第154話 一本しかなかった道
主通路が落石で塞がれたという報告を受けてから、管理室の中では誰も大きな声を出さなくなった。
静かになったわけではない。通信機の呼び出し音、机に広げられる図面の音、装備を運ぶ隊員の足音が重なっている。それでも、無駄な話し声は消えていた。
相馬さんは管理責任者に、もう一度人数を確認させた。
「区画内は四人一組のパーティが一組。ほかに入っている人間はいないんだな」
「はい。入域記録と受付の記録は一致しています。四人全員が同じ場所で待機していると、先ほど本人たちからも報告がありました」
「分かった。入口側にいる救難隊員の人数も記録してくれ。途中で交代する人間がいたら、その都度確認する」
管理責任者が端末を操作する。俺は机の端に立ち、四人の現在地を示した図面を見つめていた。
主通路は、入口から奥へ緩やかに下り、途中で大きく曲がっている。落石があったのは、その曲がり角の先だという。四人は崩れた場所から離れ、少し広くなった作業用の待機区画にいる。
全員の意識はある。怪我をしたのは一人で、足に強い痛みがあり、立つことが難しいらしい。ほかの三人は歩ける状態で、持っていた応急処置の道具を使い、怪我人の足を動かさないよう支えている。
「久世、今の状況で何が一番必要だと思う?」
相馬さんが突然尋ねた。
「……四人のところへ行く道、ですか」
「それも必要だ。ただ、道があっても、怪我人を運べなければ意味がない。まずは、どういう状態で待っているかを聞こう」
相馬さんは通信機を取った。
「こちら救難班、相馬。聞こえるか」
『聞こえています』
先ほど報告してきた男性の声だった。少し息が荒いものの、言葉ははっきりしている。
「怪我をした人の状態を確認したい。意識はあるか。出血は?」
『意識はあります。会話もできます。左膝の辺りを強く打ったようで、動かすと痛がります。目立つ出血はありません』
「足先の感覚はあるか。無理に動かさず、分かる範囲で教えてくれ」
『本人は、指先の感覚はあると言っています。ただ、立とうとすると痛みが強いみたいです』
「分かった。立たせなくていい。救難班が合流するまで、今の場所で待機してくれ。落石の場所へ近づくな」
『了解です。……あの、B経路のことは?』
相馬さんは図面を見た。
「まだ使えると確認できていない。そちらへ向かわないでくれ」
『分かりました。実は、ほかの二人がBへ行けないかと言ったんですが、今朝の連絡を思い出して止めました』
「それでいい。使えるか分からない出口を探しに行って、四人がばらばらになる方が危ない。全員で待っていてくれ」
『……はい。お願いします』
通信が終わると、俺は少しだけ息を吐いた。あの四人は、今朝の注意を覚えていた。案内図に非常口と書かれていても、確かめられていない道へは進まなかった。
もし、連絡が間に合っていなかったら。そう考えると怖くなったが、今は想像で自分を追い詰めても仕方がない。四人が待っている場所は分かっている。あとは、そこへ安全に近づく方法を考える番だ。
管理責任者が新しい図面を広げた。
「主通路のほかに、設備点検用の迂回坑道があります。普段は作業員しか使いませんが、入口側の設備室から入り、落石地点の奥へ抜ける構造です」
俺は顔を上げた。
「それなら、四人のところまで行けるんですか?」
「図面上はそうなっています。ただし、普段は通り抜けるための道ではありません。設備の搬入に使う区間もあるので、途中の状態を確認する必要があります」
相馬さんはすぐに質問した。
「最後に人が通ったのはいつだ?」
「先月、設備の点検で使っています。その時の記録では、通行に支障はありませんでした」
「入口は現在も開けられるか」
「はい。鍵は管理室にあります。設備担当が案内できます」
「分かった。先行班を出す。落石の影響が及んでいないか、入口から順に確認してくれ。通れたとしても、怪我人を搬送できる幅があるかは別に見るんだ」
救難隊員たちが準備を始めた。俺も装備へ手を伸ばしかけたが、相馬さんに呼び止められた。
「久世はまだ待機だ。先行班が迂回坑道の状態を確認してから、必要なら入ってもらう」
「はい」
「お前が行けば出口までの方向は確認できる。だが、落石がまた起きるかどうかは分からないだろう」
「分かりません。そこは現場の確認が必要です」
「なら、役割ははっきりしてるな」
俺は頷いた。昨日から何度も同じようなことを言われている気がしたが、今回は以前より素直に受け止められた。待機することも、危険を増やさないための判断だ。
フェナは管理室の隅で、通信記録の整理を手伝っていた。四人の状態、最後に連絡した時刻、待機場所。瀬川さんが広域調整室から送ってきた記録用の表に、管理室の係員と一緒に書き込んでいる。
「ナオトさん、怪我をした方の痛みが強いそうです。救難班が着くまで、何かできることはないでしょうか」
「救護担当の人に相談しよう。俺たちだけで判断するより、その方がいい」
フェナは頷き、救護担当の隊員を呼んだ。隊員は通信機で本人たちの話を聞き、怪我をした足を無理に動かさず、体を冷やさないようにすること、痛みやしびれの変化があれば知らせることを伝えた。現場での処置は、合流した救難班が状態を確認してから判断するという。
俺はその説明を聞きながら、四人が今どんな気持ちで待っているのか考えた。
探索に入った時には、いつもの道を帰るつもりだったはずだ。主通路は使い慣れていて、受付にも異常は報告されていなかった。そこが突然塞がれ、仲間が怪我をした。
そんな時、非常口と書かれた道へ走りたくなるのは当然だろう。それでも四人は、使えると確かめられていない道を選ばなかった。
俺が今できるのは、その判断が間違っていなかったと、無事に帰ってもらうことで示すことだった。
先行班が迂回坑道へ入ってから、しばらくは細かな報告が続いた。
『設備室の扉を通過しました。床面に大きな損傷はありません』
『換気は維持されています。奥へ進む前に、壁と天井を確認します』
『途中の配管区画に到着。通路の幅を測っています』
管理室の地図には、先行班が確認した位置が少しずつ記されていく。俺はその印を目で追った。落石のあった主通路を横から回り込み、四人のいる待機区画の近くへ出るはずだ。
やがて、先行班から報告が入った。
『迂回坑道の奥に到達しました。主通路の落石地点より先へ出られます。現在、待機区画へ続く通路を確認しています』
俺は思わず相馬さんを見た。
「つながっていたんですね」
「ああ。ただし、まだ四人と合流したわけじゃない」
相馬さんは通信機を握り直した。
「現地班、搬送の見通しはどうだ?」
『狭い場所はありますが、通路の状態は比較的安定しています。通常の担架では曲がりにくい区間があるため、救難用の搬送器材を選定しています。設備担当にも確認してもらっています』
「分かった。急がなくていい。使う器材を決めてから入ってくれ」
『了解しました』
少しして、四人の待機区画へ先行班の声が届いたという報告が入った。管理室の通信機からも、喜んだような声が聞こえる。
『救難班です! こちらへ来ています!』
『本当ですか! こっちです!』
四人のうちの一人が返事をしたらしい。俺は肩の力を抜いた。姿はまだ見えないが、助けに来た人の声が届いた。それだけで、待っている時間の感じ方は違うはずだ。
その後、先行班は四人のいる区画まで到達した。怪我人は意識がはっきりしており、左膝の腫れと痛みがある。現場の救護担当が固定と搬送の準備を進め、ほかの三人にも体調の変化がないか確認したという。
「四人とも、そこにいるんですね」
俺が尋ねると、相馬さんは頷いた。
「ああ。これで、救助する相手と合流できた。次は連れて帰るための準備だ」
俺は胸の奥で息を吐いた。四人の位置が分かっても、道が見つかっても、まだ終わりではない。怪我人を安全に運べるかどうかを確かめる必要がある。
搬送器材の準備が整うと、相馬さんは俺を呼んだ。
「久世、現地班が帰路の確認を求めている。先行班が通行可能と判断した迂回坑道を使う。途中で危険だと判断されたら、その場で止まること。いいな」
「はい」
「四人のいる場所まで行って、帰る道筋を確認してくれ。設備の状態や搬送方法は隊員に任せる」
「分かりました」
俺は救難隊員と一緒に設備室へ向かった。入口の前では装備を一つずつ確認し、通信機の予備も受け取る。救助のための準備が整ってから、先行班の残した案内に従って迂回坑道へ入った。
坑道の中はひんやりしていた。壁には古い配管が残り、足元には新しい点検用の板が敷かれている。照明の届かない場所もあるが、先行班が確認した目印が一定の間隔で付けられていた。
「久世さん、この先で一度止まります。曲がり角の手前に配管が張り出しているので、搬送器材を通す時に注意が必要です」
同行する隊員が説明してくれた。
「はい。俺は後ろから確認します」
「無理に前へ出なくて大丈夫です。現地班と合流したら、帰路の方向を教えてください」
俺は頷き、足元を見ながら進んだ。
やがて、遠くから人の声が聞こえてきた。曲がり角を抜けると、携帯照明の下に救難隊員たちが集まっている。さらに奥には、四人の探索者がいた。
一人は床に座り、左足を固定されている。隣では仲間が上着を肩に掛け、もう一人が水を渡していた。残る一人は救難隊員と話しながら、持ってきた荷物をまとめている。
「……久世さん?」
座っていた探索者が俺を見上げた。
「はい。救難班の久世です。迎えに来ました」
探索者は少し驚いた顔をしたあと、力なく笑った。
「本当に、帰り道が見える人が来るんですね」
「見えるのは帰る方向だけです。ここまで来られたのは、救難隊員の皆さんが迂回坑道を確認してくれたからです」
俺が答えると、隣にいた仲間が小さく笑った。
「それでも、来てもらえると安心します。さっきまで、どっちへ行けばいいか分からなかったので」
俺は四人の顔を順番に見た。疲れてはいるが、全員こちらの話を聞けている。俺は救難隊員から怪我人の状態と搬送予定を聞き、無理に立たせないことを確認した。
「これから、さっき救難班が通った迂回坑道を使います。怪我をした方は搬送器材で運んでもらいます。ほかの皆さんも、隊員の案内に従ってください」
四人の代表らしい男性が頷いた。
「分かりました。……あの、主通路は、もう使えないんですよね」
「今は落石で塞がれています。危険な場所へ近づかないで、確認済みの道を使います」
「B経路も?」
「B経路は、まだ安全が確認できていません。今日は使いません」
男性は少し俯いた。
「……俺、最初はBへ行こうと思ったんです。地図には非常口って書いてあるし、主通路が塞がれたなら、そこしかないと思って」
「でも、行かなかったんですよね」
「はい。今朝、使うなって言われたばかりだったので。仲間には、俺が怖がってるだけだと思われたかもしれません」
俺は首を横に振った。
「確認できていない道へ進まなかったのは、正しい判断だったと思います。皆さんが同じ場所で待っていてくれたから、救難班も合流できました」
男性はしばらく俺を見てから、小さく頷いた。
「……そう言ってもらえると、少し楽になります」
救難隊員が搬送の準備を整えた。怪我人を器材へ移す際には、本人の痛みを確認しながら足の位置を調整する。仲間たちは心配そうに見守っていたが、隊員が一つずつ説明すると、少しずつ表情を緩めた。
俺はその間に《帰り道》を意識した。地上へ戻る道筋は、先ほど通ってきた迂回坑道の方向へ続いている。けれど、どの床が丈夫か、器材が曲がり角を通れるかまでは分からない。
「入口へ戻る道筋は、迂回坑道の方です。先行班が確認した経路と一致しています」
俺が伝えると、搬送担当の隊員が頷いた。
「ありがとうございます。では、先頭から順に移動します。久世さんは途中の分岐で方向を確認してください」
「はい」
四人のうち、歩ける三人は先行する隊員と一緒に進むことになった。ただし、怪我人を置いて先に地上へ戻るのではなく、途中の広い待機場所で搬送班を待つ。全員の位置が分かるよう、班ごとに人数を確認しながら進む手順だった。
怪我をした探索者は、器材の上から仲間を見た。
「先に行ってていいぞ。俺のせいで遅くなってるし」
代表の男性が首を横に振った。
「お前のせいじゃない。落石なんて誰も予想できなかっただろ。俺たちは先の広い場所で待ってる。勝手に帰ったりしない」
怪我人は何か言いかけて、結局小さく笑った。
「……分かった。頼む」
そのやり取りを聞いて、俺は胸の奥が温かくなった。帰る道が見えなくなった時、仲間を置いていかないと決めた人たちがいる。俺ができるのは、その気持ちが無理な行動につながらないよう、確かめられた道を一緒に進むことだ。
移動が始まると、救難隊員たちは一定の間隔で声を掛け合った。狭い配管区画では器材の角度を調整し、足元に段差がある場所では先に照明を向ける。俺は分岐の手前で帰路を示し、通路の状態については隊員の報告を待った。
途中、搬送器材を運ぶ隊員の一人が立ち止まった。
「ここで少し休憩を取ります。怪我人の状態を確認します」
器材が安定した場所に置かれ、救護担当が痛みやしびれを確認する。怪我人は顔をしかめていたが、意識ははっきりしていた。
「あとどれくらいですか?」
俺が尋ねると、先頭の隊員が答えた。
「この先の配管区画を抜ければ、設備室です。ただ、最後まで慎重に進みます」
俺は頷いた。帰る道筋は見えている。けれど、見えているからといって急ぐ必要はない。怪我人を安全に運ぶために、隊員たちが確かめている時間を大切にしたかった。
休憩が終わると、搬送班は再び動き始めた。配管区画を抜け、設備室の明かりが見えた時、怪我人が小さく息を吐いた。
「……本当に戻ってきたんだ」
「まだ地上までは少しありますよ」
俺が言うと、怪我人は笑った。
「分かってます。でも、さっきはもう帰れないかと思ったから」
その言葉に、俺は何も返せなかった。自分の足で歩けなくなり、いつもの通路も塞がれた時、どれほど不安だったのだろう。
設備室の外では、先に移動した三人が待っていた。怪我人の姿が見えると、代表の男性が大きく手を振った。
「おい! ちゃんと来たな!」
「……待ってろって言っただろ」
怪我人が笑い返す。隊員たちも少し表情を緩めた。
最後の通路を抜け、受付棟の外へ出ると、空気が一気に変わった。日差しが眩しく、俺は思わず目を細めた。救護担当の人たちが待っていて、怪我人を医療機関へ搬送するための準備を進めている。
相馬さんは四人の姿を一人ずつ確認し、通信機へ報告した。
「探索区画からの要救助者四人、全員地上へ退避。怪我人一人は救護担当へ引き継ぐ。救難班も人数確認を続けてくれ」
返事が続き、やがて入域した救難隊員全員の帰還も確認できた。
俺はようやく大きく息を吐いた。四人は帰ってきた。怪我をした人の治療はこれからだが、少なくとも今は安全な場所にいる。
代表の男性が俺のところへ来た。
「久世さん、ありがとうございました」
「俺だけじゃありません。現地の皆さんが、迂回坑道を調べてくれたからです」
「それも分かっています。でも、あの場所で帰り道を示してもらえたのは、ありがたかったです」
男性は少し迷ったあと、胸のポケットから折り畳んだ紙を取り出した。入域時に配られた避難案内図だった。
「これ、持って帰ってもいいですか。あとで管理室に見せたいんです」
「もちろんです。どうしてですか?」
「俺たち、B経路の方が近いって、ずっと思ってました。先輩からもそう聞いていたし、地図にも書いてある。だから主通路が塞がれた時、最初にBへ向かおうとしたんです」
男性は図面を開き、B経路の線を指でなぞった。
「でも、今日の朝、使えるか分からないって言われた。俺はその話を信じて止まったんです。もし知らなかったら、四人であの奥へ入っていたかもしれない」
俺は紙の上の矢印を見た。太く、迷いなく描かれた一本の線だった。そこに『非常口』と書かれていれば、誰だって信じたくなる。
「……あの案内を直すことになっています」
俺が答えると、男性は頷いた。
「お願いします。俺たちだけじゃなくて、これから入る人のためにも」
男性は仲間のところへ戻っていった。俺はその背中を見送りながら、今朝の会議を思い出した。古い図面に何が書かれているかだけでは足りない。そこに書かれた言葉を、今どんな人が信じているのかまで考えなければならない。
相馬さんが隣へ来た。
「ご苦労だったな。四人とも戻れた」
「はい。……でも、B経路のことが気になります」
「ああ。あそこは調査が終わるまで使わせない。今日の落石も原因を調べる必要がある。入域の再開は、施設側と専門家が安全を確認してからだ」
「Bが使えないと分かっていたから、四人は待っていられたんですね」
「そうだ。使えるか分からない道を、使えると決めつけなかった。それが今回、四人を助けるための時間を作った」
俺は頷いた。俺の能力は、帰る道筋を見せてくれる。でも、今日の四人が無事に戻れたのは、能力だけのおかげではない。連絡を受けて止まった判断、現地の図面を確かめた人、迂回坑道を点検した隊員、怪我人を運んだ人。その一つでも欠けていたら、帰るまでの時間はもっと長くなっていただろう。
その時、瀬川さんから通信が入った。
『相馬さん、四人の退避を確認しました。お疲れさまでした。それと、今朝の会議で依頼した避難案内図の照会ですが、ほかの地区からも返答が来ています』
「何か分かったか?」
『はい。今回と同じ様式の古い避難案内図を、複数の探索区画で使っているそうです。すべてが間違っているわけではありませんが、旧保守階段を非常口として載せているものがあります』
俺は顔を上げた。
「その階段は、今も通れるんですか?」
『まだ確認できていません。だから、各施設へ使用状況の確認と、必要な暫定案内を依頼しています』
相馬さんは少し考えてから答えた。
「分かった。今日の四人の話も共有してくれ。主通路が使えなくなった時、使えるか分からない非常口へ向かわず、待機して救難班と合流した。その判断が役に立ったことを、具体的に伝えたい」
『了解しました』
通信が終わると、俺は受付棟の入口を見た。さっきまで非常口を示していた古い案内図は、もう掲示されていない。代わりに、現在使えると確認できた経路と、連絡先が書かれた暫定図が貼られていた。
それでも、同じような古い案内を信じている人が、別の場所にいるかもしれない。
俺は、救護担当に付き添われて車両へ向かう怪我人を見送った。仲間の三人も、そのそばで何か話している。痛みがなくなったわけではないだろう。それでも、四人は一緒に帰ることができた。
相馬さんが俺へ声をかけた。
「久世、今日はここまでだ。残りは調査と周知の仕事になる。俺たちも一度戻ろう」
「はい」
俺は返事をしてから、もう一度受付の暫定図を見た。
あの四人が信じていた帰り道は、二本あるように描かれていた。けれど、今日確かめられたのは、迂回坑道を通る一本だけだった。
次に誰かが主通路を失った時、使える道を選べるようにする。そのためには、道を見つけるだけでなく、確かめた結果をきちんと伝えなければならない。
俺は相馬さんのあとを追い、管理棟を出た。広域救難から届いた新しい照会一覧には、まだ確認を終えていない探索区画がいくつも残っていた。




