⑰ コーヒーブレイク
その後、由理子の赤いビートルは、何事もなく、無事に名護屋テレビ塔の地下駐車場まで戻って来た。
エレベーターで、亜空間レストランまで上がって来ると、由理子は早速、サン・ジェルマンに、二つの調査について報告した。コーヒーを飲みながら、それを隣で聞いていた鷹志は、ふと自分の右側の席を見て、ギョッとした。
そこには、いつの間にか、何食わぬ顔をして……いや、顔は見えないが……メジェドがチョコンと座って、由理子の話を聞いていたのだ。
「ユリちゃん、メジェドがここに……。」
鷹志が言いかけると、食い気味に由理子が動いた。
「えっ、どこどこ?……ああ、メジェド君、久しぶりねえ。元気にしてた?」
そう言いながら席を立った彼女は、メジェドの肩越しに……いや、肩は無いが……その布を被った頭を、撫で撫でした。メジェドもされるがままで、まんざらでも無い様子だ。
「えっ、いつからキミたち、そんなに仲良くなったの?」
「私には、ほら、テレパシー能力が有るから……例えこの子が喋らなくても、少しでも心を開いてくれれば、アッと言う間に、ね?」
「へえ、やっぱりちょっと羨ましいな。」
「まあ、知らない方が、幸せな事も、世の中には確かにたくさん有るけどね。」
由理子はそう言ってウインクした。
恐らくメジェドは、例のUFOやモケーレ・ムベンベに対する、由理子の関わり方が気に入ったのだろう。ユリちゃんとメジェドか。組み合わせとしては、最強な感じもするな。鷹志はつい、ヘンな想像をしてしまった。
何を考えてるんだ、僕は。ユリちゃんのベストパートナーは僕の筈じゃないか。そんな彼の、小さな葛藤を知ってか知らずか、由理子が話し掛けて来る。
「ねえ、鷹志。」
「何だい?ユリちゃん。」
「一回だけなんて言わないで、これからも、悪魔関係以外の調査には、付き合ってよね?」
「ああ、うん。」
「危なそうなら、メジェド君にも来てもらうから。」
いよいよ彼の、ベストパートナーの座が危なそうである。
「分かったよ。研究と半々ぐらいの頻度までなら……。」
「わ〜い、やったあ!メジェド君もよろしくね?」
メジェドの表情は、相変わらず読めないが、由理子の反応を見る限りは、承諾したようである。
こうして、目出度く3人組になったこのメンバーが、次なる歴史上の秘密に挑む事になるのだが、それは、また、別の話なのである。




