⑭ 未確認飛行物体
「あれは……UFO?」鷹志が思わず呟いた。
V字型の飛行物体の全幅は、およそ500m程か?
かなり大きなモノだった。
由理子が、解説を始めた。
「UFO……いわゆる未確認飛行物体と呼ばれているモノの内、多くはタイムマシン。それ以外は、だいたい異世界や地球外部からの訪問者よ。あとそれに少しだけ、空中浮遊生物も。」
「あれっ、随分詳しいんだね?」少し驚く鷹志。
「勿論、伯爵からの受け売りで〜す。」
「……やっぱり。さては先に伯爵が来て、下見したんだね?」
「だって伯爵に、鷹志の好きなモノを訊いたら、UFOだよって……。」
「ああ、そうだよ。大好物さ。」
「神童と呼ばれる程賢かった、少年時代からずっと、愛読書は"月刊ムー"だったんだよって。」
「うん、それも事実だよ。」
「……で、ここの調査をオススメされたって訳。」
「成る程、ありがとう。」
鷹志はそれだけ言うと、再びUFOに注目した。
見たところ、光学迷彩と、推進力系が故障しているようだ。そうでなければ、こんな悪目立ちするような、丸見えでスローペースの飛行はしないだろう。
目視出来る情報から判断する限り、どうやら地球外部のモノではないようだ。むしろ、ちょっとだけ未来の技術を使用した、タイムマシンなのだろう。しかも大型の観光船だ。一つ一つの光の中に、複数の人影が見えた。観測用の7つの窓という訳だ。
さぞや船長は困っている事だろう……そこまで想像した鷹志は、由理子に言った。
「ユリちゃん、アレを、僕らのビートルで先導しよう……出来るだけ、目立たない場所まで。」
「あら、奇遇ね。私もたった今、そう思ったところなの。」ニコニコ笑いながら、由理子もそう言ったのだ。
彼女は、そのUFOの、V字型の先端部分の前に、ビートルを移動させると、光学迷彩を解除した。そして、ソレを先導しながら、州間高速道路10号線の上空を、南東の山岳部に向かってゆっくりと移動した。
よしよし、件のUFOもちゃんとついて来ている。
やがて山を超えた辺りで、不具合が直ったのか、7つのライトを5回点滅させた後、ソレは垂直上昇して消えて行った。今のはまさか、"ア・イ・シ・テ・ル"のサインじゃないよな?
ふと時計を見ると、時刻はもう、23時を回っていた。しかし、あれ程ゆっくりと、上空を横切って行ったのだ。今夜のUFOの目撃者は、1万人は下らないだろう。車窓からチラ見しただけでも、地上の人たちが、大騒ぎしているのが分かった。
この事件は、どんな顛末を迎えたのだろう?帰ったら伯爵に訊かなくては。助手席でそんな事を思う鷹志を乗せたまま、由理子のビートルは帰路についた……訳ではなかった!




