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河内正則・栄光への道  作者: リンダ


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試合終了 大阪タイタンズ、ベスト4進出

試合終了 大阪タイタンズ、ベスト4進出


最後まで岸和田キャッスルズに反撃の糸口を与えなかった。


大阪タイタンズ 8-0 岸和田キャッスルズ。


ゲームセット。


整列を終えた選手たちがベンチへ戻ってくる。


だが、川原監督はすぐには「完勝」という言葉を使わなかった。


なぜなら、タイタンズにはもう一つの試合が残っていたからだ。


数字との試合。


森下真央と絵里が、試合中に記録したデータを選手たちの前に広げた。


⸻


試合後ミーティング


真央がホワイトボードに大きく書く。


8-0


その下に、


投手

打撃

守備

走塁


の四項目を書き加えた。


「まず、投手陣からいきます」


選手たちの表情が再び真剣になる。


⸻


投手データ


星野慎一


3回・無失点


被安打:0

四死球:0

奪三振:2

内野ゴロ:5

外野フライ:2

失点:0


ストライク率も非常に高かった。


何より大きかったのは、三回まで岸和田打線にまともな打球をほとんど許さなかったこと。


真央が説明する。


「慎一は球速だけじゃありません」


「今日よかったのは、内外角と高低の使い分けです」


そして――


「あの超スローボール」


全員が少し笑う。


たった一球。


しかし、その一球が岸和田打線全体に影響した。


「速球一本で待てなくなったことで、三回の初球攻撃にも迷いが出ています」


慎一がうなずく。


「一球だけでも効くんやな」


智雄が答える。


「むしろ一球だから効く」


⸻


河内正則


4回・無失点


被安打:2

四死球:0

奪三振:4

失点:0


速球平均球速は慎一とほぼ同等。


そしてスローボール。


この日投げた緩い球は、すべてストライクゾーンを通過していた。


真央が画面を切り替える。


「正則の場合、速球とスローボールのフォーム差がほとんどありません」


亜由美が横から言う。


「そら打つ方イヤやわ」


正則が笑う。


「投げてる方は楽しいけどな」


「性格悪っ」


亜由美の即答。


ベンチに笑いが起きる。


⸻


打撃データ


今度は絵里が説明する。


チーム合計。


8得点。


特に大きかったのが長打だった。


二塁打を重ね、川上眞子には三ランホームラン。


しかし絵里が強調したのは、長打数ではない。


「今日、一番評価したい数字はこれです」


画面に表示された。


得点圏での進塁打成功率


かなり高い。


送りバント。


犠牲フライ。


右打ち。


内野安打。


タイタンズは長打だけで8点を取ったわけではなかった。


「打てない場面でも、一個先の塁へ進めています」


川原監督がうなずく。


「これや」


「全国大会行ったら、ホームランなんてそう簡単には出ん」


「打てん日にどう一点取るかや」


⸻


そして、南野攻略


ここには事前分析がはっきり表れていた。


南野の弱点として確認していた、


右打者へのインロー。


5回。


タイタンズはそこを徹底的に狙った。


結果――


三者連続二塁打。


さらに送りバント、犠牲フライ。


3点。


真央が言う。


「これは偶然じゃありません」


「試合前の情報収集と、試合中のデータ修正が一致した結果です」


⸻


守備データ


守備も無失策。


特に評価されたのが、朝倉美羽。


本来は強肩を生かした外野起用が多い。


しかしこの日はサード。


岸和田の引っ張り傾向を考慮した配置だった。


三塁線への打球にも反応し、堅実にアウトを重ねた。


川上眞子もショートで広い守備範囲を発揮。


外野陣にも大きなミスはなかった。


⸻


それでも見つかった「次の課題」


ところが。


真央が画面を変えた瞬間、雰囲気が変わった。


「いい数字ばっかりじゃありません」


川原監督が笑う。


「そっちが大事や」


最初の課題は――


初見投手への対応。


御堂に対して、一回は三者凡退だった。


データが集まり始めてから攻略できたものの、全国大会クラスになれば、試合中に修正する時間すら与えてくれない可能性がある。


「初回から相手の特徴を見抜く力を、もっと上げる必要があります」


二つ目。


速球派投手に対するファウルの使い方。


南野に球数を投げさせることには成功した。


しかし、一部の打者には追い込まれてから力勝負をしてしまう傾向があった。


「全部ヒットにしようとしなくていい」


「嫌な球ならファウルで逃げる」


これも全国大会へ向けた課題だった。


そして三つ目。


超スローボールへの依存禁止


これには正則も慎一も智雄も表情を引き締めた。


川原監督が言う。


「今日、めちゃくちゃ効いた」


「せやからこそ怖い」


「全国大会になったら、今日の映像は絶対研究される」


もう秘密兵器ではなくなる。


正則が腕を組む。


「次は待たれるかもしれん」


智雄もうなずいた。


「なら、投げなくても抑えられるようにする」


慎一も続く。


「速球とコースだけでも勝負できるようにする」


川原監督が笑った。


「それでええ」


そして最後に、ホワイトボードへ書いた。


『秘密兵器は、見せた瞬間から秘密ではなくなる』


だから進化する。


一つ見せたら、次を作る。


攻略されたら、そのさらに先へ行く。


8-0。


数字だけなら完勝だった。


しかしタイタンズにとって、この準々決勝は完成を証明した試合ではない。


全国大会で勝つために、まだ何が足りないのかを見つけた試合だった。


ベスト4進出。


そして次は――


大阪府大会、準決勝。


全国大会への切符が、いよいよ手の届くところまで近づいていた。

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