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十一日目
先輩が成仏した次の日
「なんか壁を抜けられるようになったんだけど」
「そうか」
「徐々にっていう話じゃなかった?一気にできるようになったけど。コレあってる?宙もちょこっと五センチくらい浮けるようになったけど」
「ヒトじゃないと本人が認識したことによるきっかけだろうな」
「なるほど…じゃあ早速囚人ごっこをしに行くぞ!」
・・・ってあれ?牢屋って刑務所だよね?この町刑務所ないぞ?
「警察にあるんじゃないか?」
「拘置所?留置所?たしかにそれっぽい!」
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「いや〜、中に入るのはドキドキするねえ」
「後ろ暗いことがあるんだな」
「ないよ!ないない!」
「必死に否定すればするほど怪しくなるやつだな」
「なんだよ!大体なんの罪だよ!食い逃げか!万引きか!何をやりそうか言ってみろ!どうせショボいやつとか思ってるんだろ!くっそー!銀行強盗してやらあ!」
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銀行の金庫に入る。
「いや~札束風呂って憧れだったんだよね」
「自分から見ても無益な行為だと思うぞ…」
「あ…触れないから風呂無理じゃん。なんで銀行の金庫に札束風呂おいてないんだよ!」
「自分が何を言っているのか理解しているのか?」
「仕方ない札束ベッドで勘弁してやろう。イヤッホー!!」
「なんでも楽しめるやつだな」
札束の上に寝る。
起きる。
「何も楽しくない…」
「だろうな」
「じゃあこれで銀行強盗したことにして牢獄に入ろう」
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「檻を掴むから写真撮って写真!」
「だからカメラはないと…」
「いいから!気分だよ気分!ほらっ手でフレーム作って!それでレンズ覗くみたいにして!…違う!もっとちゃんとやって!そんでカシャって言って!」
「…カシャ」
「待って待って、撮る前はハイチーズとか3,2,1とか1足す2は?とかなんかあるでしょ!もう分かってないな!」
「人間の写真撮影の細かいルール何ぞ分かるわけないだろう。いくぞ、3,2,1,カシャ」
「あんがと。おーおー、いい写真撮れたねぇ」
「まだ劇は続いているのか。…しかし全力で笑いながらってのはどうなんだ?」
「そのほうがヤバいヤツ感がでない?」
「その通りではある」
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「次はどんな悪さしようかな!」
「…ついてこい」
「おっ!なになに?提案してくるのなんて初めてじゃん!企業スパイ?巨大詐欺グループ?…幽霊軍団の詐欺グループってうける!もしもし!こちらあの世なんですが、あなたの祖母から電話をかけたいと。祖母は死んでます!だからその祖母が。そんな詐欺に引っかかるやついるか!ツーツー…。全部ホントでも信じてもらえない。あーちょっと待って!!」
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「ここ?」
「そうだ」
「動物園じゃん、何盗むの?」
「盗まないし、盗めないだろう」
「あ~、私の心を盗もうとしているのかな?だがこんな子供だましの動物たちでできると思うなよ?」
「みてみて!キリンたっけーの!あ!あっちにフラミンゴいる!フラミンゴって加速する距離がないと飛べないの知ってた?」
「知っている」
「何故知っている!?」
「動物園に来た幽霊で、名前は忘れたがなんとかっていう生き物事典を読んだことのあるものは大体そのことを話すぞ」
「ガーン!先を越された」
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「そういや、地面はすけないで歩けるのね」
「それも概念だ」
「どういうこと?」
「お前は地面がどういうものでどう成り立っているのかとかまず考えないだろう。お前だけじゃなくほぼすべての人間がそうだ」
「ほう?」
「思考が行き届かないものには概念も行き届かない。つまり地面にはもぐれない」
「私、地球の裏にこんにちわするのが夢だったんだけどどうしてくれる!」
「幽霊になる前に物理的に地球の裏側に行かないとだめだったな。残念だったな」
「それって死なない?熱とか圧力とかもろもろでさ」
「死ぬな」
「死ぬじゃん。って結局やらなくても死ぬし!、だったら挑戦しておけばよかったか…?」
「やめておけ」
「やめるも何も、もう遅いのよね」
「まぁそうだな」
「・・・えっえっ、ちょっとまって一旦落ち着こう。それってもしかして…知らないところにはいけないっていうこと…?」
「よく辿り着いた」
「空を飛べた記念に今からちょうど世界各国に旅行に出発しようとしてたのに!」
「とても準備してたようには思えんがな」
「そりゃそうさ!幽霊なんて着替えもいらない、食べ物入らない、お金もいらない、なーんもいらないっ」
「そしてなんにも持ち帰れないと」
「そうだよ!旅行の一番の楽しみはお土産選びだっていうのに!」
「諦めろ、土産も旅行も」
「テレビの前のみんな、死ぬ前に色々やっておけ。死んだら何も新しいことできないぞ。空は飛べてもどこにも行けないぞ」
「そもそもテレビには映らないぞ」
「いいじゃんやりたかったの!ああ…。ほんとなにもできないよう」
「・・・」
「かなしい…かなしい…」
「こうやってウロウロして一生過ごすんだ…どこにも行けないで…」
「その割には楽しんでいる気もするが。それに四十九日間だがな」
「かなしい…」
・
・
・
「あ~。一箇所だけなら連れていけんこともないが」
「どこっ!お願いします!」
ハイスピード土下座をする
「楽しいところではないが…」
「十分十分!むしろ私が楽しくするよ!いや勝手にたのしくなるよ!」
「そうか」
「ウッキウキ!ウッキウキ!」
「それでは手をだせ」
手を差し出す「掴まれ」
「目を瞑れ」
「どっこかなどっこかなウッキウキ!はっ!?まさかいかがわしいところに連れて行く気じゃ!」
「ちょっと黙っていろ」
「はーい」
・ ・ ・ ・ ・
「着いた。目を開けていいぞ」
目を開けるとそこは朽ちた社だった。
「ここは?」
「自分が祀られていた社だ」
「もう誰も来ぬがな…」
「へー。何故ここに連れてきたの?」
「自分に縁のある場所などここしか存在しない」
「あ~大丈夫大丈夫!そのうち復興するよ!」
私流慰め術その2!ポジティブで明るくさせる!
「いいじゃん、苔むしてるところとか、屋根に穴が空いてるとことか、風情があるよ!」
「社も死んでいるだけだ。悪かったな、こんな陰気臭い場所に連れてきてしまって」
「いやいやいいや、知らない場所知れて嬉しいよ!リフォームしようぜリフォーム!」
「なにも触れないし、なにも直せない」
「それは、そう、心のリフォームだよ!」
「ああ、そうだ」
パンパン
手を叩き、拝む。
「其処にはもう何もいないぞ」
「いるよ」
死神は不思議そうに首を傾げる
「此処に貴方がいる。死んだ人にとっての神なんでしょ?なら拝んでも罰は当たるめぇ」
「そうか」
「じゃあ帰ろう!」
「あ、ちょっと待って」
「どうした?」
「どこかに賽銭落ちてない?」
「おい」
「なんだよいいじゃんかよー!もう誰も来ないんでしょ!」
「いや、そうではない」
「??」
「誰も来ないような社にそんなものが残っているわけがなかろう」
「まぁ旅行にいった気分にはなったよ、あんがと」
「どういたしましてだな。面白い場所でもなく悪かった。」
「いや、この年で新しいことを知れるなんて無いだろうからね、良かったよ」
「そうか」
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「そういや刀なかったけど、死んだから無くなったの?無くなったから死んだの?」
「そうではない、死したるのは信仰が朽ちた時だ。お前も見ているだろう?魂はそこにあるが肉体は死んだ場所にある」
「ああ、確かに」
「今どうしているかは知らないが、自分の本体はどこぞの質屋に売られたか人を斬る刀として使われたか・・・。もう古い、本当の意味で錆びて朽ちているかもしれんな」
「刀の末路なんてそれくらいしかないもんなぁ」
「そうだな」
「まぁだからこうして私に会えた、ラッキーだったな!」
「そういうことにしておこう。死んでしまったものは仕方がない」




