、私から見れば凄いことだった。風を操るカグラ舞は、風

の吹く方向、風の強さ、角度と言った繊細な制御が必要とされ、火水風土のカグラ舞の中で一番制御が難しいとされる。まして、風の渦を形成するなど至難の技である。そんな凄い技を目にした私は、落ち込む紅ちゃんにむかって


「全然凄いよ!私なんて風車を動かすくらいの風しか形成出来ないのに・・・。」

そう言って励ますが、励ましている私まで落ち込んできた。なぜなら私は風のカグラ舞が一番苦手だからだ。アカデミーの卒業試験で最低限必要とされる、風のカグラ舞は”風の力だけで物体を動かす”ぐらいの力が必要で、他の火水風土も使いこなし、試験官と勝負して合格点をもらえれば卒業となるのだが、私は風車を動かす程度の力しか出せなかった。


「でも夕華の水のカグラ舞は凄いよね。」

私が風のカグラ舞が苦手という事は紅ちゃんも知っていて、落ち込んできているのを察してくれたのか紅ちゃんがさらっと言った。なぜ、風車を動かすぐらいの力しか出せない私が卒業試験に合格出来たかと言うと、この水のカグラ舞の形成が上手かったお陰だ。基本的に水のカグラ舞は、防御として使うのがメインである。相手からの火の玉の攻撃や、土で形成された石による攻撃などは大体、水の玉を作り出し、それを相殺させたり、水の壁を作って防ぐのが基本戦術になる。しかし私の場合は。


「だってあの、水を一点に集中させて水圧の勢いだけで攻撃するって戦法を取ったのはアカデミー生徒の中で夕華だけだった。あれは私もびっくりした。」

そう、基本的に防御で使う水のカグラ舞を、攻撃用に転換したのだ。実際、私の試験をしてくれた試験官も私の水のカグラ舞を防御用の物だと思っていたらしく、その油断を突いて合格できたのだ。


「そ、そんな事ないよ!あれはただ、小さい頃水鉄砲で遊んでて、もっと勢いある水鉄砲が欲しいなと思ってたアイデアをカグラ舞でやってみただけで・・・」


「でも、それを実戦まで使えるようにした夕華を私は凄いと思うよ?」

紅ちゃんは真剣な眼差しで言った。

それを聞いた私は、なんだか照れくさいような、恥ずかしい様な不思議な気持ちになった。



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