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屋敷の庭には、古い東屋があった。
石造りで、蔓植物に絡まれていて、屋根の一部が崩れていた。ずっと昔からあるようだった。アルノはそこへ、毎朝出かけるようになった。別に理由があったわけではない。
ただ、人のいない場所にいたかった。
ある朝、ルーカスが東屋まで来た。
「朝はいつもここにいるな」と彼は言った。
「あなたも毎朝ここに来ますね」とアルノは返した。
「…様子を、見に来ているだけだ」
「それは知っています。…ありがとうございます」
ルーカスは東屋の入口に立ったまま、中には入ってこなかった。長い脚を組んで、石の柱にもたれかかった。
「ここが気に入ったのか」
「落ち着くんです。なぜかはわからないけれど」
「……テオドールも、よくここにいた」
アルノはルーカスから目を逸さなかった。
「どんな人でしたか」
ルーカスは少し間を置いた。
「落ち着いた奴で……本をよく読んでいた。剣も強かった。けれど、あまり笑わなかったな」
「僕とは似ていませんでしたか」
「……正反対だったかもな」
「どちらがよく笑いましたか」
「アルノだ」とルーカスは即答した。「圧倒的に」
「今はあまり笑わないのに」
「記憶がないからだろう。何がおかしいかわからなければ笑えない」
アルノは東屋の天井を見上げた。蔓が垂れ下がっていて、その先に空が見えた。
「何がおかしかったんだろう、僕は」
「たいていのことが、お前にはおかしかったようだ」
「たとえば」
ルーカスは少し困ったような間を置いた。
「……俺が転んだところを見て、三分ほど笑い続けたことがある」
「三分」
「計っていたわけではない。体感として」
アルノは蔓と空を見たまま、小さく笑った。ほんの少し、口の端が動いただけだったが。
ルーカスが気づいたかどうかは、わからなかった。




