戦争理由 4
メゲコゼは自らを這う煙に、気にも留めず、話を続ける。
「出過ぎた物言い、謝罪いたします。しかし、大使にはご理解いただきたい。この度の提案が双方に利があるものであることを。説明の機会をいただけますでしょうか」
彼は少し考えた後に、メゲコゼに和平協定について説明させた。
和平協定の内容は大きく3つだった。
まず1つ目は、無条件終戦及び終戦と同時に発動する相互安全保障の締結。
これは彼の国には手放しで受け入れてもいい内容であった。現時点におけるジーリック連邦からの侵略に対する一切の損害について、第六大陸は補償を要求しないというものであり、なおかつ、ジーリック連邦のために軍事的援助を行う内容であった。援助の内には派兵も含まれており、第六大陸の軍事力を考慮すれば、ジーリック連邦の負担は極めて少ないと思われる。
2つ目は、魔法についての技術援助を含む特別貿易協定の締結。
これも彼の国には問題なく受け入れられるものであった。
いや、喉から手が出るほど欲しいというのが適切だろう。
彼の属するジーリック連邦は他の五大国と違い、唯一『魔法が使えない国』として他国から蔑まれていた。彼らの国では魔法を使うための資源である『マナ』の入手が極めて困難であり、その魔法技術は五大国のみならず、国際情勢においては名前すら上がらない小国と同等とまで言われていた。
そのような国であるにもかかわらず、ジーリック連邦が五大国にまでのし上がれたのは、マナがないことによって生じた『科学魔法』という独自の技術体系によるものが大きい。
魔法が発展する以前の僅かな間だけ栄えた、物理法則を基本として体系化された科学という技術において、魔法という理論を世界に存在する物理法則の一つとして再定義した、科学でも、魔法でもない、新たな技術体系であった。
だが、そのような特異な技術を持っていても、魔法という、世界に広く存在する技術を自分のみが保有していないという強烈な劣等感が、彼らにはあった。
第六大陸は、その魔法を扱うに必要不可欠なマナの保管に関する技術を提供できると説明した。
ジーリック連邦にとって、これほど欲していたものはなかった。
だが、3つ目の条件を聞いたとき、彼の口から思わずくぐもった声が漏れた。
「和平の3つ目の条件。それは、我が『魔界大国』を六つ目の大国として、現五大国協議に参加できる保証をジーリック連邦に求めるものです」




