22
アルノは、ルーカスの胸の中で、泣いていた。
声は出なかった。涙だけが出ていた。止められなかった。止めようとも思わなかった。
ルーカスは何も言わなかった。
ただ背中に手を当てて、ゆっくりと撫でた。
それだけだった。それだけで、息ができた。
どのくらいそうしていたか、わからなかった。森の気配が静かになって、風が弱くなって、空の色が変わり始めた頃、アルノはゆっくりとルーカスから離れた。
ルーカスはアルノが体を離すのを止めなかった。しかし手は、すぐには引かず肩の上に少しの間、残った。
「.......知っていましたか」
アルノは聞いた。目を合わせずに。
「泣くと息が苦しくなること。兄様に、抱きしめてもらっていたこと」
「知らなかった」とルーカスは言った。
「テオドールから聞いたことはなかった」
「そうですか」
「でも」
ルーカスは少し間を置いた。
「お前が幼い頃、稽古のたびに泣いていたのは見ていた。そのたびにテオドールが稽古場から連れ出して、しばらくして、お前が目を赤くして戻ってくるのも」
アルノは空を見た。雲の隙間から、月が覗いていた。
アルノは深く息を吸った。きちんと入ってきた。
「葬儀の夜、泣いて、息が苦しくなりました。もう誰にも抱きしめてもらえないと思って……それなら、こんな記憶は不要だと思った。泣いてしまう自分ごと、手放してしまおうと思った。それが記憶を手放した理由だと、今わかりました」
ルーカスは黙っていた。
「おかしいですか」
「おかしくない」とルーカスはすぐに言った。
「でも、本当は」
アルノは少し笑った。目が赤いまま、笑った。
「泣いてよかったんだと思います。息が苦しくなっても。ただ、僕には誰もいないと思っていたので」
「俺がいた」とルーカスは言った。
声が少し低くなった。「あの夜も、ずっと外にいた」
「知らなかった」
「お前が首を振ったから、入らなかった。けれど、ずっと近くにいた」
アルノはルーカスを見た。
ルーカスは真っ直ぐにアルノを見ていた。
「次からは」と彼は言った。「首を振るな」
アルノは少し間を置いた。
「振りません」と言った。
二人で並んで、馬のところへ戻った。
帰り道、アルノはずっと、胸の中が不思議な温度をしていることに気づいていた。
重さはあった。しかしそれはもう、水を含んだ布ではなかった。もっと、体の一部に近い重さだった。
持って帰れる重さだった。




