③ 我々は家族だから
「おお、香子さん、ようこそ。お久しぶりですねえ。」
早速サン・ジェルマンが、にこやかに出迎えてくれた。
しかし、彼の次のセリフに、香子は驚く事になる。
「今日はついに、彼を連れて来たのですね?」
「えっ!?」
香子が振り返ると、そこにはメジェドが居た。
これまでに、自宅付近と職場以外では、ソレが姿を現す事が無かったので、彼女自身、少々驚いていた。いや、それ以上に、自分以外の人物に、初めてメジェドが認識された事に、驚きを隠せなかった。
「あのう……伯爵、コレが見えているんですか?」
おずおずと尋ねる香子。
「何を驚いているんです?そりゃあ見えるでしょう。ねえ、皆さん?」
伯爵はレストラン内を振り返って、他のメンバーに同意を求める。
すると、その場に居た者は皆、一様に頷いていた。
「私の職場では、このメジェドは、他の誰にも認識されないんですけど……。」
香子が呟くと、それに鷹志が答えた。
「ああ、それは多分、メジェド自身が家族と認めた者にしか、その姿を見せないからなんですよ。」
「鷹志君、相変わらず良く勉強してますねえ。」
すかさず、伯爵が褒める。
「ええ、まあ。僕にも見えているのが、ちょっと嬉しいんですけどね?他の皆さんには、ほら、ウチなる古代エジプトの神々が憑いている訳ですから……僕なんか、タダの名前だけのスサノオノミコトですし。」
「あら、私たちにも見えているわよ。ねえ?」京子がカグヤとジャンヌに同意を求めると、二人とも大きく頷いた。どうやら本当のようだ。
「……全てはメジェドの判断に拠ります。」伯爵が付け加える。
「因みに、私にも見えるぞ。」フルカネルリ卿が言う。
「キミは、その万能片眼鏡の性能のおかげだろう?」伯爵が素早く突っ込む。
香子はこれがここ数日の中で、何だか一番ホッとした瞬間だった。
「ねえ伯爵、これは前にも訊いたと思うんだけど……このメジェド、ほっといても大丈夫なんですよねえ?」
「メジェドは、自由な存在……そして、例え古代エジプトの神々と言えども、不可侵の存在なのです。ですから、ほっといても大丈夫……と言うよりは、どうする事も出来ない、と言うのが正直なところなんですよ。まあ、少なくとも、我々に危害を及ぼす事は無い筈です。」
サン・ジェルマンとしては、そう答えるしかないようだった。
香子としては、取り敢えずそれで納得する事にした。
(まあ、いざとなったら、私の事を守ってくれそうな感じはするしね?)




