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テオドールが死んだ経緯を、アルノはヴィルヘルムから聞いた。


二月前の、冬の初めの出来事だった。北の森で、魔獣が出た。この地方には古い時代から、魔の気配が漂う深い森があって、そこから時折、獣が出てきた。普通の獣ではない、呪いを帯びた生き物が。


テオドールはルーカスと共に二つの領の騎士たちを率いて、森へ向かった。三日の戦闘で魔獣を退けた。

三日目の夜、アルノは屋敷で二人を待っていた。


「アルノ様は、その夜のことを」

「覚えていません」とアルノは言った。

「そうでございますね」

老執事は膝の上で手を組み合わせた。

「テオドール様が帰還の途中で倒れられました。呪いが……体の中に入っていたのでしょう。最初は傷だと思っていたのですが。ひどく発熱し、五日目に」

アルノは黙っていた。

「アルノ様は、テオドール様のお傍を離れませんでした。ルーカス様が無理に引き離そうとしても、離れなかった。……テオドール様が亡くなられ、エスターライン家として立派に葬儀を執り行った後アルノ様が倒れて、目が覚めたとき、記憶がなくなっておられた」


窓の外に、夕暮れがやってきていた。空が橙色に染まっていた。

「何かが抜けたんでしょうか」とアルノは言った。独り言のようだった。「記憶ではなくて、何か別の」

「……アルノ様」

「はい」

「失礼を承知で申し上げますが」

「どうぞ」

ヴィルヘルムは膝の上の手を、少しだけ強く握った。

「記憶がなくなったのではなく、記憶を手放されたように、老いた私には見えます」

アルノは窓の外の橙色の空を見ていた。

しばらく何も言わなかった。

「それは」とようやく言った。「とても怖いことですね」

「はい」

「なぜそうしたんでしょう、僕は」

「それは」とヴィルヘルムは言った。「私にはわかりません」

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