第八話 「一緒に帰ろう」
翌日。
授業を終え、帰る準備をしていると、
隣から美桜が声をかけてきた。
「桜庭さん、この近くに新しくクレープ屋さんができたんだけど、一緒に行かない?」
突然の誘いに、一瞬驚く。
でも、すぐに笑顔になっていた。
「え! 行きたい!」
思わず即答すると、美桜は嬉しそうに笑った。
帰り支度を終わらせて二人でクレープ屋へ向かう。
「よかった! じゃあ行こう!」
二人で教室を出て、並んで歩き始める。
春の風が制服の裾を揺らし、桜の花びらがゆっくりと舞っていた。
「中国って、どんな学校だったの?」
歩きながら、美桜が興味津々という様子で聞いてくる。
「朝は日本より少し早かったかな。あと、毎日ジャージだったよ。」
「えー! 制服じゃないんだ!」
「うん。だから日本の制服にはずっと憧れてた。」
そう言うと、美桜は納得したようにうなずいた。
「昨日の制服、すごく似合ってたもんね。」
少し照れくさくなって、小さく「ありがとう」と返す。
その後も、
中国で人気だったスイーツのこと。
休日によく遊びに行った場所のこと。
中国語を覚えるのに苦労したこと。
気づけば、話題は次々と広がっていた。
美桜は何度も
「へぇ!」
「すごい!」
と目を輝かせながら話を聞いてくれる。
その姿が嬉しかった。
そして、中国でのことを聞かれると、中国の友達のことも肯定されているようで嬉しかった。
私の大切な思い出として受け止めてくれている気がした。
そうしているうちに、クレープ屋へ着いた。
「どれにしよっか~」
「どれもおいしそうで迷う~」
そう言いながら、メニューを二人で見た。
色とりどりのクレープが並んでいた。
いちご。
チョコバナナ。
抹茶あずき。
どれもおいしそうで、なかなか決められない。
「私はイチゴ!」
「じゃあ私はチョコバナナ!」
それぞれ注文を済ませると、甘い香りが店いっぱいに広がっていた。
「中国でもクレープ食べた?」
「うーん、私はどちらかというとタピオカが好きだったなあ」
そんな会話をしながら出来上がりを待つ。
やがて出来上がったクレープをそれぞれが受け取り、近くの公園のベンチに座る。
「いただきます。」
一口食べると、甘いクリームが口いっぱいに広がった。
「おいしい!」
思わず声が出る。
「でしょ?」
美桜が笑う。
その笑顔につられて、私も笑った。
中国には、大切な友達がいる。
そして、日本でも。
そんなふうに思えたことが、何より嬉しかった。
そんなことを思うと、胸の奥が少しだけ温かくなった。
帰り道。
「じゃあ、また明日ね!」
「うん。また明日!」
手を振る美桜を見送りながら、私も自然と笑っていた。
昨日までは、不安でいっぱいだった。
でも今日は違う。
明日学校へ行くのが、少しだけ楽しみになっている自分がいた。




