⑱ テスラの宿題
二コラ・テスラは、サン・ジェルマン伯爵に救出されてからずっと、客人として好きな研究を続けながら、名護屋テレビ塔の地下で暮らしていた。(第11巻 参照)そしてその研究成果は、これまで数々の機材として、チーム・サン・ジェルマンの活動を、裏から支えて来たのだ。もちろん彼は健康のために、時々こっそり地上に出て、久屋大通公園を散歩したりしている。歩く事は脳の健康に良いのである。
東京や大阪と違って、大いなる田舎であるここ名護屋市では、著名な偉人がウロウロしていても、注目を集める心配が無いから素敵だ。その証拠に、未だに、誰も伯爵の存在に気づかないのだ。まあ、仮に気がついても、余程の中二病でもない限り、まさかと思う方が普通だが……。
さて、そんなテスラとサン・ジェルマンの二人にとって、宿題のようになっている出来事が一つ有った。それはあの、レインボー・プロジェクトの事である。
1994年9月17日の土曜日。時刻は午前6時頃。
伯爵はいつものように、今ではすっかりテスラの日課になっている、朝の散歩に付き合って、久屋大通公園を歩いていた。二人とも、木々が生い茂る都市公園を、独り占めできるようなこの時間帯が好きだった。
のんびり連れ立って歩きながら、ふとテスラが呟く。
「……やはり、自分の眼で確かめたいものです。」
「何をですか?」尋ねる伯爵。
「あの、フィラデルフィアでの実験ですよ。」
テスラが答える。
「ああ、貴方を計画から追い出したあげく、貴方の発明したテスラコイルを、勝手に3つも使って行った実験ですね?」
「うん、そうだよ。失敗だったとは聞いているが……後学のために、見ておきたいんだ。」
「アレを見に行くなら、誰を連れて行きましょうか?」
「もちろんキミには来てもらうとして、そうだな……やはり杉浦鷹志君だろうね?」
「イイですね。解りました。早速明日、行けるように手配しておきましょう。」
そんな訳で、翌朝、サン・ジェルマンに呼び出された杉浦鷹志は、地下駐車場の、黒いワーゲンビートルの後席に座って居た。運転席には伯爵、助手席にはあのニコラ・テスラが座って居る。彼にとっては夢のような同乗者だった。
「今日は、お誘いありがとうございます……でも、僕なんかが一緒で、お二人のお邪魔になりませんか?」
思わず弱気な発言をする鷹志。
「いや、むしろ、キミにこそ見て欲しいモノがあるのだよ。」
すっかり恐縮している彼に、テスラがそう言った。




