④ 気になる事象
「なかなか休みが取れないから、このままついでに調査に出かけたいんだけど、ユッコ、付き合ってくれる?」という香子の依頼に、由理子は快く答えた。
「いいよ。伯爵からお許しが出るなら。」
「どうぞ、どうぞ。教育公務員は、休みを1日取るのも大変ですものねえ?レストランのフロアは、ジャンヌさんやカグヤさんが手伝ってくれてますから……赤いビートルを使ってくれていいですよ。」
サン・ジェルマンもすぐに許可を出した。
「じゃあ、早速行こうか?お姉ちゃん。」
由理子は姉に声を掛け、軽快な足取りでエレベーターに乗った。
もちろん今日も彼女は、赤いウィッグにメイド服である。
いつまでそんなファッションを続けるのかは、みんな訊かない約束である。
地下駐車場で、二人は赤いワーゲンビートルに乗り込んだ。
そして、未だに運転免許を取得していない助手席の香子が、センターコンソールパネルに、目的地の座標を下記のように打ち込む。
西暦1980年12月27日
時刻03時00分
北緯52度05分
東経01度27分
「じゃあ、行こうか?」
由理子はそう言うと、クルマを地下駐車場から出し、いつものように光学迷彩を掛けて垂直上昇させ、上空で時空転移装置のスイッチを入れた。
移動中、運転席の由理子が姉に尋ねる。
「ところでお姉ちゃん、どこへ行くのかな?」
「目的地は、英国サフォーク州のレンデルシャムの森よ。これから、ちょっとした事件が起きるのよ。それについては、貴女の見解も訊いてみたいところね。」
やがてビートルは、とある森の上空へ出た。
時刻は未明だから、当然まだ暗い。
そこに突然、直径3m程の大きさの、三角形の未確認飛行物体が現れたのだ。それは青や赤の光を放ちながら、ゆっくりと森へ降下してい行った。
「ユッコ、後を追いかけて。」
香子に言われるまでもなく、由理子は既にビートルを降下させていた。
そのUFOは、森の中腹の、ちょっとした広場になっている場所に、着陸していた。由理子も、光学迷彩を透明モードにしたまま、近くにビートルを着陸させた。
件のUFOから、誰か出てきている。
そいつは、銀色の宇宙服のようなモノを身にまとっていて、頭にもバイザー付きのヘルメットを被っているから、顔が見えない。どうやら、乗り物の外板部分の点検をしているようだ。
香子と由理子が、その様子を木陰に隠れて観察していると、やがて近くのウッドブリッジ基地から、3名のパトロール兵がやって来たのだった。




