⑦ 伯爵と女王
「おや、フルカネルリ卿、どうしました?人工衛星のメンテナンスの方は、もう良いのですか?」
尋ねる伯爵。
「うん、実はそれより大事な用事を思い出してね。このタイミングを狙っていたんだよ。」
答えるフルカネルリ卿。
「ほう、それは是非、お聞きしたいですな。」
「……私は、フルカネルリではないのだ。」
「成る程。」
「驚かないのだな?」
「まあ、そんな事だろうと、思ってましたから。」
「私の正体は、ウアジェトなのだ。」
「……やはり、そうでしたか。」
「今までウソをついていて、済まなかった。」
「いいんですよ。貴女にも立場があるんでしょ?だから色々と、秘密を持たなければならない。」
「なんだ。何もかもお見通しって訳か。」
「まあね。最近の貴女の、私に対する距離の詰め方は、明らかにおかしかった。それに、フルカネルリ卿とウアジェト女王には、大きな共通点が有りましたしね。」
「……何だ、それは?」
「それは、核兵器の廃絶を、人生の目標として掲げている点ですよ。」
「……そうか。」
「ところで、ホンモノのフルカネルリ卿とは、いつ入れ替わったんですか?」
「ええっ!?」これは由理子の声だった。
「なんだ。それにも気づいていたのか……数年前だよ。彼は肺ガンで亡くなったんだ。不老不死の手段も提案したが、断られたよ。そんなサン・ジェルマンのような、みっともないマネはしたくないとさ。生前から彼と交流があった私は、以後、地上では彼の姿を借りて、その遺志を継ぐ形になったのだ。」
「それにしても……どうしてまた急に、正体を明かす気になったのですか?別に私は、そのままでも一向に構わなかったのですよ?」
「やはりキミは良いヤツだな。理由ならほら、そこに居る……。」
フルカネルリ卿の姿のウアジェト女王が、そう言いながら、後方のテーブルを指差した。
そこにはメジェドが、ちょこんと可愛らしく座っていた。
「……メジェド神の眼には、何でもお見通しなのさ。ウソはもう通じない。それで観念したという訳だよ。」
「アナタ、そんなところで役に立っていたのね?」
香子が、隣の席からメジェドに囁く。
メジェドが恥ずかしそうな顔をした……ような気がした。
実際の表情は、白い布で隠れていて分からないが……。
「……いいですよ。貴女は強力な戦力だ。今後もチーム・サンジェルマンの一員として、仲良くして下されば、私は構いません。」と太っ腹の伯爵が言った。
「地下世界の統治の仕事がメインだから、そういつもいつも、ここに顔を出す訳には行かないが、それでも良いのか?」
「何をおっしゃいますやら……これまで通りで充分ですとも。」
こうして、フルカネルリ卿の姿のウアジェト女王は、正式に時空調査隊のメンバーに、加えられたのである。




