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あなたがお兄ちゃんでよかった  作者: すい


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第四話 「変わらない景色」

家に着いて、

靴を脱ぐ。

リビングへ入る。

「懐かしい匂い……。」

水月がつぶやく。

そんな水月を見た陽向は優しく微笑む。



その後、自室で荷ほどきをする水月。

持って帰ってきたスーツケースと宅急便で届いていた段ボールを開けると、

中国で撮った写真や

友達からもらった手紙、

お守り、

小さなパンダのぬいぐるみ、

大切そうに入っていた。

それを見た陽向が

「それ、中国で買ったのか?」

と聞く。

水月は

「友達にもらったの。」

と笑う。

それを見た陽向は

「そうか、よかったな」

と微笑む。


一息つこうと、陽向は水月が好きだったお菓子と紅茶を用意した。


「お兄ちゃん、私が好きなお菓子と紅茶覚えててくれたの?」

「水月、昔から好きだっただろ。」

「覚えてたんだ。」

「当たり前だろ、忘れるわけない。」

そう他愛ない話をしながら休憩する。


しばらくたったころ

「水月が通う高校、見に行ってみるか?」

陽向が誘う。


水月は目を輝かせて首を縦に振る。


高校は、家から徒歩15分ほどの場所にある。

中国にいながら日本の高校を受験するのは簡単ではなかった。

何度も日本へ戻り、試験を受けた。

大変だったけれど、この高校だけは諦めたくなかった。



水月が合格の知らせを聞いて喜んでいた日のことを、陽向は今でも鮮明に覚えている。



準備をして玄関を出る。

陽向が鍵を渡す。

「はい。」

「?」

「家の鍵。」

「もう高校生だからな。」

そう陽向は言って家の鍵を水月に渡した。

「ありがとう」

そう言って、水月は鍵をカバンの中に仕舞う。


高校までの道のりを歩く。

水月の目には、三年前と変わらない光景が広がる。

子供のころお兄ちゃんに連れて行ってもらった公園。

6年間通った通学路。

変わらないことがこんなに安心するとは思わなかった。


三年間、陽向はこの道を一人で歩いた。

隣に水月がいないだけで、こんなにも静かになるのかと思った。

でも今日は違う。

「お兄ちゃん、見て!」

水月の声が隣から聞こえる。

それだけで、この道は少し賑やかになった。


高校に着いた頃には、時計の針は十五時を少し回っていた。

校内には、部活動へ向かう生徒や帰宅する生徒たちの姿があった。


水月が

「制服かわいい……。」

とつぶやく。

陽向はうなずく。

そして校舎を見上げる。

「俺らの頃と変わってないな。」


この高校は陽向の母校だった。


「懐かしいな。」

校門を見上げながら、思わず笑う。


あの頃は、自分の後ろを小さな水月がついて歩いていた。

まさか水月が自分と同じ校門を潜ることになるとは思わなかった。


水月はこの高校へ通う陽向にずっとあこがれていたのだ。


小学生の頃。

授業参観の日に母と一緒に訪れたことがある。

校舎は広くて、

制服はかわいくて、

部活動をしている生徒たちはみんな楽しそうだった。

その中に、お兄ちゃんがいた。

「私もいつか、この高校へ通いたい。」

そう思った日のことを、水月は今でも覚えている。


陽向としては、私立高校なので教師の顔もあまり変わらずで、水月が通うことの安心材料だった。


水月が

「写真撮って!」

と言う。

陽向が

「まだ入学式でもないのに?」

と言いながら校門の前で水月の写真を撮る。

そして、

水月が

「これ、中国のみんなに送る!」

と言う。


陽向は、中国での妹の生活がとても充実していたことを感じて、

胸がホッとしたのだった。


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