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屋敷の図書室に、肖像画があった。
廊下のものとは違う、小さな肖像画。真鍮の額縁に収まった絵。卓の上に置かれていて、壁には掛けられていなかった。
絵の中の男は、二十代半ばから後半に見えた。黒い軍服を着ていた。表情は厳しく、口が一文字に結ばれていた。爛々と輝くような目が印象的だった。琥珀色の目で、何かを見つめていた。遠くを。あるいは見つめているのではなくて、ただ視線が向いているだけで、本当は何も見ていないのかもしれなかった。
アルノはその絵を長い時間、見ていた。
た
後でルーカスに聞いた。
「テオドールの肖像画だ」とルーカスは言った。「二年前に描かせたと聞いた」
「似ていませんね」
ルーカスが少し目を細めた。
「……よく似ていると、当時は思ったが」
「どこが似ていますか」
「口の結び方とか…」
「それは表情が似ているのであって、顔が似ているのではないでしょう」
ルーカスは少し間を置いてから「なるほど」と言った。「鋭い」
「この絵の人は、もっと違う顔をしていた気がする」
「気がする、というのは」
「なんとなく」とアルノは言った。「なんとなく、こうじゃない気がする」
ルーカスは何も言わなかった。
しかし、その沈黙の中に、何かが入っていた気がした。




