第二章 第七話 絶世の魔法使い姫
エレナの冒険者デビューから数日。
俺たちはすっかり、イーティアでの滞在を満喫していた。
温泉に浸かり、露店を冷やかし、たまにギルドの依頼をこなす。
平和だった。
実に、平和だった。
「なあ、あれ見ろよ」
大通りの広場で、俺は思わず足を止めた。
噴水の前、大勢の人だかりの中心で、銀髪の少女が杖を掲げていた。
彼女が呪文を紡ぐたび、宙に無数の光の蝶が生まれ、ひらひらと舞い踊る。
「おお……」
群衆から、感嘆のため息が漏れる。
「あれは、イーティア王女リリシア様だ」
通りすがりの老人が、誇らしげに教えてくれた。
「この国が誇る、最強の魔法使い候補様だよ。国民の前で、たまにああして魔法を披露してくださるんだ」
「王女様、なのか、あれ……」
俺は、しばし言葉を失っていた。
美しい、なんてもんじゃない。
銀の髪。透き通るような肌。魔法を操るたびに輝く、深い紫の瞳。
「……カイン様?」
フィリアの声が、心なしか低い。
「な、なんだよ」
「顔が、緩んでいます」
「気のせいだ」
気のせいではなかった。
完全に一目惚れだった。
「まあ、綺麗な人ですね」
エレナが、素直な感想を口にする。
「あら、あの子ね。カインも隅に置けないわね」
セリーナが、にやにやとこちらを見ていた。
「い、いや別に、そういうんじゃ――」
「顔が真っ赤ですよ」
レオナの一言が、とどめだった。
誤魔化しようがなかった。




