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河内正則・栄光への道  作者: リンダ


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残り二回

「残り二回」


 五回を終えて、4-0。


 大阪タイタンズが四点をリードしている。


 だが、川原監督はベンチへ戻ってきた選手たちに念を押した。


「まだ六つアウト取らな終わらん。四点差は忘れろ」


 天王寺ゴールデンスターズも、ここまでチーム防御率1.56で準決勝まで勝ち上がってきたチームだ。


 六回。


 試合はいよいよ最終盤へ入った。


 六回表 大阪タイタンズ


 この回は五番・藤原航から。


 天王寺のマウンドには左サイドスローの工藤礼音が続投している。


 タイタンズはこれまでと同じように、狙い球を絞って打席へ入った。


 しかし工藤も五回の攻撃を受けて修正してきた。


 左打者への甘い内角。


 右打者への外角高め。


 タイタンズがそこを狙っていることを察し、ストライクゾーンの使い方を変えてくる。


 五番・藤原航。


 打球は内野ゴロ。


 ワンアウト。


 六番・加藤亜由美。


 亜由美もセンター方向を意識して振り抜くが、外野フライ。


 ツーアウト。


 七番・川上眞子も出塁できない。


 スリーアウト。


 この試合、タイタンズも決して天王寺投手陣を完全に打ち崩しているわけではない。


 六回表、大阪タイタンズは三者凡退。


 スコアは4-0のまま。


 六回裏 天王寺ゴールデンスターズ


 攻撃を前に、天王寺ベンチでは最後の攻略策が確認されていた。


 監督が打者たちを集める。


「池永の速球、狙うなら内角や」


 ここまでの投球データが示される。


 智雄の速球そのものは強い。


 手元まで伸びてくるため、外角を追えば振り遅れる。


 だが何球か、内角を狙った速球がわずかにシュート回転していた。


 右打者の内角を狙った球が、そのまま厳しいコースへ行かず、少しだけ真ん中方向へ戻ってくる。


「全部やない。でも、時々ある」


 監督が続ける。


「内角の速球が中へ入ってきたら、そこを逃すな」


 天王寺打線が狙いを変えた。


 そして智雄がマウンドへ上がる。


 藤原航が構えた。


 初球。


 速球。


 天王寺の打者が迷わず振ってきた。


 ファウル。


 智雄が一瞬、打者を見る。


 次の球。


 外角。


 打者はほとんど反応しない。


 その次。


 再び内角。


 バットが鋭く出てくる。


 ファウル。


 智雄はマウンド上でボールを受け取った。


「……なるほど」


 ここまでとは違う。


 外角への反応が薄い。


 それに対して、内角の速球には明らかに振ってくる。


 藤原航も気づいていた。


 返球を受けた智雄と一瞬だけ目が合う。


 狙われている。


 それなら、そのさらに内側を使う。


 航がミットを高く構えた。


 インハイ。


 智雄が振りかぶる。


 力感のないフォーム。


 そこから腕が走った。


「バシッ!」


 高めの内角。


 打者の胸元へ伸び上がるような速球。


 バットが出る。


 だが差し込まれた。


 ファウル。


 次も内角を意識させる。


 そして最後は外角へ。


 打球は内野ゴロ。


 ワンアウト。


 二人目。


 天王寺の打者は、それでも甘くなる内角を待つ。


 智雄が投げる。


 内角。


 だが今度は中へ入ってこない。


 高い。


 しかも厳しい。


 インハイ。


 打者が振る。


 詰まった打球が上がった。


 内野手が落下地点へ入る。


 捕球。


 ツーアウト。


 天王寺ベンチにも変化が伝わる。


 狙っていた内角が、甘く来なくなった。


 智雄が修正している。


 三人目。


 智雄はさらに大胆になった。


 外角へ速球。


 ストライク。


 次は内角高め。


 打者がのけぞる。


 ボール。


 だが、目線は完全に上へ動いた。


 次の球。


 同じ腕の振り。


 打者は速球を警戒する。


 ところが――


 超スローボール。


 60キロ前後の一球がストライクゾーンへ入ってくる。


 打者の身体が前へ出る。


 タイミングが合わない。


 そして再び速球。


 最後は打ち損じた。


 内野ゴロ。


 一塁送球。


 アウト。


 スリーアウト。


 六回終了


 大阪タイタンズ 4-0 天王寺ゴールデンスターズ。


 天王寺は六回、智雄の内角速球に狙いを定めた。


 わずかにシュート回転し、真ん中寄りへ入ってくる球を仕留める。


 その狙いは間違っていなかった。


 だが智雄自身が数球で変化を察知した。


 そして内角を避けるのではなく、逆にインハイを大胆に使った。


 甘い内角を待っていた打者に、さらに厳しい内角高めを見せる。


 そこから外角。


 さらに超スローボール。


 天王寺打線は再びタイミングを崩された。


 六回裏も三者凡退。


 残るは七回。


 大阪タイタンズ。


 決勝進出まで、あと三つのアウト。


 次回予告

 第○話「最後の三つ」


 4-0。


 ついに迎える最終回。


 七回表、大阪タイタンズには最後の追加点を狙う攻撃が残っている。


 そして七回裏。


 天王寺ゴールデンスターズにとっては、後がない最後の攻撃。


 池永智雄をそのまま完投させるのか。


 それとも、河内正則か星野慎一へつなぐのか。


 ベンチには二人の投手が準備を整えている。


 しかし、ここまで天王寺打線を封じてきたのは智雄だ。


 速球。


 内外角。


 超スローボール。


 そして相手の狙いを試合中に察知し、インハイへ切り替えた修正力。


 全国大会への切符を争う決勝戦まで、あと一歩。


 次回、


「最後の三つ」


 大阪タイタンズ、決勝進出まであと三つ

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