㉑ 我々が学ぶべき事
「……ですから、皆ついついジタバタ暴れ、その結果、あんな状況になります。」
テスラが言うのは、壁と融合した海兵隊員たちの事だろう。"スタートレック"の転送装置だって、じっとしていなければいけないのだ。そりゃあそうだろう。
鷹志がそんな事を思い出していた時、ふと隣の座席に目をやると、そこに頭からスッポリと白い布を被った、小柄な人物が座っていた。
「うわっ!」彼は思わず、大声を出してしまった。
「どうしました、鷹志君?うわっ!」
サン・ジェルマンもテスラも驚いた。
そこに居たのは、例によってメジェドだった。
恐らく彼も、この人類の愚かな所業を、確認しに来たのだろう。それにしても、いつもながら、突然の登場である。実に人騒がせな振る舞いだ。
何はともあれ、しばらく現場の状況を観察した後、黒いビートルは、帰路についた。
時空転位中の助手席でテスラが呟いた。
「話には聞いていましたが、想像以上に悲惨な状況でしたね。」
それに伯爵が答える。
「ニコラ・テスラという、"金の玉子を生むニワトリ"を殺した罰ですよ。自業自得です。」
「しかし、海兵隊員たちに、罪は無い。」
「……確かに。無茶な命令をする者に雇われた彼等には、同情を禁じ得ませんね。」
「なあ、キミもそう思うだろう?メジェド君。」
テスラが後部座席を振り返って、小柄な神に話し掛ける。
当のメジェドは、何時ものように無言だが、隣で見ていた鷹志には、かすかに頷いたように見えた。コレは彼にとって画期的な事だった。やっぱりユリちゃんの影響かな?鷹志はそう思い、今更ながら、我が妻のチカラの偉大さを感じた。
「テスラコイルを正しく使用すれば、タイムマシンの製造も、夢ではないのにな……実に惜しい事だ。」
テスラがまた呟いた。
「おかげ様で。アナタの研究からヒントを頂いて、私は目出度く、その恩恵に預かっております。」
伯爵がまた、答えた。
「うん、キミなら安心だ。"大いなるチカラには、大いなる責任が伴う"事を知っているだろうしな?」
「スパイダーマンの叔父さんの名言ですね?私もソレ、大好きな言葉です。」
サンジェルマンは、少年のような笑顔を見せた。
不老不死で天才物理学者のサン・ジェルマンも、ニコラ・テスラの前では、ただのファンなのだ。大好きな"推し"に褒められて、すっかりご満悦なのであった。
「……だから鷹志君にも、来てもらったのですよ。」
そして後部座席を振り返った伯爵は、最後にそう言ったのである。
(その"だから"は、今の文脈中のどこに掛る"だから"なのかな?)
そんな疑問を抱きつつ、帰路に向かう鷹志のであった。




