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黒歴史を刻むべきか、恥ずか死ぬべきか。それが問題だ。

 おはようございます。

 昨日はニーナに鬼のように叩き込まれ、疲れ果てて寝ました。お陰でジーク様の事は思い出さずに済んだけども…。勉強きらい。くすん。


 教室に着くと昨日の席にアシュレイとルーデウスが座っていた。

 他愛無い会話をしてるうちにエリーがきて、授業が始まって…このままスムーズに一日が終わる…かと私も思っていた。



 事件は午後の授業で起きた。基礎教養で1年生は詩の科目がある。

 これは、貴族社会では恋愛やらなんやら活用の場があるからだ。


 そう、詩…つまりポエム。


 もう一度言う、ぽえむ、である!


 こそばゆ過ぎる!!恥ずかし過ぎる!!


 これは前世の知識のせいだ。前世を思い出す前なら嬉々として詩とか作れたけど、黒歴史とか厨二病とかいう概念を知ってしまった私はもう、以前のようには作れないし、聞きたくない。


 ポエムとかこそばゆ過ぎる!


 うあー!!!


 しかも、今日のテーマは恋愛だ。

 初日から最悪なテーマ。

 皆で先人のポエムを音読して行く。

 これナンテイウ苦行…?


 喉のあたりを掻き毟りたくなる衝動に駆られる。

 むず痒い!こそばゆいよー!

 やめて!私のライフはもうとっくに0よ!!


 それなのに、授業終盤に先生が(のたま)った。


「では、せっかくなのでどなたかに作って頂きましょう!」


 絶対にイヤ。ごめんこうむりたい。

 クラス全員の前で恋愛についてのぽえむ発表。考えただけでぞわぞわする。絶対に先生と視線が合わないように、私は必死で下を向いて存在感を消すことに努める。


 そんな中で果敢にも手を挙げる少女がいた。

 あれはベアトリス様!!


 救世主(メシア)がいた!

 ベアトリス様が輝いて見える。 


「先生、エデン様が得意だと伺っておりますわ。それに、彼女は今、失恋したてですから、それはそれは切ない詩を詠ってくれると思いますわ」


「まぁ、そうなの?エデンさん?」


 な、なにぃぃー!?ベアトリス様は救世主(メシア)なんかではなく、処刑宣告人だった。


「いえいえ!!とんでもないですわ!!!わたくし詩は大の苦手ですわ!」


 むりむりむり!絶対にムリだから!


「先生、僕もエデン様の詩を是非聞きたいです」


 アシュレイが天使の微笑みで背後から追撃する。

 あしゅれい~~~!!!!睨んだけど、愉しそうに笑うだけだった。


 先生は、アシュレイの微笑みでぽーっとしている。

 やばいやばいやばい!このままだとクラス全員の前で公開処刑(さらしもの)にされる。


「そういえば、歌もお上手なのだとか。是非、歌にのせて詠っていただきたいですわ」


 ベアトリスぅぅーー!!

 ここに来てさらに追い打ちとは鬼畜すぎる!!


「へえー」みたいな反応がクラスに広がって、ワクワクした顔の青少年たちと目が合う。


 いやいや、そんな目で見られたってむりっぜったいむりできないヤダやだクラスでアカペラでマイポエム歌うとかそんな恥ずかしいこと絶対したくない――――ッ!


 まだ、ぽーっとしたままの先生が「ではお願いします」と宣った。


 なぬーー!?

 お、終わった。どうしよう。


 …ここまで来たら腹をくくるしかない。高速で前世の知識を呼び出す。こってり失恋ソングを歌うと哀れになりすぎるから、切ない片思いくらいの曲!!


「分かりました。では」


 私は曲を決め、歌い始めた。こういうのは恥ずかしがって中途半端になるのが一番イタイのだ。

 堂々とやるしかない。哀れなピエロをとくと見よ!!ぬおお!恥ずかしいー!



 歌い終わると、教室はシンとしていた。

 そりゃそうだよね、こんなリズムの曲もなければ、詩の内容もこの世界のものに比べたらダイレクトな表現過ぎる。

 でも、何を言われても、自分で作ったやつじゃないから、心をえぐられることは無い…はず。

 しかし、死にたくなるような羞恥心に私の精神はズタボロだ。


 ややあって、先生が震え始めた。だいじょうぶかな?


「素晴らしいですわ!!!!私今日ほど感動したことはありません!!!」


 つられる様に教室に歓声と拍手が広がる。

 オーケー、これは黒歴史は回避できたってことでヨイノ?

 周りをみる…ベアトリス様まで頬を染め拍手してくれている。うん、よさそうだ。

 よかったー!

  

 前世の知識さまさまだ。ほっと息を吐く。


 だけど、アシュレイ、君の裏切りは忘れないんだからね!

 いや、裏切りではなくドエス使用なの?

 天使ショタ、腹黒、毒舌にドエスって…きみ、キャラ立ち過ぎじゃない?

 ふむふむ。なるほど。

 私の中でアシュレイの攻略対象者説が有力になった瞬間であった。


 授業後、ベアトリス様が来た。


「アメリア様!!あの……、その……っ。――昨日は申し訳ありませんでしたわ。私、貴女の気持ちなど考えもしなくて。先ほどは感動いたしました。これからは、私、あなたの恋を応援致しますわ!!!」


「あ、ありがとうございます?」


 ベアトリス様が急にもじもじし始め、取り巻きからベアトリス様頑張って!とか言われてる。なんだこれ、なんとも思っていないクラスメイトから告白される男子のような気持ちだよ。茶番か。


「あの…よろしかったら、お友達になって下さいませんか?」


 私としては、皆と仲良くしたいし、できたら嫌われたくない…エリーを見ると、生温い目をして頷いたので微笑んで答える。


「もちろんですわ。これから5年間よろしくお願いしますね」


「私のことは是非ベティーとお呼びになって!!!私もリアと呼ばせて頂くわ!」


 ぱあっと笑顔になるベティー。ふっ……ちょろいな!でも可愛いっ!

 忘れそうになるけど13歳だもんね。素直でちょっとばかし直情的な子なのだろう。


 私は友達をゲットした!

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