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河内正則・栄光への道  作者: リンダ


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54/107

一球を削る準決勝

「一球を削る準決勝」


大阪府大会準決勝。


大阪タイタンズ対天王寺ゴールデンスターズ。


初回表、タイタンズは三者凡退に終わったものの、天王寺の先発・神崎拓海に25球を投げさせた。


ヒットが出なくても、簡単にはアウトにならない。


際どい球はカットする。


ボール球は見送る。


そして甘く入った球だけを仕留める。


その方針を貫いたまま、試合は一回裏へ入った。


一回裏 天王寺ゴールデンスターズの攻撃


大阪タイタンズの先発マウンドに上がったのは、


池永智雄。


捕手・藤原航がミットを構える。


智雄は大きく力むことなく、ゆったりと足を上げた。


一見すると、全力で投げているようには見えない。


ところが――


「バシッ!」


ボールは打者の手元へ来てから、もうひと伸びする。


天王寺の一番打者・藤崎陸が思わず振り遅れる。


初球、ストライク。


二球目。


今度は外角。


同じような力感のないフォームから投げ込まれたボールが、外角いっぱいへ伸びてくる。


藤崎が打ち返す。


セカンドゴロ。


宮本さくらが処理して一塁へ。


ワンアウト。


続く二番・倉橋悠斗。


智雄は内角と外角を交互に使う。


三球目。


外角への速球を打たせた。


ショートゴロ。


川上眞子が軽快にさばいてツーアウト。


三番・水島蓮。


ここまでと同じフォーム。


初球は内角。


二球目は外角。


水島も簡単には振らない。


三球目。


もう一度、外角。


水島が振り抜いた。


センターへ飛球。


梶原和樹が落下地点へ入り、そのまま捕球。


スリーアウト。


わずか10球。


池永智雄、三者凡退。


上々の立ち上がりだった。


真央がすぐに記録する。


一方の神崎は一回表だけで25球。


智雄は10球。


スコアは同じ0-0でも、投手にかかっている負担には早くも差が生まれていた。


二回表 大阪タイタンズの攻撃


先頭は四番・三宅奈緒。


タイタンズの方針は変わらない。


簡単には振らない。


だが、狙った球が来れば仕留める。


神崎の初球。


外角。


見送る。


二球目。


ファウル。


そこから奈緒は粘った。


際どい球をカット。


ボール球を見送る。


七球を費やし、迎えた八球目。


内角。


また少しだけ真ん中寄りへ入った。


奈緒が振り抜く。


「カキーン!」


鋭い打球がレフト線を破った。


レフトが追う。


その間に奈緒は一塁を蹴り、二塁も回る。


返球が三塁へ来る。


奈緒が滑り込んだ。


「セーフ!」


スリーベースヒット。


ノーアウト三塁。


タイタンズに絶好の先制機が訪れた。


五番 藤原航


ここでも慌てない。


神崎に球数を投げさせる。


初球。


ボール。


二球目。


ストライク。


三球目をファウル。


四球目はボール。


五球目も見極める。


カウント3-2。


六球目。


外角寄りのストライク。


航が振り抜いた。


打球はライトへ上がる。


ライト・松永航平が下がって捕球。


その瞬間、三塁の奈緒がスタート。


ライトから本塁へ返球される。


奈緒がホームへ滑り込む。


「セーフ!」


犠牲フライ。


大阪タイタンズ、先制。


1-0。


ワンアウト、走者なし。


六番 加藤亜由美


亜由美も粘る。


神崎の速球を簡単には打ちにいかない。


際どい外角はカット。


低めのボールは見送る。


七球目。


内角へ入ってきた。


亜由美が思い切って振り抜く。


強烈な打球。


センター方向へ一直線。


しかしセンター・藤崎が前進。


落下点へ入る。


そのまま捕球。


センターライナー。


ツーアウト。


当たりは良かった。


だが正面だった。


七番 川上眞子


神崎はすでに、この回だけでもかなりの球数を費やしている。


それでも眞子は容赦しない。


初球を見送る。


二球目、ファウル。


三球目、ボール。


四球目、カット。


五球目もファウル。


六球目は低めを見送る。


七球目。


外角をカット。


八球目。


内角。


またファウル。


九球目。


低め。


見送る。


そして十球目。


神崎がストライクゾーンへ投げ込んだ。


眞子が振り抜く。


「カンッ!」


強烈なライナー。


だが――


セカンド・倉橋悠斗の正面。


倉橋が反応して捕球。


セカンドライナー。


スリーアウト。


二回表終了


大阪タイタンズは四番・三宅奈緒の三塁打から、五番・藤原航の犠牲フライで先制。


大阪タイタンズ 1-0 天王寺ゴールデンスターズ。


そして、この回に神崎へ投げさせた球数は、


三宅奈緒、8球。


藤原航、6球。


加藤亜由美、7球。


川上眞子、10球。


合計31球。


一回の25球と合わせ、


二回終了時点で56球。


天王寺の防御率1.56を支えてきた先発・神崎拓海。


まだ失った点は、わずか一点。


だがタイタンズは、その一点を奪うために神崎へ徹底して球数を投げさせていた。


ヒットを待つのではない。


四球だけを待つのでもない。


際どければカットする。


甘ければ振る。


そして、小さな好機を確実に一点へ変える。


準決勝は、序盤からタイタンズが狙っていた形になり始めていた。


次回予告


第○話「56球の代償」


二回を終えて、神崎拓海の球数は56球。


しかしスコアは、まだ1-0。


天王寺ゴールデンスターズも黙ってはいない。


四番・城戸大雅から始まる二回裏。


長打力を持つ中軸打線が、池永智雄に襲いかかる。


一方、タイタンズの真央と絵里は神崎の投球データに、新たな変化を見つけ始める。


球速。


リリースポイント。


そして、内角への制球。


大量点はいらない。


だが、一点では安心できない。


準決勝はここから、本当の我慢比べへ入る。


次回、


「56球の代償」


全国大会まで、あと二勝。

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