⑫ 知らない戦士たち
「……私たちの他にも、似たような活動をしているヒトが居たのね?」
ソレを読んだ雪子が、しみじみとした感じで言う。
「それどころか、彼は、いわゆる"悪魔祓い"に特化した活動ぶりだったようですね。ひょっとしたら、世の中のエクソシストの多くは、私たちと同じ狙いを持って、働いているかもしれませんね?」
サン・ジェルマンも、感慨深気だった。
「まあ、この広大な時空の中で、こんな活動が出来るのは、私たちだけしか居ない、だなんて考えるのは、確かに傲慢よね?」
雪子がまたそう言った。
「まだまだ孤独に、人知れず戦う"同志"が、どこかに居るかもですね……次はその方が力尽きる前に、出逢って手助けしてみたいものです。」
伯爵は、そんな希望を言った。
「……さあ、帰りましょうか?」
「そうね。何だか戦闘意欲も、すっかり削がれちゃったわ。」
雪子はそう言うと、ビートルの帰還シークエンスのスイッチを入れた。
「どんなに仕事熱心でも、やはり、自分のキャパを越えてはいけませんね。」
時空転位中に、助手席のサン・ジェルマンが呟いた。
「死んだら、元も子もないって事ね?……でも多分、単独行動の彼の立ち場上、ソレしか手が無かったんでしょうね。」
雪子も自分なりの解釈を述べる。
「まあ、そのためのフォワードとバックアップの"ツーマンセル"です。私たちは、最低二人以上で行動するように、今後も出来るだけ、心掛けたいものです。」
伯爵が、戒めめいた事を言った。
これまで、ついつい、単独行動をしがちだった雪子としては、耳の痛い話だ。だが、自分が不老不死である事を、過信してはいけないと、今日までの闘いで、自分なりに、学習して来た自負は有る。
見た目は17歳でも、彼女ももうイイ大人だ。最早つまらないプライドなどに、こだわっていては、いけないのだ。
「……あ、そうだ。忘れるところだったわ。」
雪子は、後部座席を振り返って言った。
「メジェド君、さっきは助けてくれてありがとう。おかげで命拾いしたわ。これからも、チーム・サン・ジェルマンの仲間として、よろしくね?」
言われた当のメジェドは、ドヤ顔になった……いや、実際には分からないが。少なくとも嬉しそうに見えた……ような気がした。
こうして、シルバーのワーゲンビートルは、無事に名護屋テレビ塔に帰って行ったのである。




