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札付き魔術師の学園生活  作者: Coco
一学期
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3/6

Ⅱ入学

私は極秘任務解決部『陰』所属のウメ・イーグレット。

今日から男爵令嬢プラム・トパーズとして国内唯一の魔術学校『学園』に潜入する。

⎯⎯ということで、私は使い魔の1体、朱雀に乗せて『学園』へ連れていってもらっている。


朱雀はその赤い羽をはばたかせ、私に声をかけた。



「もう、下は『学園』ヨ」

「うわぁ、本当だ!」



地上を覗き込むと、そこには『学園』の広大な敷地が広がっていた。

茶色く厳かに立つ校舎、色鮮やかな庭園。


ここは国の魔術を使う者が集まる学校、『ディベルティメント魔術学校』通称『学園』。

多くの著名な魔術師を輩出していて、有名なのは国内最高峰の魔術師たち『五惑星』のほとんどが『学園』の卒業生であること。


『陰』も在学中のチェリー・フィナーレを除けば、私以外の人間は全員『学園』の卒業生である。



「朱雀、ありがとう」



お礼を言うと、朱雀は空中にも関わらず、赤い鳥の折り紙に戻った。

私は落下しながら折り紙をしまい、かわりに1枚の御札を取り出す。



「臨む兵、闘う者、皆、陣列べて前に在り。四神・青龍よ、我に力を──疾風(ブッラスカ)



そう唱えると御札が緑に光り、足元から風が舞う。


私はそのまま地面に着地し、目の前の大きな漆黒の門を見上げた。



「ここがプラム・トパーズの『学園』か、悪くないね」



♢♢♢



「美しく尊い女神様、我に神の力を──鑑定(オッキオディバル)の瞳(タジオーノ)



私が小声で詠唱を行うと、片目に小さく魔方陣が浮かび上がる。


私は普通の魔術は得意ではないが、5分程度なら持続させられる。

クラスメートの実力を見るならこのくらいが丁度いい。



「トパーズさん、入って」



扉を開いて担任の教師が顔を出した。

私は返事をして、廊下から教室へ足を踏み入れる。


高等部2年B組。


ざっと見たところ、普段『陰』を見ているからかめぼしい力の人物はあまりいない。

どちらにしても私には匹敵しそうもないな。



「プラム・トパーズ、16歳です。王都のはずれの出身でプラムパイが好物です」



簡単な自己紹介、プラムの設定は綿密に組み立てたから問題はない。

ここまでは順調。


ここからが、最大のカミングアウトだ。



「陰陽道が得意です」



教室内がざわついた。

陰陽道、そしてそれを使う陰陽師。


大昔、東の国で生まれた術は、長い道のりを経てこの西の国々へも届いた。

しかし、すでに魔術が普及していた我が国では陰陽師は魔術師の劣化版『札付き魔術師』と呼ばれ、虐げられた。


80年程前、奴隷と等しくなりかけていた彼らを救った陰陽師がいたのだが、それももう昔。

いまだに『札付き魔術師』として差別が続いている。


プライドが高く、魔力の多さだけで『学園』に進み、出世コースのクラスメートには嫌なものだろう。

値踏みや好奇の視線が明らかに蔑みの視線に変わった。


あぁ、これが嫌だから学校には通わなかったのに。



「これからよろしくお願いします」



己に向けられる視線に嫌悪感を抱きながら、私は仮面の笑顔のまま美しく礼をした。


教師に命じられるがまま席に座り、視線だけゆっくり動かす。


将来有望そうな宝石の原石は2人。


黒檀を溶かしたような黒髪と紅の瞳を持つ『陰』の最年少、チェリー・フィナーレ。


もう1人は、金と赤の髪の目付きの悪い青年。

あの特徴的な髪はルミナス公爵家の者ではないだろうか。


そんなことを考えていたら、休憩時間に入り、可愛らしい少女がヒールを鳴らして近づいてきた。

オレンジ色の巻き髪に蘭の飾りをつけた彼女は、ピーコックグリーンの丸い瞳で私を見下ろした。



「ごきげんよう、トパーズ男爵令嬢。わたくしはシャイニー・オルキデア。シャインと呼んでくれる?」



にこりと笑ったオルキデア嬢に私が応えようとしたその時、通路を挟んで横に座っていたチェリーが口を挟んだ。



「プラムは私の侍女なの。そちらに引き込まないでくれるかしら」



オルキデア嬢はそう言ったチェリーを面倒くさそうに見て、扇を口に当てた



「あら、そんなの関係なくってよ?編入して間もないもの、分からないことがあったら遠慮なく聞いてね」



何故か哀愁を漂わせ、オルキデア嬢は他の生徒のもとへ話しにいった。

なんであんなに寂しそうだったのかな……。


私がオルキデア嬢を目で追っていると、チェリーが小さく詠唱を行った。

薄い防音結界が張られ、彼女が浅い礼をした。



「お久しぶりです、イーグレット先輩」

「久しぶり、チェリー」

「では、早速情報を共有致しましょうか」



一応『陰』は年功序列。先輩は敬うものである。

現在1番後輩のチェリーは、鼻の高い貴族の一員とは思えないほど、皆に敬語を使っている。


正直、私は年功序列なんて知らねーという派閥なので先輩後輩関係なくタメ口である。

幼い頃からここにいましたから不敬とかではないですけどね。

それを踏まえるとチェリーはとっても優秀な後輩なのだ。


私が感心していると、チェリーがオルキデア嬢を見た。



「先ほどのオルキデア嬢は存じ上げていると思いますが、オルキデア侯爵家のご令嬢でございます。この学年では1番爵位が高い令嬢で、社交界にも顔が広いため2学年の女王と言っても過言ではないでしょう」



私も任務で何度か見かけたことがあるから、きっと社交に積極的な子なのだろう。



「あまり彼女の邪魔はしない方が良いかと。最悪退学に追いやられます」

「そこまで?」



いくら侯爵令嬢と言えど退学は言い過ぎでは?



「私はできますが?」

「……ならできるか」



オルキデア嬢と同じ侯爵令嬢のチェリーがそう言うならできるのだろう。

貴族って怖い。



「そんなことになりましたら、私が持ち得るすべての権力と財力を乱用してでも止めますが」



それは裏の私たちは助かるけど、表のフィナーレ侯爵家が困りますよね?



「それはやめようか。あと他に注意すべき人はいる?」

「このクラスではノーチェ・ルミナス公爵令息でしょうか。実力も努力も申し分なく、爵位は学年で最も高いですから。ただ、少々不良の一面があり、私は認めておりません」



チェリーは私が知る限り最も礼儀に厳しい人である。

相当嫌われているんだろうなぁ。


それに、やっぱり彼は公爵家の者だったか。



「ありがとう、チェリー」



気を付けるべきはオルキデア嬢とノーチェ・ルミナス、ね。



「それで、チェリーはここで何を調査しているの?」

「はい、私が調査しているのは⎯⎯」



チェリーはかしこまり、凛と言葉を発した。













「『学園』で流通している『魔壊』についてです」



……魔壊!?

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