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十八日目
「今日も交差点は安全。良かった」
「そうだな」
「あいかわらず、あいつはいるな…う~んずっと考えているけど何もいい方法が思いつかない!」
「難しいな」
「ずっとしゃべり続けたら説得とかできん?近づいたら体乗っ取られる?」
「乗っ取られることはないが、説得するにも声も性質上届かないだろう」
「アレは感情って言ったね」
「そうだな」
「感情をフルパワーにして話したり殴ったりしたら通じないかな?」
「厳しいだろう。まず存在している位階が違う。負の感情は殊更に強い。加えて複数人であるし、
がっかりさせたらすまんが、お前はそう言った感情の高ぶりとは無縁だ」
「めっちゃこんなにしゃべったり笑い転げたりしているのに?」
「どう考えても地縛霊になるようなタイプじゃないだろう?」
「いやなるよ!めっちゃなる!街の片隅で延々とラジオDJし続けるよ!」
「それはそれで気持ち悪いな…」
「その発言ひっどいなー!皆を楽しませようとしているのに!」
「聞く相手誰もいないぞ…」
「良いんだよ!世に出せれば!」
「まぁ…その時点で溜め込まず、発散しているだろう。地縛霊にはなれんな。アレにも全然足りない」
「所詮お前は浮遊霊どまりって言いたいのね」
「平たく言えばそうだ」
「くや・・・しい」
「大概のヒトはそうだ」
「頭一つ突き抜けたいのさ!」
「変にこちらの仕事増やそうとするな」
「まぁ、なんとかできればそれでいいんだけどねぇ」
「…一つ方法があるとすれば」
「なんだ?話せ!」
「いや…」
死神が言いよどむ。珍しいな。
「良いから吐け!吐くんだ!」
刑事ドラマではまぶしい明かりを照らし続けたりしてたな。
だめだ!そもそもモノが持てない!
「死神としても個人としても推奨できない例だが」
「いいぞ、とりあえず言ってみろ」
「成仏できずに幽霊であるところの外側を取り除く」
「概念だよね?」
「そうだ。そしたら感情が残る…それはお前次第だが」
「それで相手に触れるってこと?」
「ああ」
「だめじゃん、制御できる本体はもう崩れてるってことだよね?」
「そうだな」
「そしたら感情だけ残ってても多分取り込まれるやつじゃん!」
「その通りだ。…忘れてくれ」
「うん…。そう、だね」
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「はい、始まりました幽霊と」
「死神」
「が送るあの世ラジオ~。本日は記念すべき十回目なんですよ~パチパチパチ」
「十回で記念か?」
「それはもう、蟻も積み重ねれば10匹で天にも届くってなもので」
「そんな言葉聞いたこともないぞ?」
「今作ったからね」
「そのスピード感だけはすさまじいな」
「もっと素直に褒めてよ~。でですね、本日は記念してゲストをお呼びしています!」
「誰だ?そんな話聞いてないぞ」
「言ってないからね」
「それはラジオ番組としてどうなんだ?」
「この即興感がいいのさ。では、どうぞ~!
はいはいお呼ばれいたしました、わたくし、落語家の猫道尻挟まれ、と申します。
本日は記念ということでして、一席落語風を披露させていただきますねぇ」
「本人じゃないか。…まぁそうか」
「全く幽霊ときたら不便なもので、高座も用意できないものでしてね、地べたで失礼仕りますが、
ああラジオ番組でしたね。これはちょうどいい、高座も何も全く見えやしませんね。え?幽霊の声だから聞こえないって?それはしょうがありやせん、こうして喋るのが仕事ですから、しゃべりを取ったら何が残るって言ったらそれは、美しい顔と身体しかないですわぁ。・・・ここで笑って」
「ははは」
しかし幽霊が落語をやるなんてぇ変わってるとお思いかもしれませんが、これまた不思議な縁でございやして、死神というのが関わっていまして。
そう!落語で死神と言えばおなじみの死神をだまくらかす話もありますねぇ、ほら枕元と足元を入れ替えるやつですね、ご存じ?まぁそれは今回は置いておきまして、
わたくしの場合は少々違っていましてね、
(上着を脱ぐ仕草)
いえね、そもそも幽霊である時点であの世とはおさらばしているのは言うまでもありませんが…
そうそう、この世あの世という言葉もおかしい話でね、こちらから見れば幽霊世界がこの世で、
現世、生きた人の世の中があの世なんで。まぁ常に自分がいるところがこの世っちゅうわけです。と話がズレてしまいましたが、
そう、あっちのこの世からこっちのこの世に来た時に、急に目の前に黒い服を羽織った男がいましてね、
これまた急にお前は死んだとか仰られる。はて…と考えたところ、
ああこれは最近流行りの劇場型詐欺とでも言うんですかね、
なんにせよそういう怪しい…いえ見るからに怪しくはあるんですけれども、
見た目も話の内容もとにかくうさんくさいもので、
そこで、ふふん?だまそうったってそうは問屋が卸さねぇよ、って言ったんでさ。
そしたらアレを見ろと指さす、ん~なんだなんだ?と目を細めてみてみるとね、
わたしそっくりな人が倒れているじゃありませんか、しかも服も同じときたら本人じゃないかとなるわけですよ。
しかしまだ早まっちゃあいけません世の中にそっくりな人間が三人いるって言う話じゃありませんか、そっくりな人間なら同じ服を選んでもおかしくはないわけでしょう?
だってホラごらんなさい、見るからに目玉は三つくらい飛び出ているし、肋骨も明らかに六本全部折れてるでしょう?そんなもの自分と認めたかあないわけなんですよ。
そしたらその死神さん、人は目玉は三つないぞと、肋骨も六本が全部じゃないと言うんですよ。
確かにまぁ目玉三つはちょっとおまけで増やし過ぎたかなというのは認めますが、肋骨は六本だから六骨というのが相場と決まってるでしょう?
なのでそんなことも知らないのと言ってやりましたのさ。そしたら図星だったようで黙ってしまってね。コレだから死神なんておそらく高校もでていない輩と話が合わないんだぞと。
…え?結局倒れてるのは誰だったって?それはお恥ずかしい話、わたくしでございました。
スカートをめくって下着まで確認したから間違いない。
そんなこんなで死んだからには仕方がない、
とは言ったものの死ぬのは初心者でしたので途方に暮れてしまったわけですね、
そこでその死神にどうすればよいのか聞くじゃないですか、
そしたら好きにすればいいというものですから、じゃあ好きにやるかと腕まくりをして…
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「ご苦労だったな」
「いやぁさすがにしゃべり疲れたなー!落語家さんはすごいね、ずっと一人でしゃべっていて」
「仕事というものはきっとそういうものなんだろうな」
「どうだった?」
「感想を聞くのか?」
「うん、だって私喋ってばかりで聞いてなかったもん」
「それはそうだが…。とりあえず自分の扱いがひどくなかったか?流石にたこ焼きを物欲しそうな目で見ていたとかは理不尽さを感じる」
「いいじゃんいいじゃん、美味しかったでしょ?あれだよ有名税ならぬ旨い税だよ!只より高い物はないってやつ!」
「本当に高くついたな。あと猫道尻挟まれの名前の由来のくだりだな。まさか自分でボケを積極的に回収しに行くとは恐れ入った」
「欠点を美化すれば美点になるのだよ」
「ああ、前向きでいたらいい。なんなら死後の名前である戒名にしたらいいんじゃないか?」
「え、自分で決めていいの?」
「普通はしないな」
「なんだよ適当なこと言って!」
「生きていても途中で名前を変えるやつもいるだろう?」
「それは確かにそうだ」
「ならばいいんじゃないか?」
「ふむ・・・いやいやいやちょっと待って、よく考えたら尻じゃん!やだよ名前が尻ってのは、あっぶね~危うく騙されるところだった」
「自分で噺家の名前を付けたんだろうに…。子供には大爆笑されそうだな」
「・・・そうするか?」
「語り継いでやるぞ」
「マジか」
「忘れられん名前だからな。猫道尻挟まれ」
「よろしく頼む」




