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秋の終わりに、アルノは屋敷の地下に下りた。

石の階段を下りると、薄暗い部屋があって、棚に古い書類が並んでいた。古い家の記録だった。

テオドールの書き物もあった。

几帳面な字だった。規則正しく、正確で、感情の乗らない文字だった。

領地の記録、費用の計算、外交の記録。どれも実務的な内容ばかりだった。

最後の棚の一番奥に、別の紙があった。

折り畳まれた、小さな紙だった。公的な書類とは違う、薄い紙だった。

開いた。

文字は少なかった。


眠っているとき、お前は子供の顔をする。それだけのことが、ずっと言えなかった。お前が大人になろうとするほど、


日付はなかった。宛先も書かれていなかった。

アルノはその紙を、石の床に膝をついて、長い時間、見ていた。蝋燭の炎が揺れた。


兄様、と思った。

あの絵の男ではなく、パンを乱暴に引きちぎっていた手の持ち主が。

植物図鑑を取り寄せた人間が。声がだんだん低くなる人間が。東屋にここで待つと刻んだ人間が。気づかれないように菓子を余分に買っていた人間が。


言えなかった。

ただそれだけのことが。

アルノは紙を折り畳んだ。胸の内ポケットに入れた。

立ち上がって、燭台を持って、階段を上がった。

胸の中の重さが、少しだけ形を変えた。

水を含んだ布ではなくて、もっと違うものになった気がした。


地下から上がってくると、広間にルーカスがいた。

暖炉の前に立って、火を見ていた。アルノが来たことに気づいて振り返った。

「何かあったか」

「地下に行っていました」

「一人でか。暗かっただろう」

「燭台を持っていきました」

ルーカスはアルノの顔を見た。何かを読み取ろうとしているような目だった。

「何を見ていた」

「兄様の書き物を」

ルーカスは少し目を細めた。何も聞かなかった。


アルノは暖炉に近づいた。

「ルーカス」

「ああ」

「兄様は、僕に言えないことがありましたか」

ルーカスはしばらく黙った。

「……たくさん、あったと思う」

「あなたに対して?」

「俺に対しても。お前に対しても。誰に対しても」とルーカスは言った。「そういう奴だった」

アルノは炎を見た。

「損な性格ですね」とまた言った。

「二度目だぞ」

「二度言うほど、そう思います」

ルーカスは火の方を向いて、小さく笑った。今度はアルノに見えた。

「……以前のお前にもよくそう言われていた」

「僕が?」

「しょっちゅう。損な性格だ、兄様は、と」

「怒りませんでしたか」

「怒らなかった。少し、嬉しそうな顔をしていた」

アルノは炎を見ていた。

「そうですか」と言った。

それだけ言って、それ以上は言わなかった。

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