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河内正則・栄光への道  作者: リンダ


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博多南中学校、初めての寮生活

 河内正則 栄光への道

 第46話「博多南中学校、初めての寮生活」

 第一章 大阪で過ごす最後の三月

 三月下旬。


 大阪の街にも春の暖かさが感じられるようになっていた。


 大阪タイタンズを卒団した河内正則と加藤亜由美は、四月から始まる博多での新生活に向けて、引っ越しの準備を進めていた。


 進学先は、福岡市の博多南中学校。


 全国から入学希望者が集まる学校であり、野球、バレーボール、卓球などのスポーツだけでなく、吹奏楽、演劇、科学などの文化系活動も盛んだった。


 遠方から進学する生徒のために寄宿舎が設けられているものの、入寮審査は非常に厳しい。


 今回の希望者は四十八人。


 入寮を許可されたのは男女合わせて二十人。


 正則と亜由美は、その難関を見事に突破していた。


 しかし、入寮が決まったからといって、準備が終わったわけではない。


 河内家。


 正則の部屋では、父の河内修司、母の河内恵子、姉の河内一香が荷造りを手伝っていた。


 もっとも、荷物を選んで詰めるのは正則自身の仕事だった。


 修司はチェックリストを手にしている。


「正則、着替えは全部そろったか?」


「うん!」


「学習用具は?」


「入れたで!」


「洗面用具は?」


「大丈夫や!」


「野球道具は?」


「もちろんや!」


 正則は得意そうに胸を張った。


 すると、一香が机の下をのぞき込んだ。


「あれ?」


「何や、姉ちゃん?」


 一香が取り出したのは、大阪タイタンズ時代から正則が愛用しているグラブだった。


「正則! 一番大事なもん忘れとるやん!」


 正則は目を丸くした。


「うわっ! ほんまや!」


 恵子が吹き出した。


「正則! 野球するために博多へ行くのに、グラブ忘れてどうするん!」


 修司も笑った。


「向こうで素手で守るつもりやったんか?」


「そんなわけないやろ!」


 一香はさらに追い打ちをかけた。


「博多フューチャーズの初練習で、『監督、グラブ大阪に忘れました』って言うん?」


「姉ちゃん! もうええって!」


 一家は大笑いした。


 しかし、笑いが落ち着くと、正則はグラブを手に取った。


 何度も勝利をつかんできた。


 そして、東京ドームでは悔しい敗戦も経験した。


 大阪タイタンズでの思い出が詰まったグラブだった。


「……こいつも、博多へ連れていかなあかんな」


 修司がうなずいた。


「そうや。大切に使いなさい」


 恵子も微笑んだ。


「それから正則、荷物は向こうで自分で片づけるんやで」


「分かっとる!」


「洗濯も掃除も、自分でやるんよ」


「分かっとるって!」


 一香が笑った。


「お母さん、三日後には『洗濯機の使い方教えて』って電話が来るんちゃう?」


 正則が即座に言い返した。


「絶対に電話せえへんわ!」


 修司は苦笑した。


「いや、分からんことがあったら聞いてええんやぞ」


 一香が声を上げて笑った。


「お父さん、そこは正則を信用したって!」


 正則も思わず笑ってしまった。


 いつもと変わらない河内家の光景だった。


 しかし、この家で家族と毎日顔を合わせる生活は、あとわずかで終わる。


 そのことを、正則も少しずつ実感し始めていた。

 第二章 亜由美が持っていく一枚の写真

 同じ頃、加藤家。


 亜由美も、自室で荷物を整理していた。


 新しい制服。


 学習用具。


 野球のグラブとスパイク。


 普段着。


 タオル。


 歯ブラシなどの衛生用品。


 茶わんやコップなどの食器類。


 必要なものを一覧表にして、一つずつ確認していく。


 大きな荷物の一部は、あらかじめ博多南中学校の寄宿舎へ送っていた。


 亜由美は引き出しを開け、一枚の写真を取り出した。


 大阪タイタンズの集合写真だった。


 河内正則。


 池永智雄。


 宮本さくら。


 西村奈緒。


 藤原航。


 有村恒一郎。


 梶原悠真。


 藤本颯太。


 星野慎一。


 そして、これまで一緒に戦ってきた仲間たち。


 全国大会準優勝を達成した直後の写真だった。


 亜由美は、しばらく見つめていた。


「……みんな、元気にしとるかな」


 母親が部屋へ入ってきた。


「亜由美、準備は進んどる?」


「うん。もうほとんど終わったで」


 そして、写真を見せた。


「お母さん、これも持っていこうと思うねん」


 母親は微笑んだ。


「大阪タイタンズのみんなやね」


「うん。大切な仲間やから」


 亜由美は、写真を傷まないようにケースへ入れた。


 そして、机の上に置いた小さな鞄へしまった。


「寂しくなったら、これ見て元気出そうと思うねん」


 母親は静かにうなずいた。


「そうやね」


 そして、少し真剣な表情になった。


「亜由美。お父さんもお母さんも大阪におるから、博多では自分で考えて行動することが増えるよ」


「うん」


「でも、困ったことまで一人で抱え込んだらあかんよ。寮の先生にも相談できるし、うちらにも電話できるんやから」


 亜由美は力強くうなずいた。


「分かっとる!」


 そして笑った。


「正則とも一緒やけど、何でも正則に頼るわけにはいかんしな」


 母親が吹き出した。


「むしろ、正則君のほうが亜由美を頼りそうやけどね」


「それはありそうやな!」


 二人は大笑いした。


 第三章 新大阪駅、家族との別れ

 四月初旬。


 新大阪駅。


 新幹線のホームには、河内家と加藤家の家族が集まっていた。


 正則と亜由美は、必要な手荷物を持ち、二人で博多へ向かう。


 両家の両親は大阪に残る。


 博多駅では、事前に連絡を取り合っていた博多南中学校の寄宿舎職員が出迎えることになっていた。


 河内修司は、息子の顔を見つめた。


「正則。切符とスマートフォンは持っとるな?」


「うん!」


「財布は?」


「大丈夫!」


 母の恵子が声をかけた。


「博多に着いたら、まず寮の先生と合流するんよ」


「分かっとる!」


「勝手にどこかへ行ったらあかんからね」


「大丈夫やって!」


 姉の一香がニヤリと笑った。


「グラブは?」


 正則は鞄を軽く持ち上げた。


「ここに入っとるわ!」


「おっ、今回は忘れへんかったか!」


「姉ちゃん、最後までそれ言うんか!」


 一同、大爆笑。


 しかし、発車案内が流れると、笑い声が少しずつ静かになった。


 正則は、父と母を見た。


「お父さん、お母さん」


 修司が答えた。


「何や?」


「今まで、ほんまにありがとう」


 恵子の目が潤んだ。


「正則……」


「俺、博多で頑張ってくるから」


 修司は、ゆっくりとうなずいた。


「行ってこい。ただし、野球だけやなくて、人としても成長して帰ってこい」


「うん!」


 恵子は息子を抱き締めた。


「体に気をつけるんよ。ちゃんと食べて、ちゃんと寝てね」


「分かっとるよ、お母さん」


 一香も、正則の肩をたたいた。


「正則。寂しくなったら、いつでも連絡してきいや」


「姉ちゃんもな!」


「うちが寂しがるわけないやろ!」


「絶対寂しがるくせに!」


 二人は最後まで笑い合っていた。


 一方、亜由美も両親へ頭を下げた。


「お父さん、お母さん。行ってきます」


 父親がうなずいた。


「亜由美、自分で決めた道や。しっかり頑張りなさい」


「うん!」


 母親も微笑んだ。


「困ったことがあったら相談するんよ。それと、ご飯はちゃんと食べてね」


「分かった!」


 そして、亜由美は母親を抱き締めた。


「……ありがとう」


「行ってらっしゃい」


 やがて、博多行きの新幹線がホームへ入ってきた。


 正則と亜由美は乗車口へ向かった。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい!」


 扉が閉まる。


 ゆっくりと列車が動き始めた。


 窓の向こうでは、修司、恵子、一香、そして加藤家の両親が手を振っている。


 正則と亜由美も、大きく手を振り返した。


 やがて家族の姿が見えなくなった。


 正則は座席に深く腰掛けた。


「……いよいよやな」


 亜由美がうなずいた。


「うん」


 二人はしばらく黙っていた。


 そして、亜由美が静かに言った。


「正則、ちょっと寂しいな」


 正則は窓の外を見つめた。


「……せやな」


 しかし、すぐに顔を上げた。


「でも、俺らが決めた道や」


 亜由美も笑った。


「そうやね!」


 新幹線は大阪を離れ、西へ向かって走り続けた。

 第四章 「博多に着いたで!」

 岡山。


 広島。


 新山口。


 小倉。


 車窓の風景が次々と移り変わる。


 正則と亜由美は、時刻や乗り換え案内を確認しながら旅を続けた。


 やがて、車内放送が響いた。


 まもなく博多。


 正則は窓の外を見つめた。


「……もうすぐやな」


 亜由美がうなずいた。


「うん!」


 博多駅に到着すると、二人は荷物を持ってホームへ降りた。


「うわぁ、広いな!」


 正則が駅構内を見渡した。


 亜由美も少し驚いていた。


「大阪とはまた違う雰囲気やね」


 二人は事前に決められた待ち合わせ場所へ向かった。


 そこでは、寄宿舎職員の武内沙織が待っていた。


「河内正則さん、加藤亜由美さんですね?」


 正則と亜由美は姿勢を正した。


「はい! 河内正則です!」


「加藤亜由美です! よろしくお願いします!」


 武内は笑顔で答えた。


「ようこそ博多へ。長旅、お疲れさまでした」


「ありがとうございます!」


 武内は、二人の荷物と連絡事項を確認した。


「では、これから寄宿舎へ向かいましょう。入寮の受付と生活説明を済ませて、今日はまずお部屋の整理をしてくださいね」


「はい!」


 寮へ向かう前に、正則は家族へ到着の連絡を送った。

 正則:お父さん、お母さん、姉ちゃん! 無事に博多へ着いたで! 寮の先生とも合流したから安心してな!


 亜由美も両親へ連絡した。

 亜由美:無事に博多駅へ着いたよ! これから寮へ向かいます。心配せんといてね!


 続いて、柳川悠翔へもメッセージを送った。

 正則:悠翔! 博多に着いたで! いよいよこっちでの生活が始まるわ!


 亜由美:悠翔君、無事に着いたよ! これから寮に荷物を片づけるね!


 ほどなくして返信が届いた。

 悠翔:正則君、亜由美さん、博多へようこそ! 長旅お疲れさま! 博多で分からんことがあったら、遠慮なく聞いてね!


 さらに、もう一通。

 悠翔:今日は早良区のチームと練習試合なんよ。時間があったら見に来てね。でも、まずは寮の準備を終わらせんしゃい!


 正則が吹き出した。


「何や、あいつ! もう俺らの生活まで心配しとるやん!」


 亜由美も笑った。


「キャプテンになって、ますます世話焼きになっとるんちゃう?」


 二人は悠翔へお礼の返信を送り、寄宿舎へ向かった。


 第五章 初めての寄宿舎

 博多南中学校の寄宿舎は、校舎から歩いて行ける場所に建っていた。


 明るい外壁。


 広い玄関。


 食堂。


 学習室。


 男女別の浴室。


 そして、男女それぞれの居住区域。


 武内が二人を案内した。


「この寄宿舎では、各学年に男女合わせて十室を用意しています。原則二人一室で、今回の新入寮生は二十人です」


 正則がうなずいた。


「はい!」


「掃除と洗濯は、基本的に自分で行ってもらいます。共用部分の清掃は当番制です」


 亜由美も答えた。


「分かりました!」


「食事は常駐の管理栄養士が献立を考えています。スポーツをしている人も、音楽や科学などの活動をしている人も、しっかり食べてくださいね」


 武内は少し笑った。


「ただし、野球がうまいから掃除を免除する、ということはありませんよ」


 正則が笑った。


「分かっとります!」


 そして、武内は二人の居室を案内した。


 男子居住区域。


 正則の部屋は、二人部屋だった。


 扉の前には、二人の名前が表示されている。


 河内正則。


 寺島湊。


 正則が部屋へ入ると、先に到着していた男の子が荷物を整理していた。


「あっ、こんにちは!」


 正則は笑顔で頭を下げた。


「河内正則です。大阪から来ました。よろしくお願いします!」


 男の子も頭を下げた。


「寺島湊です。長野から来ました。よろしく!」


 正則が尋ねた。


「湊君は何の部活をするん?」


「吹奏楽だよ。クラリネットを吹いてるんだ」


 正則は目を輝かせた。


「へぇ! 俺は野球やねん」


 湊が笑った。


「知ってるよ。大阪タイタンズの河内君でしょ?」


 正則は少し照れた。


「何や、知っとったんか」


「でも、僕は野球のこと、あまり詳しくないんだ」


 正則は笑った。


「俺もクラリネットのことは全然分からへんで!」


 二人は笑い合った。


「じゃあ、お互いに教え合おうよ」


「ええな!」


 一方、女子居住区域。


 亜由美の同室者は、広島県から来た桐原澪だった。


「加藤亜由美です。よろしくお願いします!」


「桐原澪です。よろしくね!」


 澪は科学系の活動を希望しているという。


「特に物理が好きなんだ」


 亜由美は驚いた。


「物理!?」


「うん。ものがどう動くかを考えるのが好きなの」


 亜由美は、ふと思いついた。


「それやったら、野球のボールが曲がる理由とかも分かるん?」


 澪の目が輝いた。


「もちろん! 回転と空気の流れが関係しているんだよ」


 亜由美は笑った。


「正則が聞いたら、めちゃくちゃ喜びそうや!」


「正則君?」


「大阪から一緒に来た幼なじみ。ピッチャーなんよ」


 澪がうなずいた。


「じゃあ、今度一緒にボールの回転を調べてみたいな」


「ぜひ!」


 新しい友人との出会い。


 それが、博多での生活の最初の一歩になった。

 第六章 まずは今日使うものから荷ほどき

 居室の案内が終わると、正則と亜由美は荷物の整理を始めた。


 すでに到着していた段ボール箱。


 大阪から持ってきた旅行鞄。


 野球道具。


 学習用品。


 食器類。


 衣類。


 衛生用品。


 正則は、箱を見つめて腕を組んだ。


「……どれから開けたらええんやろ」


 しかし、すぐに思い直した。


「まず、今日使うものからやな」


 最初に取り出したのは、歯ブラシ、タオル、着替えなどの衛生用品だった。


 洗面用具は、決められた棚へ。


 衣類は種類ごとに分けて引き出しへ。


 茶わん、コップなどの食器類も、指定された収納場所へ片づけた。


 次に、勉強道具。


 教科書やノートは机へ並べる。


 筆記用具は引き出しの中。


 最後に、大切なグラブを取り出した。


 正則は、少しだけ笑った。


「……今度は忘れへんかったで」


 湊が首をかしげた。


「何のこと?」


 正則は、大阪でグラブを忘れかけた話をした。


 湊は腹を抱えて笑った。


「野球しに来たのに、グラブを忘れるところだったの!?」


「せやねん。姉ちゃんに見つけられたわ」


「面白いお姉さんだね!」


 正則が苦笑した。


「いや、あいつは油断したらすぐいじってくるからな!」


 二人は笑いながら、残りの荷物を整理した。


 一方、亜由美も澪と相談しながら収納場所を決めていた。


「澪ちゃん、この棚、どっちが使いやすい?」


「私は上の段がいいかな」


「ほな、うちは下の段にするわ」


 二人は、それぞれが使いやすいように部屋を整えていく。


 亜由美は、家族写真と大阪タイタンズの集合写真を机の上に置いた。


 澪が尋ねた。


「これは野球チーム?」


「うん。大阪タイタンズ」


「みんな笑ってるね」


 亜由美は静かに微笑んだ。


「大切な仲間なんよ」


 澪はうなずいた。


「いい写真だね」


 亜由美は笑った。


「ありがとう!」


 荷ほどきは、すぐに使うものを優先して進めた。


 残りは、数日かけて少しずつ整理することにした。

 第七章 初めての寮の食事

 昼食の時間。


 正則と亜由美は、それぞれの同室者と一緒に食堂へ向かった。


 今日の献立は、ご飯、鶏肉の照り焼き、温野菜、みそ汁、果物だった。


 正則は食事を受け取ると、目を輝かせた。


「うわぁ、うまそうやな!」


 湊も笑った。


「本当だね」


 亜由美が近くの席へ腰掛けた。


「正則、野菜もちゃんと食べるんやで!」


 正則が即座に答えた。


「食べるわ!」


 澪が尋ねた。


「二人って、昔からこんな感じなの?」


 亜由美が笑った。


「幼稚園の頃からずっと一緒やねん」


 正則も笑った。


「亜由美、俺の世話焼くのが好きなんや」


「誰が好きで世話焼いとるねん!」


 湊と澪が大笑いした。


 昼食を終えると、正則は時計を確認した。


「亜由美、今日の午後の予定、もう一回確認しよう」


「うん。入寮の説明は終わったし、外出届を出して許可がもらえたら、練習場へ行けそうやね」


 正則がうなずいた。


「悠翔の試合、見に行きたいな」


 湊が興味深そうに尋ねた。


「野球の試合?」


「そうや。博多リトルスターズの練習試合やねん」


 澪も言った。


「私も見てみたいな。野球のボールがどんなふうに飛ぶのか、興味があるんだ」


 亜由美は笑った。


「ほな、一緒に行く?」


 湊と澪は、顔を見合わせてうなずいた。


「ぜひ!」


 こうして四人は、寮職員へ行き先と帰寮予定時刻を伝え、許可を受けて野球練習場へ向かった。


 第八章 三試合同時開催が可能な巨大施設

 午後。


 四人が訪れたのは、爆笑発電所スポーツ事業部が整備した野球施設だった。


 正門をくぐった瞬間、正則は足を止めた。


「……何や、これ」


 亜由美も目を丸くした。


「……すごっ!」


 目の前に広がっていたのは、想像を超える規模の野球施設だった。


 三面の本格的なグラウンド。


 それぞれに独立したバックネット、ベンチ、スコアボード。


 さらに、屋内打撃練習場。


 投球練習用ブルペン。


 雨天でも利用できるトレーニング設備。


 映像によるフォーム分析室。


 休憩スペース。


 三つのグラウンドでは、同時に三試合を開催することができた。


 亜由美が思わずつぶやいた。


「……これ、ほんまに小学生や中学生が使う施設なん?」


 正則もうなずいた。


「プロ野球の練習場みたいやん!」


 湊が感心した。


「音楽の練習施設も充実してるって聞いたけど、スポーツもすごいんだね」


 澪は、球速表示装置を興味深そうに見ていた。


「ボールの動きを分析する設備まであるんだ」


 正則は、広大なグラウンドを見渡した。


「さすが、日本一のエンタメ企業とも言われる爆笑発電所が出資しとるだけあるな!」


 亜由美もうなずいた。


「ほんまやね。でも、施設が立派やからって、勝てるわけやないもんな」


 正則は少し笑った。


「せやな。ここで、どれだけ練習するかや」


 そのとき、後ろから声が聞こえた。


「河内君、加藤さん!」


 振り返ると、博多フューチャーズの城戸直哉監督と平松真帆コーチが歩いてきた。


 正則と亜由美は、すぐに姿勢を正した。


「こんにちは! 河内正則です!」


「加藤亜由美です! 春からよろしくお願いします!」


 二人は深く頭を下げた。


 城戸監督は笑顔で答えた。


「こちらこそ。博多へようこそ」


 平松コーチも微笑んだ。


「入寮は無事に終わりましたか?」


 亜由美がうなずいた。


「はい! 必要な荷物は整理できました」


 城戸監督はうなずいた。


「それはよかった。ただし、明日からも自分で続けることが大切ですよ」


 正則が答えた。


「はい!」


 そして、城戸監督は第一グラウンドを指さした。


「今日は博多リトルスターズが練習試合をしています。見学していきますか?」


 正則と亜由美の顔が明るくなった。


「はい!」

 第九章 博多リトルスターズ、新チームの先発発表

 第一グラウンドでは、博多リトルスターズの選手たちが準備運動を終えたところだった。


 対戦相手は、福岡市早良区を拠点とする少年野球チーム、早良ブルーウィンズ。


 守備力と積極的な走塁を武器にするチームだ。


 博多リトルスターズは、全国大会で優勝したものの、当時の六年生たちはすでに卒団している。


 坂井雄二。


 牧田和美。


 岸田誠一。


 立花朋輝。


 森下悠一。


 彼らが担っていた役割を、新しい選手たちが引き継いでいた。


 篠田正孝監督は、試合前に両チームの先発メンバーを確認した。

 春季練習試合・先発メンバー

 打順博多リトルスターズ早良ブルーウィンズ

 1川島蒼空(中)水野航太(遊)

 2松岡凛太(遊)高瀬悠真(二)

 3山内翔吾(一)真鍋湊斗(中)

 4柳川悠翔(二・主将)城島蓮司(一)

 5村瀬杏奈(三)松永颯介(捕)

 6西野美優(左)大庭結衣(三)

 7岡部結菜(投)鶴岡蒼太(右)

 8有田蓮(捕)高田梨央(左)

 9高原紗季(右)西尾大河(投)


 先攻・早良ブルーウィンズ、後攻・博多リトルスターズ。両チームとも男女の選手が出場。

 また、博多リトルスターズのベンチには、黒木海翔、坂本大地、神谷颯、大原颯真、藤堂琉生、橘颯太、山下結斗、中島ひなた、松本航らも控えていた。


 試合中には投手交代や守備交代も行う予定だった。


 正則は、博多のメンバーを見渡した。


「あっ、村瀬杏奈ちゃんと岡部結菜ちゃんもおる!」


 亜由美がうなずいた。


「去年の全国大会で活躍した選手たちやね」


 そこへ村瀬杏奈が気づいた。


「あっ! 正則さん、亜由美さん!」


 二人は姿勢を正した。


「こんにちは!」


「今日は見学させてもらいます。よろしくお願いします!」


 岡部結菜も笑顔で近づいてきた。


「博多へようこそ! 入寮おめでとうございます!」


「ありがとう!」


 篠田監督も歩いてきた。


「河内君、加藤さん。久しぶりだね」


 正則と亜由美は深く頭を下げた。


「全国大会では、ありがとうございました!」


 篠田監督は笑った。


「こちらこそ。あの決勝は、本当に素晴らしい試合だった」


 そして、グラウンドへ視線を向けた。


「今日は新チームの練習試合だ。去年とは違うところもあるから、よく見ていってくれ」


「はい!」


 そのとき、グラウンド中央から声が響いた。


「全員、集合!」


 正則が振り返った。


 声の主は、柳川悠翔だった。

 第十章 悠翔の目が変わっていた

 悠翔はユニフォーム姿でグラウンド中央に立っていた。


 左腕にはキャプテンマーク。


 そして、その表情は全国大会の優勝インタビューで見せた笑顔とはまったく違っていた。


 鋭い目つき。


 引き締まった口元。


 チームメイトの動きを確認する視線。


「みんな、今日は早良ブルーウィンズとの練習試合たい!」


 選手たちが集まる。


「はい!」


「相手も強かチームやけん、最初から集中していこう!」


 悠翔は続けた。


「守備では一球ごとに次のプレーを考える。打撃では自分の役割を忘れんこと。全員で声をかけ合っていこう!」


 村瀬杏奈がうなずいた。


「そうたい! 集中していこう!」


 岡部結菜も続けた。


「最初から全力でいくばい!」


 選手たちが声をそろえた。


「おおっ!」


 そのとき、悠翔が観客席へ視線を向けた。


 正則と亜由美の姿に気づいた。


 一瞬だけ、表情が明るくなる。


 そして軽く手を上げた。


 しかし、すぐにチームメイトへ向き直った。


 正則は、その姿をじっと見つめていた。


「……亜由美」


「何や?」


「悠翔、俺らに気づいたよな?」


「うん」


「でも、あいつ……」


 亜由美もうなずいた。


「……完全に勝負師の目つきやな」


 正則は少し笑った。


「せやろ?」


「全国大会のインタビューで長崎ちゃんぽんの話しとった子とは思えへんわ」


 正則は吹き出しかけた。


 しかし、すぐにグラウンドへ目を戻した。


「……すごいな」


 亜由美が尋ねた。


「何が?」


「俺らが来とるのに、ちゃんと試合に集中しとる。挨拶はあとでゆっくりすればええって分かっとるんやろな」


 亜由美は静かにうなずいた。


「そうやね。キャプテンになって、ますます責任感が強くなったんやろうね」


 正則は笑った。


「……こら、俺もうかうかしとられへんな」


 亜由美も笑顔になった。


「うちもや」


 第十一章 一回表、四番セカンドの守備

 試合開始。


 一回表。


 早良ブルーウィンズの先頭打者は一番、ショートの水野航太。


 博多リトルスターズの先発は岡部結菜だった。


 昨年の全国大会決勝では、高回転ストレートを武器に大阪タイタンズ打線を三回無失点に抑えている。


 捕手の有田蓮がミットを構えた。


 初球。


 外角への直球。


 ストライク。


 二球目。


 水野が振り抜いた。


 カキーン!


 打球は一、二塁間へ。


「抜けるか!」


 しかし、二塁手の柳川悠翔が鋭く反応した。


 一歩目が速い。


 横へ滑り込むように捕球すると、すぐに立ち上がって一塁へ送球した。


「アウト!」


 正則が思わず声を上げた。


「うわっ! 今のすごいな!」


 亜由美も目を輝かせた。


「最初の一歩、めちゃくちゃ速かった!」


 続く二番、高瀬悠真は四球で出塁した。


 一死一塁。


 三番、真鍋湊斗。


 結菜の直球を打ち返した。


 打球は二塁方向への強いゴロ。


 悠翔が捕球する。


 一塁走者の高瀬が二塁へ向かっていた。


 悠翔はすぐに遊撃手の松岡凛太へ送球した。


 二塁アウト。


 松岡から一塁の山内翔吾へ転送。


「アウト!」


 ダブルプレー!


 三アウト!


 岡部結菜はマウンドで拳を握った。


「ナイスプレー!」


 悠翔と松岡はグラブを合わせた。


「凛太、よう投げたね!」


「悠翔こそ、ナイス!」


 正則は感心したように息を吐いた。


「……ほんま、よう周りが見えとるな」


 亜由美もうなずいた。


「しかも、投げるまでが速い。あれは勉強になるわ」


 二塁手として全国大会を戦った亜由美にとって、悠翔の守備は非常に興味深かった。

 第十二章 一回裏、四番悠翔の先制打

 一回裏。


 博多リトルスターズの攻撃。


 先頭、一番の川島蒼空が四球で出塁した。


 二番の松岡凛太は送りバントを決め、一死二塁。


 三番の山内翔吾は二塁ゴロに倒れたが、その間に川島が三塁へ進んだ。


 二死三塁。


 そして四番、柳川悠翔。


 早良ブルーウィンズの投手は西尾大河。


 西尾は捕手の松永颯介とサインを交換した。


 初球。


 外角への直球。


 ストライク。


 二球目。


 内角高め。


 ボール。


 三球目。


 外角低めへの直球。


 悠翔はファウルで粘った。


 1ボール2ストライク。


 四球目。


 外角へ外れる。


 ボール。


 2ボール2ストライク。


 五球目。


 西尾が直球を投げ込んだ。


 悠翔が踏み込んだ。


 カキーン!


 鋭い打球は右中間へ。


 センターの真鍋湊斗が走る。


 ライトの鶴岡蒼太も追う。


 しかし、打球は二人の間へ落ちた。


「ヒット!」


 三塁走者の川島蒼空がホームイン。


 博多が一点先制した。


 悠翔は一塁上で小さく拳を握った。


「よし!」


 続く五番の村瀬杏奈は三塁ゴロに倒れ、攻撃終了。


 しかし、博多は初回に一点を奪った。


 正則は、悠翔の打席をじっと見つめていた。


「……相変わらずやな」


 亜由美もうなずいた。


「無理にホームラン狙わんと、ちゃんと走者を返しとるね」


 正則が笑った。


「四番として、何をしたらええか分かっとるんやろな」


 第十三章 観客席に現れた三人の女性

 二回の攻防が始まった頃。


 正則と亜由美がグラウンドを見守っていると、後ろから明るい声が聞こえてきた。


「こんにちは!」


 正則が振り返った。


 そこには三人の女性が立っていた。


 一人は、明るい笑顔の母親。


 その隣には、ギターケースを持った二人の若い女性。


 正則は、一瞬動きを止めた。


 亜由美も目を丸くした。


 目の前にいるのは、テレビや音楽番組で何度も見た人物だった。


 ファイブピーチ★のメンバー。


 M&Yとしても世界的に活躍するミュージシャンであり、エンターテイナー。


 柳川優子。


 そして、その娘たちである柳川結音と柳川灯乃。


 優子は二人の顔を見て微笑んだ。


「こんにちは。正則君と亜由美さんよね?」


 正則は慌てて立ち上がった。


「は、はい!」


 亜由美も頭を下げた。


「こ、こんにちは!」


 優子は少し驚いたように笑った。


「あら、そんなに緊張せんでよかよ!」


 正則は、言葉に詰まっていた。


「あの……」


「どうしたと?」


「柳川優子さん、ですよね?」


 優子は笑顔で答えた。


「そうたい!」


 亜由美も続けた。


「ファイブピーチ★の……あの優子さんですよね!?」


 優子は吹き出した。


「そうやけど、あの優子って何ね!」


 結音が笑った。


「お母さん、有名人やもんね」


 灯乃がすかさず続けた。


「でも、家では普通にうるさかお母さんたい!」


 優子が振り返った。


「灯乃! 余計なこと言わんでよか!」


 三人のやり取りに、正則と亜由美も思わず笑ってしまった。


 優子は改めて二人へ向き直った。


「悠翔から聞いとったよ。今日、博多へ着いたんやろ?」


 正則がうなずいた。


「はい!」


「長旅、お疲れさま!」


 亜由美も答えた。


「ありがとうございます!」


 優子は笑顔で続けた。


「入寮の準備は終わったと?」


 正則が答えた。


「今日使うものは、だいたい片づけました」


 亜由美も続けた。


「残りは少しずつ整理するつもりです」


 優子は大きくうなずいた。


「それがよかね。最初から全部完璧にしようとしたら疲れてしまうけん」


 そして、二人の顔を見つめた。


「改めて、博多へようこそ!」


 正則と亜由美は、そろって深く頭を下げた。


「ありがとうございます!」

 第十四章 ピーチブロッサム★、野球場で曲作り

 しばらくして、結音が正則へ話しかけた。


「正則君、去年の全国大会、テレビで見とったよ」


 正則は驚いた。


「えっ!? 見てくれとったんですか!?」


 結音はうなずいた。


「もちろん! あの決勝、めちゃくちゃすごかったもん」


 灯乃も笑った。


「亜由美さんの二塁守備も、ほんとにすごかったよ!」


 亜由美は少し照れた。


「ありがとうございます!」


 優子はグラウンドへ視線を向けた。


「でも、今日の悠翔も、なかなか気合い入っとるね」


 結音がうなずいた。


「キャプテンになったけん、責任感が強くなったんやろうね」


 灯乃も笑った。


「家では相変わらず、料理理論ばっかり言いよるけどね!」


 正則が思わず吹き出した。


「……あの長崎ちゃんぽんですか?」


 優子が腹を抱えた。


「そうたい! あのちゃんぽん!」


 亜由美も笑った。


「大阪タイタンズのみんなも、あのインタビュー見て大笑いしました!」


 優子は目を丸くした。


「ほんと!?」


「はい! 正則なんか、十六球かけて煮込んだって聞いて、めちゃくちゃ笑っとりました!」


 正則が慌てた。


「亜由美! そこまで言わんでええやろ!」


 結音と灯乃が大笑いした。


 しかし、しばらくすると結音は少し真剣な表情になった。


「実はね、私たち、今日は野球の試合を見て、次の曲の参考にしたいと思って来たんよ」


 正則が驚いた。


「……曲の参考ですか?」


 灯乃がうなずいた。


「そう。ピーチブロッサム★の新曲を考えよると」


 亜由美が興味深そうに尋ねた。


「野球をテーマにした曲なんですか?」


 結音は笑った。


「まだ決めとらんけど、スポーツの緊張感とか、仲間と一緒に戦う気持ちを曲にしたいと思っとるんよ」


 灯乃も続けた。


「投手がボールを投げる前の静かな時間とか、バットに当たった瞬間の音とかね」


 正則は感心した。


「へぇ……そんなところから曲を作るんや」


 結音がうなずいた。


「そうたい。音楽のヒントって、いろんなところにあるけん」


 優子が尋ねた。


「正則君、野球でリズムを意識することある?」


 正則は少し考えた。


「あります。ピッチャーって、同じテンポで投げ続けると、打者にタイミングを合わせられることがあるんです」


 優子の目が輝いた。


「なるほどね!」


「せやから、間合いを変えたり、球速を変えたりします」


 灯乃が笑った。


「それ、音楽のリズムを変えるのと似とるね!」


 亜由美も続けた。


「打者もそうです。速い球を待っとるときに、急に遅い球が来たら、タイミングが合わんようになるんです」


 結音がうなずいた。


「面白かね!」


 優子は悪戯っぽく笑った。


「それって、あのおちょくりスローボールのことやろ?」


 正則が吹き出した。


「……知っとるんですか!?」


「もちろんたい!」


 灯乃が笑った。


「お母さんのドラムも、緩急が得意やもんね」


 結音がすかさず突っ込んだ。


「でも、勝手にテンポ変えたら、バンドのみんなが困るっちゃない?」


 優子が大笑いした。


「そりゃそうたい!」


 正則と亜由美も、声を上げて笑った。


 第十五章 三回、早良ブルーウィンズの反撃

 その頃、グラウンドでは三回表の攻撃が始まっていた。


 早良ブルーウィンズの八番、高田梨央がセンター前ヒットで出塁した。


 続く九番、西尾大河が送りバントを決め、一死二塁。


 一番の水野航太は遊撃ゴロに倒れたが、その間に高田が三塁へ進んだ。


 二死三塁。


 二番の高瀬悠真は四球を選んだ。


 二死一、三塁。


 そして三番、真鍋湊斗。


 岡部結菜が投げ込んだ直球を、真鍋が鋭く打ち返した。


 カキーン!


 打球はセンター前へ抜けた。


 三塁走者の高田梨央がホームイン。


 1対1。


 同点!


 早良ブルーウィンズのベンチが沸いた。


「真鍋! ナイスバッティング!」


「よう打った!」


 続く四番、城島蓮司はセンターフライに倒れ、三アウト。


 しかし、早良ブルーウィンズは同点に追いついた。


 悠翔は二塁から結菜へ声をかけた。


「結菜! 切り替えていこう!」


 結菜がうなずいた。


「うん!」


 有田蓮もマウンドへ歩み寄った。


「次の回も落ち着いていこう!」


「分かった!」


 正則は、その様子を見つめていた。


「……点取られても、全然慌てへんな」


 亜由美がうなずいた。


「みんな、ちゃんと声をかけ合っとるね」


 正則は静かに笑った。


「やっぱり、ええチームやな」


 三回裏、博多は松岡凛太のヒットと悠翔の四球で走者を出したものの、村瀬杏奈の三塁ゴロで攻撃を終えた。


 1対1。


 試合は中盤へ入っていった。

 第十六章 四回、村瀬杏奈と有田蓮の連係

 四回表。


 博多リトルスターズは投手交代を行った。


 岡部結菜に代わって、黒木海翔がマウンドへ上がった。


 黒木は全国大会でも投手陣の一角を担ってきた選手だった。


 しかし、早良ブルーウィンズも簡単には引き下がらなかった。


 五番、松永颯介がライト前ヒット。


 六番、大庭結衣が送りバントを決め、一死二塁。


 七番、鶴岡蒼太がセンター前へタイムリーヒットを放った。


 2対1。


 早良ブルーウィンズが勝ち越した。


 その後、八番の高田梨央は遊撃ゴロ。


 九番の西尾大河も二塁ゴロに倒れ、追加点は入らなかった。


 そして四回裏。


 博多の先頭は六番、西野美優。


 西野は西尾大河の直球を左中間へ打ち返した。


 ツーベースヒット!


 無死二塁。


 続く七番、黒木海翔が送りバントを決め、一死三塁。


 八番、有田蓮。


 有田は初球を見送った。


 ストライク。


 二球目。


 外角低めへの直球。


 有田が踏み込んだ。


 カキーン!


 打球は一、二塁間へ抜けた。


「ライト前ヒット!」


 三塁走者の西野美優がホームイン。


 2対2。


 同点!


 博多のベンチが沸いた。


「有田! ナイス!」


「美優もよう走った!」


 九番の高原紗季は遊撃ゴロで一塁走者の有田が二塁封殺。


 二死一塁。


 続く川島蒼空はセンターフライに倒れ、攻撃終了となった。


 しかし、博多は再び追いついた。


 亜由美は感心したように言った。


「西野さんの長打、黒木君のバント、有田君のタイムリー。ちゃんと役割分担できとるね」


 正則もうなずいた。


「ほんまや。みんなが自分の仕事をしとる」


 そして、グラウンドの悠翔を見た。


 悠翔は同点に追いついた仲間たちを、大きな拍手で迎えていた。

 第十七章 五回、悠翔の勝ち越し打

 五回表。


 早良ブルーウィンズは、一番の水野航太、二番の高瀬悠真、三番の真鍋湊斗から始まる好打順だった。


 しかし、黒木海翔は三者凡退に抑えた。


 五回裏。


 早良ブルーウィンズは西尾大河から竹森蒼介へ投手交代。


 博多の先頭、二番の松岡凛太がレフト前ヒットで出塁した。


 三番、山内翔吾が送りバントを決める。


 一死二塁。


 そして四番、柳川悠翔。


 竹森は外角低めを中心に攻めた。


 初球。


 ストライク。


 二球目。


 ボール。


 三球目。


 悠翔はファウルで粘った。


 1ボール2ストライク。


 四球目。


 外角へ外れる。


 2ボール2ストライク。


 五球目。


 竹森が投げ込んだ直球は、内角寄りに入った。


 悠翔が振り抜いた。


 カキィィン!


 鋭い打球がライト線方向へ飛んだ。


 鶴岡蒼太が追う。


 しかし、打球はその前へ落ち、フェンス方向へ転がった。


「ライト線を破った!」


 二塁走者の松岡凛太が三塁を回る。


 ホームイン!


 3対2。


 博多リトルスターズが勝ち越した。


 悠翔は二塁へ滑り込んだ。


 タイムリーツーベースヒット!


 正則は思わず立ち上がった。


「うわっ! すごい打球や!」


 亜由美も拍手した。


「ほんま、よう打つなぁ!」


 結音が笑った。


「悠翔、気合い入っとるね!」


 灯乃も続けた。


「四番の仕事、ちゃんとしとるやん!」


 優子は嬉しそうに微笑んでいた。


 しかし、その表情には、母親としての落ち着きもあった。


「でも、まだ試合は終わっとらんけんね」


 実際、その後、村瀬杏奈はライトフライ、西野美優は三振に倒れ、追加点は入らなかった。


 一点差。


 勝負はまだ分からなかった。


 第十八章 六回、再び同点

 六回表。


 博多リトルスターズは、黒木海翔に代わって坂本大地をマウンドへ送った。


 坂本は、あのおちょくりスローボールを持つ投手だった。


 早良ブルーウィンズの先頭、四番の城島蓮司が左中間へツーベースヒットを放つ。


 続く五番、松永颯介は一塁ゴロ。


 その間に城島が三塁へ進んだ。


 一死三塁。


 六番、大庭結衣。


 大庭は、坂本の外角直球を打ち返した。


 打球はセンター方向へのフライ。


 川島蒼空が捕球した。


 その瞬間、城島蓮司がスタートする。


 本塁へ送球。


 しかし、わずかに間に合わなかった。


「セーフ!」


 3対3。


 早良ブルーウィンズが再び同点に追いついた。


 大庭結衣の犠牲フライだった。


 続く七番、鶴岡蒼太は空振り三振。


 三アウト。


 試合は再び振り出しに戻った。


 悠翔は、坂本大地へ声をかけた。


「大地! まだ同点たい!」


 坂本がうなずいた。


「分かっとる!」


「次の回、みんなで点取ろう!」


「おう!」


 正則は、その姿を見つめていた。


「……キャプテンって、ほんまに大変やな」


 亜由美もうなずいた。


「自分のプレーだけじゃなくて、チーム全体を見んといかんもんな」


 正則は少し考えた。


「俺も中学で、ああいう声かけができるようになりたいわ」


 亜由美が笑った。


「できるようになると思うで」


「ほんまか?」


「うん。大阪タイタンズでも、後輩によう教えとったやん」


 正則は少し照れた。


「……そうかな」


 亜由美は笑った。


「そうやで」


 六回裏、博多は有田蓮のヒットで走者を出したものの、追加点を奪えなかった。


 3対3。


 練習試合は、最終回へ突入した。

 第十九章 七回、決着をつけた西野美優

 七回表。


 早良ブルーウィンズの攻撃。


 八番、高田梨央。


 九番、竹森蒼介。


 そして一番、水野航太。


 坂本大地は、三人を打ち取った。


 先頭の高田はライトフライ。


 竹森は空振り三振。


 水野は遊撃手・松岡凛太へのライナー。


 三者凡退。


 七回裏。


 博多リトルスターズの最後の攻撃。


 先頭は二番、松岡凛太。


 しかし、竹森蒼介の直球を打って二塁ゴロ。


 一死。


 続く三番、山内翔吾。


 山内は外角の直球をセンター前へ打ち返した。


 ヒット!


 一死一塁。


 そして四番、柳川悠翔。


 悠翔は粘って四球を選んだ。


 一死一、二塁。


 五番、村瀬杏奈。


 杏奈は内角の球を打ち返した。


 打球は一塁方向へのゴロ。


 一塁手の城島蓮司がベースを踏む。


 二死。


 しかし、走者はそれぞれ進塁した。


 二死二、三塁。


 打席には六番、西野美優。


 正則が身を乗り出した。


「……美優さんや」


 亜由美もうなずいた。


「ここで一本出たら、サヨナラやね」


 竹森が初球を投げ込んだ。


 外角への直球。


 ストライク。


 二球目。


 内角低め。


 ボール。


 三球目。


 西野が振り抜いた。


 カキーン!


 鋭い打球が左中間へ飛んだ。


 センターの真鍋湊斗が追う。


 レフトの高田梨央も走る。


 しかし、打球は二人の間へ落ちた。


 三塁走者の山内翔吾がホームイン!


 4対3!


 サヨナラ勝ち!


 博多リトルスターズのベンチから選手たちが飛び出した。


「美優ー!」


「よう打った!」


「ナイスバッティング!」


 西野美優は一塁上で両手を上げた。


 悠翔も三塁から駆け寄った。


「美優! 最高たい!」


 西野が笑った。


「悠翔がつないでくれたけんたい!」


 選手たちが笑顔で迎え合った。


 一方、早良ブルーウィンズの選手たちも、悔しさをこらえながら整列した。


 先発の西尾大河は、救援した竹森蒼介の肩をたたいた。


「竹森、よう投げたよ」


 竹森がうなずいた。


「ありがとう。でも、最後は打たれてしまった」


 捕手の松永颯介が声をかけた。


「次は俺たちが勝とう!」


「おう!」


 両チームは整列し、深く頭を下げた。


「ありがとうございました!」

 春季練習試合・最終結果

 チーム1234567計

 早良ブルーウィンズ00110103

 博多リトルスターズ1001101×4


 博多リトルスターズ 4-3 早良ブルーウィンズ

 博多の投手リレーは岡部結菜、黒木海翔、坂本大地。勝負を決めたのは七回裏、西野美優のサヨナラ適時打。

 第二十章 試合後、改めて交わした挨拶

 試合終了後。


 悠翔はチームメイトたちとミーティングを終えると、観客席へ駆け寄ってきた。


「正則君! 亜由美さん!」


 正則も立ち上がった。


「悠翔!」


 亜由美も笑顔になった。


「久しぶりやね!」


 悠翔は深く頭を下げた。


「改めて、博多へようこそ!」


 正則も頭を下げた。


「ありがとう!」


 悠翔は少し照れた。


「さっき、二人が来とるのは気づいとったんやけど、試合前やったけん、ちゃんと挨拶できんでごめんね」


 正則は首を横に振った。


「何言うとんねん! 試合に集中するんは当たり前やろ!」


 亜由美もうなずいた。


「むしろ、めちゃくちゃええ顔しとったで!」


 悠翔が首をかしげた。


「ええ顔?」


 正則が笑った。


「完全に勝負師の目つきやった!」


 悠翔は少し照れた。


「ほんと!?」


「ほんまや!」


 亜由美も続けた。


「四番としてもキャプテンとしても、よう頑張っとったね」


 悠翔は笑った。


「ありがとう! でも、まだまだたい!」


 そして、正則は改めて尋ねた。


「悠翔、今日のセカンド守備、すごかったな」


「ありがとう!」


「ショートやサードも守るんやろ?」


「うん。チームの状況に合わせて、どこでも守れるように練習しよると」


 亜由美が笑った。


「うちもセカンドやから、ええ刺激になったわ」


 悠翔は目を輝かせた。


「ほんと!?」


「うん。中学に入ってきたら、セカンドのポジションも簡単には譲らへんで!」


 悠翔は笑った。


「望むところたい!」


 正則が吹き出した。


「お前ら、まだ一年先の話やろ!」


 三人は声を上げて笑った。


 そこへ岡部結菜、村瀬杏奈、西野美優、川島蒼空、松岡凛太、山内翔吾、有田蓮、高原紗季が集まってきた。


 結菜が笑顔で言った。


「正則さん、亜由美さん! 今日は来てくれてありがとうございました!」


 村瀬杏奈も続けた。


「また見に来てくださいね!」


 西野美優が笑った。


「次はもっといい打撃を見せるけん!」


 川島蒼空も頭を下げた。


「僕たちも全国制覇を目指しとります!」


 松岡凛太が続けた。


「守備ももっと鍛えるけん、また見てください!」


 山内翔吾も笑った。


「中学生の野球も頑張ってください!」


 有田蓮がうなずいた。


「僕たちも負けんごと練習します!」


 高原紗季も笑顔で言った。


「また博多の野球場へ来てくださいね!」


 正則と亜由美は、全員へ深く頭を下げた。


「ありがとう!」


 そして、控えとして試合を支えた黒木海翔、坂本大地、神谷颯、大原颯真、藤堂琉生、橘颯太、山下結斗、中島ひなた、松本航たちとも挨拶を交わした。


 正則は、少し感慨深そうに言った。


「……ほんま、ええチームやな」


 亜由美もうなずいた。


「そうやね」


 悠翔は笑った。


「来年、僕が中学へ行くまで、正則君と亜由美さんもいっぱい練習しとってね!」


 正則が力強く答えた。


「当たり前や!」


 亜由美も笑った。


「悠翔君も、今よりもっと強くなっといてね!」


「もちろんたい!」


 第二十一章 優子からの歓迎の言葉

 そこへ、優子と結音、灯乃が歩いてきた。


 悠翔が母親へ尋ねた。


「お母さん、今日の試合どうやった?」


 優子は笑顔で答えた。


「よかったよ! でも、六回はちょっと守備の連係が乱れたね」


 悠翔がうなずいた。


「うん。あそこは、もっと声をかけ合わんといかんかった」


「そうやね。でも、最後までみんなで頑張っとったと思うよ」


 悠翔は笑った。


「ありがとう!」


 結音が口を開いた。


「悠翔、今日の試合のおかげで、曲のヒントが見つかったばい!」


 悠翔が目を丸くした。


「えっ!? ほんと!?」


 灯乃もうなずいた。


「うん! 野球の試合って、静かな時間と、一気に動く瞬間があるやろ?」


「うん」


「その緩急を、ピーチブロッサム★の新曲に生かしたいと思っとるんよ」


 悠翔は笑顔になった。


「面白そうたい!」


 すると優子が、正則と亜由美へ向き直った。


「正則君、亜由美さん」


「はい!」


「改めて、博多へようこそ」


 二人は姿勢を正した。


 優子は微笑んだ。


「大阪を離れて、知らん土地で暮らすのは大変なこともあると思う。でも、困ったことがあったら、遠慮なく相談してね」


 正則がうなずいた。


「ありがとうございます!」


 亜由美も続けた。


「本当にありがとうございます!」


 優子は静かに答えた。


「まずは寮の生活に慣れること。それから勉強も野球も、自分の目標に向かって頑張ってね」


 二人はそろって答えた。


「はい!」


 そして優子は、少し悪戯っぽく笑った。


「ところで、二人とも」


 正則が尋ねた。


「何ですか?」


「博多で食べたいもの、何かある?」


 亜由美は少し考えた。


「やっぱり、博多ラーメンですかね」


 正則も笑った。


「俺も、とんこつラーメン食べてみたいです!」


 優子は満面の笑みになった。


「よかねぇ!」


 しかし、次の瞬間。


 悠翔が横から口を挟んだ。


「でも、お母さん。僕は長崎ちゃんぽんもよかと思うと!」


 優子が吹き出した。


「またちゃんぽん!?」


 結音が大笑いした。


「悠翔! あんた、ほんとにちゃんぽん好きやね!」


 灯乃も笑った。


「悠翔、また野球の料理理論始めると!?」


 悠翔は笑った。


「いやいや、今日は普通に食べるちゃんぽんたい!」


 正則が思わず突っ込んだ。


「そこ、わざわざ断らんでもええやろ!」


 一同、大爆笑。


 優子は腹を抱えて笑っていた。


「正則君、ツッコミもなかなか鋭かね!」


 亜由美も笑った。


「大阪では、いつもこんな感じなんです!」


 優子は、正則と亜由美の顔を見つめた。


 そして、嬉しそうに言った。


「これから、博多がもっとにぎやかになりそうやね!」

 第二十二章 初めての寮の夜

 夕方。


 正則と亜由美は、寄宿舎へ戻ってきた。


 外出から戻ったことを寮職員へ報告し、それぞれの居住区域へ向かう。


 途中、亜由美が正則へ声をかけた。


「正則」


「何や?」


「今日、ほんまにいろんなことがあったね」


 正則は笑った。


「せやな。博多に着いて、荷物片づけて、グラウンド見に行って、悠翔の試合も見られたし」


「しかも、あの柳川優子さんから声をかけられるなんて、思わへんかったわ」


 正則も笑った。


「ほんまや。テレビで見とった人が、普通に『こんにちは』って話しかけてくるんやもんな」


 亜由美は少し考えた。


「でも、優子さん、すごく気さくな人やったね」


「せやな」


 そして、正則は少し真剣な表情になった。


「……亜由美」


「何?」


「今日、悠翔の試合見て、改めて思ったわ」


「何を?」


「俺、ほんまにここで野球やりたい」


 亜由美はうなずいた。


「うちもや」


 そして、少し笑った。


「でも、まずは寮の生活に慣れんとね」


 正則も笑った。


「せやな!」


 二人は、それぞれの居住区域へ向かった。


 男子の部屋では、寺島湊がクラリネットの楽譜を整理していた。


「正則君、お帰り!」


「ただいま!」


「今日の野球、面白かったね」


 正則はうなずいた。


「せやろ!」


 女子の部屋では、桐原澪がノートへ野球の動きを書き込んでいた。


「亜由美ちゃん、今日の二塁手の動き、すごく面白かったね」


 亜由美は笑った。


「悠翔君のこと?」


「うん。あんなに速く打球の方向を予測できるなんて、すごいよ」


 亜由美はうなずいた。


「うちも、あの守備は勉強になったわ」


 やがて夕食の時間になった。


 四人は食堂へ向かい、新しい仲間たちと食事をした。


 その後、入浴と翌日の準備を済ませる。


 そして、決められた自由時間。


 正則は大阪の自宅へ電話をかけた。

 第二十三章 修司と恵子へ、初日の報告

 電話に出たのは母の恵子だった。


『もしもし、正則?』


「お母さん! 俺やで!」


『分かっとるよ。どうしたん?』


 正則は笑った。


「今日の報告や!」


『あら、そうなん』


「荷物も片づけたし、野球場も見に行ったで!」


 恵子は嬉しそうに答えた。


『そう。よかったね』


 そして、父の修司も電話に加わった。


『正則、寮の生活はどうや?』


「まだ一日目やけど、ええ感じやで!」


『そうか』


「同じ部屋の湊って子とも仲良くなれたし、今日は悠翔の練習試合も見られた!」


 修司が尋ねた。


『ほう。悠翔君、どうやった?』


 正則は即答した。


「めちゃくちゃすごかった!」


『そうか』


「四番でセカンド守っとったんやけど、打撃も守備も、ほんまによう考えとるわ」


 修司は笑った。


『いい刺激になったみたいやな』


「うん!」


 すると、電話の向こうから一香の声が聞こえた。


『正則ー!』


「何や、姉ちゃん!」


『グラブ、ちゃんと持って行ったかー!?』


 正則は思わず頭を抱えた。


「まだ言うんかい!」


 電話の向こうで、家族が大笑いしていた。


 正則も笑った。


 そして、少しだけ声を落とした。


「……お父さん、お母さん」


『何や?』


「今日、無事に博多へ来られたのも、二人のおかげや。ほんまにありがとう」


 修司と恵子は、しばらく黙った。


 そして恵子が静かに答えた。


『……どういたしまして』


 修司も続けた。


『正則。自分で決めた道や。しっかり頑張りなさい』


「うん!」


 恵子は優しく言った。


『でも、無理しすぎたらあかんよ』


「分かっとる!」


 そして、正則は笑顔で電話を切った。


 大阪の家族は遠く離れた場所にいる。


 しかし、そのつながりが消えたわけではない。


 正則はスマートフォンを机へ置いた。


 そして、静かに笑った。


「……よし」


 明日から、いよいよ新しい生活が本格的に始まる。


 博多フューチャーズでの練習。


 博多南中学校での勉強。


 寄宿舎での共同生活。


 そして、まだ見ぬ新しい仲間たちとの出会い。


 河内正則と加藤亜由美の中学校生活は、こうして始まった。


 次回予告

 第47話「博多フューチャーズ始動、新入部員の実力」

 博多南中学校の寄宿舎へ入寮した河内正則と加藤亜由美。


 初めての共同生活が始まり、学校生活と部活動の両立という新たな課題に向き合うことになる。


 そして、いよいよ博多フューチャーズの新入部員として、初めての練習に参加する。


 城戸直哉監督と平松真帆コーチは、全国準優勝の実績を持つ二人に告げる。


「ここでは、過去の成績だけでレギュラーが決まることはありません」


 正則と亜由美は、力強くうなずく。


 しかし、そこには全国各地から集まった実力者や、すでに中学野球で経験を積んだ上級生たちが待っていた。


 正則は、初めて中学生の打者を相手に投球する。


 亜由美も、二塁守備で上級生たちとの連係に挑む。


 一方、博多リトルスターズでは、キャプテンの柳川悠翔が新チームを率いて練習を続けていた。


「正則君たちが中学で頑張りよる間、僕ももっと強くなるけん!」


 そして、ピーチブロッサム★の結音と灯乃は、野球場で見つけた音とリズムをもとに新曲の制作を始める。


 次回、第47話「博多フューチャーズ始動、新入部員の実力」。


 全国準優勝の肩書きは、ここでは通用しない。新しい仲間たちとの競争と協力の中で、正則と亜由美は中学生としての野球を一から学び始める。

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