⑳ 悲惨な結末
一部始終を見ていた鷹志は、あっけにとられていた。
この実験は都市伝説になっていて、話には散々聞かされていたのだ。しかし、実際に目の当たりにすると、その事実に圧倒されたのである。
あんな大きな軍艦が、一瞬で消えてしまうなんて……。
しかもアレは、遥か遠くの、バージニア州のノーフォーク海軍基地に、瞬間移動したとされている。
そしてあと十数分もしたら、ここへ戻って来るのだ。
「鷹志君。ここから先は、些か悲惨なモノを見る事になります。だから心の準備をしておいて下さい。」
珍しく伯爵が、前もってそんな事を言う。
「……解っています。」
鷹志はソレについても、さんざん聞かされていた。
「生半可な理論や技術で実験に取り組むと、こんな悲劇が起こるという、悪い例として、心に刻んでいただければ……。」
テスラもそう言った。
少し眼下の様子を少し見守っていると、やがて川面が白く光り始め、その光が緑色になり、ソレが消えると、そこに先程の、エルドリッジ号が戻って来ていた。
鷹志がソレをパッと見た感じ、最初に比べて、大した変化が無い様に思えた。しかし、良く観察すると、船体のところどころに、小さな破損が有るようだ。それに水蒸気だろうか?あちこちから、小さな煙が上がっていた。
「もう少し、近づいてみましょう。」
伯爵がそう言って、ビートルの高度を下げ、護衛駆逐艦を俯瞰ではなく、並行に見える位置まで降りた位置で、ホバリングさせた。もちろんコチラの光学迷彩は、透明モードのままだから、周りの者に気づかれる心配は無かった。
すると、恐れていたモノが、ハッキリと見えてきた。その身体が、船体の壁に融合した、海兵隊のメンバーたちだ。それはまるで、金属の壁から、ヒトの腕や脚や頭が、生えているような光景だった。
どんなオバケ屋敷も、コレよりはマシだろう。甲板に倒れている者は、黒焦げに炭化していたり、逆に凍りついていたりしていた。誰一人、無事に済んだ者は居ないようだ。どの顔も恐怖に歪んでいた。まるで地獄絵図だ。
「装置の作動中は、それぞれの船員が、自分の持ち場で、動かずにじっと我慢していれば、何もモンダイは無いはずなんです。」
その状況を眺めつつ、テスラが言う。
「ただ、自分の身体や仲間たちが、透明化して見えたり、その他にも色々と、異常なモノが見えたり、聞こえたりするので、冷静さを保つのは難しいのです。だから私は、人体に深刻な被害を及ぼす恐れが有ると、進言していたのですが……。」
「そう……なんですね?」
鷹志はそれだけのセリフを、やっと口にした。




