⑥ 亜空間レストランにて
「伯爵は……きっと気づいているわよ。」
香子が呟いた。
「……そうかもしれないな。」
ウアジェト女王も、観念したようにそう言った。
「貴女も、女王を名乗る程の人物なのだから、けじめのつけ方は、判っているわよね?」
香子が重ねて問う。
「無論だとも。ここでの用事を済ませたら、必ず自分で伯爵に告白し、謝罪するよ。」
ウアジェト女王は、香子と由理子、そしていつの間にか、その傍らに現れてコチラをジッと見つめる、メジェドに対して、そう言って頷いた。
「そう。なら、良いわ……ユッコ、帰りましょう。」
彼女は妹に声を掛けると、あっさりとその場を去って行った。後ろからメジェドも、トコトコ歩いてついて行く。
あとには、いささか途方に暮れたようにも見える、爬虫類族の女王だけが、一人残されたのだった。
二人でビートルに戻ると、由理子は早速、帰還シークエンスに入った。メジェドもしれっと、香子の後ろに座っている。
「あのう……コレ、放っといていいのかな?」
由理子が視線で示しながら、香子に尋ねる。
「メジェドの事なら、気にしないで。多分、この子は今、この世界の諸々を学習中なのよ。」
もうすっかり、母親気分の香子であった。
無事に、名護屋テレビ塔の、亜空間レストランに戻って来た二人は、コーヒーブレイクとあいなった。
同じテーブルに落ち着いた香子、由理子、メジェド以外、みんな出払っている。バー・カウンター内には、ジャンヌ・ダルクが入っていた。
「ジャンヌさん、他のメンバーは?」由理子が尋ねる。
「伯爵と鷹志さんは、地下の研究室で作業中です。他の方は、それぞれみんな、調査に出かけたみたいですよ。」
そんな風に彼女が答えた時、ちょうどそこへ、エレベーターからその二人が、楽しそうに喋りながら出て来た。
「やあ、鷹志君のおかげで、今日の研究もはかどりましたよ。」と伯爵。
「いやいや、伯爵の的確なアドバイスで、僕も気がついたんですよ。」と鷹志。
そこで伯爵が、テーブルの姉妹に気がついた。
「……ああ、お二人さん、おかえりなさい。調査の結果はどうでしたか?」
「それなんですけど……レンデルシャムの森事件で、ちょっとした出会いが有りまして。」
由理子が思わず答える。
「ユッコ。今言わなくてもいいわよ。それは、本人から言わせましょう。」
慌てて香子が引き留める。
その瞬間、まるでそのタイミングを待っていたかのように、どこからともなくフルカネルリ卿が、みんなの目の前に現れたのだ。




