㉔ 立ちはだかる者
チュパカブラがまさに、ヤギたちに襲い掛かろうとしたその時、ソイツとヤギ小屋の間に割って入る、小柄な白い影が出現した。
ソレはメジェドだった。
"中南米のUMA対ナゾの白い神"。
まるでそれは、昔流行った特撮映画のワンシーンのようだった。
ヤギ小屋の前で睨み合う両者。
どちらも一歩も譲らない構えに見えた。
そこへ由理子と京子も近づく。
チュパカブラが、こちらに気がついた。
そしてソイツが一瞬で向きを変え、驚異的な跳躍力で二人の所へ向かって来る。しかしまたもや、ソレより更に素早く、メジェドが間に割って入った。またしても睨み合いなる。
やがて諦めたのか、それ程空腹でも無かったのか、チュパカブラは、パッと向きを変えると、飛び跳ねて闇の中に消えて行った。対してメジェドは、そのまま二人の前に、まるで守護神のように居残った。
そして彼は、チラリと由理子の方を見た。
「うん、分かったわ。ありがとう。」
由理子は彼にお礼を言った。
「テレパシーなのね?」
京子が彼女に尋ねる。
「ハイ。"アイツは見境無いから気をつけて"って。」
「アイツって、チュパカブラね?」
「そうです。それにアレは、あんな姿だけど、悪魔ではないそうです。」
「もしも悪魔なら、問答無用で、メジェドが眼からビームを出してるものね?」
「メジェド君も、ちゃんと攻撃対象を見極めて、行動しているみたいです。もちろん、さっきのアレが、私たちに何かしたら、動くつもりだったらしいです。」
「まったく……頼もしい事を言うじゃない?」
京子がそう言うと、メジェドもまんざらでも無い顔をした……ように見えた。いや、実際には見えないが。
「クルマに戻りましょうか。」
由理子の一言で我に返り、京子もメジェドもビートルの車内に戻った。そしてメジェドは、お決まりの後席に陣取る。
由理子がおもむろに、センターコンソールパネルの、とあるスイッチを入れた。するとモニターに、この近辺の地図が映し出された。その地図の中央に、赤く光る点が有る。
「さっきチュパカブラに、蚤型発信機を投げ付けておいたんですよ。」
由理子がウインクして言う。
「あら、いつの間に……アナタも中々ヤルようになったわね?」
流石の京子も舌を巻いた。
「お姉様、ちょっとアレの様子を、見に行きましょう。」
由理子はそう言うと、赤いビートルに光学迷彩を掛けて、動力を飛行モードに切り替えた。




