第七話 「暖かい時間」
入学式を終えて家に帰ると、
「おかえり、水月」
在宅勤務していた陽向がひょこっと顔を出して出迎える。
「ただいま」
「学校はどうだった?」
「すごく楽しい高校生活になりそう!」
そういって水月は満面の笑みを陽向に向ける。
自室に行こうとすると
「もう部屋に戻るのか?」
と陽向に声を掛けられる。
「今日は中国の友達とビデオ通話の約束をしてるんだ」
「そうか、たくさん話しておいで」
理由を告げると、陽向は優しく笑ってそう言った。
部屋に入ってパソコンの電源を付ける。
そして、通話用のアプリを立ち上げて友達のグループへ電話をかける。
「水月、久しぶりネ」
「元気だタ?」
「私たち、元気ヨ」
懐かしい顔が画面に表示されて、つたない日本語で話しかけてくれた。
三人で仲良しグループだった。
李 雨桐
王 暁晴
そして私。
いつも三人で行動した。
日本から来たばかりの私は、中国語がほとんど話せなかった。
教室で困っていると、
「一緒に行こう」
と最初に声をかけてくれたのが、雨桐と暁晴だった。
日本語がわからないなりに、スマホの翻訳機を使って話しかけてくれた。
いろいろなことを教えてくれた。
いろいろな場所に連れて行ってくれた。
一緒に勉強もした。
日本に興味を持ってくれて、日本語や日本文化を教えた。
画面に映る二人を見ていると、
中国で過ごした三年間が次々と思い出された。
お姉さんタイプの雨桐から
「日本は、どうカ?楽しい?」
と聞かれた。
「もちろん!楽しいよ!二人は高校楽しい?」
と答えると、いつも明るい暁晴からは
「勉強、大変ヨ!!」
と大量の教科書と参考書を見せられた。
画面いっぱいに映る教科書や参考書、ノートなどを見て思わず苦笑する。
「やっぱり、中国は勉強量がすごいな……」
感心していると、暁晴が目を輝かせて言った。
「日本の制服!見せてヨ!」
「いいネ!見たい見たい!」
そう言って雨桐も同調する。
すでに部屋着に着替えていたので、
ハンガーに吊るした制服を画面に映して、校門前で兄と二人で撮った写真をメッセージアプリで送った。
「すごくかわいいネ!いいな!」
「中国にも制服あればいいのに」
そう言う二人。
その後も、お互いの学校生活や近況を話し合い、
気づけばあっという間に時間が過ぎていた。
まだ一か月しか経っていない。
それなのに、何年も会っていなかったような気がした。
その後、夕食を陽向と食べて、部屋に戻った。
すると、スマホに通知が来た。
確認してみると、雨桐と暁晴からだった。
急いで内容を見ると
「私たち、夏になったら、日本行くヨ」
という嬉しい知らせだった。
「絶対楽しみに待ってる!」
そう返信すると、自然と笑みがこぼれた。
中国で大切な友達ができた。
そして、日本でも新しい出会いがあった。
明日もきっと、大丈夫。
そう思いながら、私は学校の準備を始めた。




