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「堂島! 頼む! かくまってくれ!」
「断る」
放課後──部室にいきなり飛び込んできた写真部の部長、緒方慎司の懇願を、我が演劇部の部長、堂島桜子は一言で切り捨てる。
「事情くらい聞いてくれよ!」
「聞いても考えは変わらないって、わかってるから」
緒方慎司は再び懇願するのであるが、部長は取りつく島もない。
演劇部の部室には、部長と──僕とオードリーの三人しかいない。次の講演の案を練り終えた部長が台本を執筆する間、部活動は休暇──もとい、部員はそれぞれ発声練習などの自主練に勤しんでおり、幽霊部員もどきの僕とオードリーのみ、一人寂しく執筆する部長の賑やかしとして、部室に残っているというわけである。
「緒方!」
廊下から、緒方慎司を呼ぶ声が響いて──僕らは顔を見あわせる。
「トム」
部長に顎で使われて──僕は部室の扉を開けて、廊下をのぞく。
「たぶん──風紀委員の先輩かな?」
見れば、廊下の先では、腕章をつけた老け顔の生徒が、部室の手前の扉を開いては、その中をのぞいて何やら確認している。
「自首しろ」
「だから! 濡れ衣なんだって!」
部長に自首をうながされて、緒方慎司は冤罪を主張するのであるが──とはいえ、風紀委員に追われているのは事実なのであろう。先の風紀委員が、今にも部室の扉を開くのではないか、と戦々恐々としている。
「鏡の事件! 相談に乗ってやっただろう!?」
続く緒方慎司の言葉に、部長はあからさまな舌打ちで返す。
部長はオードリーに向けて、親指で、くい、と衣装部屋を指す。オードリーは心得たもので、それだけで緒方慎司の首根っこをつかまえて、まるで猫でも扱うかのように、彼を衣装部屋に放り込む。
「写真部の部長の緒方がこなかったか?」
その直後──先に見た風紀委員が、部室の扉を開いて、部長に問いかける。
「いや、きてないよ」
見ればわかるだろう、と部長はわざとらしく部室を見まわしてみせる。風紀委員は納得したようで、衣装部屋までは見ずに立ち去る。
「──助かったよ」
扉の閉まる音で、風紀委員が去ったことがわかったのであろう、衣装部屋から緒方慎司が顔を出す。
「借りは返したぞ」
言って、部長は再び原稿用紙に向かうのであるが。
「それで──何だって風紀委員なんかに追われてるんだ?」
オードリーの方はというと、どうやら読んでいた本にも飽きたようで、緒方慎司に尋ねる。
緒方慎司は、よくぞ聞いてくれたとばかりに、オードリーに向き直り──部長は、余計なことを聞いてくれたものだとばかりに、聞こえよがしなため息をつく。
そうして、緒方慎司は、事のあらましを語り出す。




