16
秋になった。
アルノは当主としての仕事を少しずつ覚えていった。
ある日の午後、剣の稽古が終わった後、ルーカスが言った。
「だいぶ戻ってきた」
「剣がですか」
「それもある。でも、そうじゃなくて」
ルーカスは汗を拭きながら、少し言葉を探した。
「顔が戻ってきた。いろんな顔をするようになった」
アルノは木剣を持ったまま、自分の顔に手を当てた。
「どんな顔をしていますか、今」
「少し困っている顔」
「確かに困っています。自分の顔がわからないので」
「記憶のある頃のお前も、よく困った顔をしていた」
「何に困っていたんですか」
「たいていはテオドールのことで」
「具体的には」
ルーカスは少し考えた。
「テオドールが何を考えているかわからない、と言っていた。よく」
「それはわかる気がします」と即座にアルノは言った。「今のあなたも何を考えているかよくわかりません」
ルーカスは少し目を細めた。
「俺のことがか」
「はい」
「それは」と彼は言った。「今まで誰にも言われたことはなかった」
「兄様にも?」
「テオドールはそういうことを言わない」
アルノは木剣を地面に立てて、その柄頭に両手を乗せた。
「ルーカスは今、何を考えていますか」
ルーカスは少し間を置いてから言った。
「お前が戻ってきてよかったと、思っている」
「記憶がまだ戻っていないのに?」
「記憶じゃなくて、お前自身が」
アルノはルーカスではなく木剣の柄頭を見ていた。
「それは」と言った。「なんというか」
「なんというか?」
「うまく言えません」とアルノは言った。「でも、聞けてよかった」




