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7話

誤字報告ありがとうございます!足向けて寝れません!

 

 どうもこんにちは、ラティエ・ショコルドルです。

 机の上にはノートの他に、受ける卒業試験の種類だけ、教材が陳列している。その一つを手に取り、教材にペタペタと付箋を張っていくモブもといカイン・レルトリッド・ロラン殿、私の婚約者である。仮だけど。



 あのあと、リーティク殿下(第一王子)が使用されていた試験対策ノートは受け取ったが、リュシュラパス殿下(王太子殿下)の封筒は丁寧にお断りした。山勘だろうが、当てが外れる事がない我が国の王太子殿下って。それじゃあその封筒の中身はほぼ答えと同じような物ではないのか。合格はしたいがその行為は私の信条に反する。何よりも、卒業試験を受ける同じ学園の人達とフェアじゃない。


 それにしても、王太子殿下はとんでもない能力(チート)をもっていらしたのね。流石乙女ゲームの攻略者の一人というべきか。年齢も性別も違うけど。

 けれどモブ、王太子殿下が能力(チート)を持っているのを、私なんかに話しても大丈夫なのかしら。



 まあ何れにせよ、断った私に対し、封筒の内容を把握していたらしいカイン様から「それなら僕に任せて」と言われたので慌てて首を横に振るが、私の勉強机に歩きだしノートを一瞥したあとに「ラティエ嬢って習った事をそのまま覚えようとする癖が付いているね。これじゃ余計な情報も多く時間が掛かる。重要なとこだけ僕がある程度振り分けてあげるからこの場を拝借するね」と、てきぱきと動きだしソファーの目の前に置かれた横幅の広い机へと教材を移動していく。



 そして今に至る。仕方なく付箋を完了した教科書に目を通していると「ラティエ嬢は……」と話し掛けられたので、教科書から目を離す。



「世界史が苦手かな。違ってた?」


 目をパチパチさせチョコレート色の瞳と目が合う。世界史の教科書を片手に私を見つめる瞳は、何かを見極めるように私から視線を外さない。まだ数回しか会っていないが、チョコレート色の瞳はいつだって私を真っ直ぐに写すのだ。




「そうですね……。世界史は範囲も広いですし、科目から外すことも考えてたのですが」


 この時、何故か彼から目を離してはいけないような気がした。だからチョコレート色の瞳を真っ直ぐ見返し口を開いた。


「苦手なことと知見を広げることは違いますから」



 ここは乙女ゲームの世界でも、私が精々知っているのはカルティロナ国と学園(ゲームの設定)だけ。ゲームでは他国の情報(設定)はモブの()()からもたらされていた。けれどそこ(設定)からさらに世界は広がっているのだ。


 正直覚えるのが苦手よ。けれど新しいこと(知識)を知ったっていいじゃない。



 真摯に問いに答えてしまった事にハッとしたが、途端モブのチョコレート色の瞳が和らかに、暖かみを持って細められた。



「そうだね。それなら、試験が終わったらもっと()()()()()()みないかい?」



 んん?同じ意味だけど、どういう事?

 首を傾げればモブがはい、と手元に持っていたの教材を渡し、付箋の貼られた世界史が私の手元に収まった。


「実は僕も世界史は苦手だったんだ。でも()()()ではそれは通用しないし。そこで、僕なりに解釈した通史で良ければ、ラティエ嬢の手助けにならないかな?」




 大変です。モブの後ろに後光が見えます。












「王族の長年による圧政によりここで反王族貴族の勢力が民を率いて反乱を起こし、王朝が崩壊したんだ。そして次の時代になった。それがーー」



 モブの教えは、噛み砕いて説明してくれたり、逆に何故それが起こったのか、教科書では詳しく載ってないことと関連して話すので遠回りのように思うが、単語の意味を理解し、歴史そのものを印象付けるやり方で教えてくれた。教え方がとても上手なのだ。





「僕の幼少の頃は、問題を間違えると、よく二番目と三番目の兄弟にからかわれていたんだ。ああ僕は四番目の兄弟でね」

「末っ子ですのね」

「僕の下にあと二人いるよ」

「?!」



 時々雑談も交わしながら続く勉強は苦ではなく、とても楽しいものだった。

 ある程度進んだ所で中断し、お茶の休憩をすることにした。なんと我が家の侍女ではなくモブの側近だという人が運んで来たのだ。ティーセットが運ばれてくるとモブが立ち上がり自身で紅茶を入れだした。



「ああそうだった、我が家では自分の身の回りのことは可能な限り自分でやる慣習でね。叔母上の茶会でも二人は自分達でしてなかったかい?」



 流れるような動作で私の分も入れてくれたモブに、止まっていた思考が動きだし王妃陛下と王太子殿下との茶会を思い出した。そして王城で聞いた侍女の話通りだった。



「言われてみれば確かにですね…。どなたかの影響ですか?」

「これは初代当主から続いていた頃だからざっと400年くらい前かな」



 4世紀!!通史の勉強の最中なので4世紀の規模に驚愕した。4世紀も続く家系ってどういうことよ。今もなお地位を確立している立場とはどういう家系なのよ。本当にモブなの?



「400年経つ今も続く程の家柄とは驚きました。カイン様のレルトリッド家は本当に凄いのですね」

「ロラン」

「え?」

「ロラン家が代々続くんだ」



 どういうことだろうと首を傾げるが、その話題はいつの間にか机に置かれたスイーツの話題になっていた。


「ここ近年のカルティロナ国のスイーツは劇的に進化したね。他国からもこれを目的に訪れる客層が増えているんだ。おもにレシピを知りたい各国の料理人達がね」

考案者(リュシアン)はレシピを公表しますものね」

「そうだね。そして人の流れに活気が付けば行路も改修されていく」

「なるほど、それが今の交易路なのですね」



 モブは何気ない会話にもこうして勉強に関連する内容を入れてくれる。休憩時間もあっという間に過ぎ勉強を再開させた。


 気付けば、部屋の窓から覗く外は日が落ちかけていた。


「今日はここまでかな」


 手元の腕時計を確認しながらモブは立ち上がり、傍に置かれたスーツのジャケットに手を掛けたので慌てて立ち上がる。



「モ、カイン様本日は本当にありがとうございました」

「ラティエ嬢の力になれたようで良かったよ。随分お邪魔しちゃったね」

「いいえ、こちらこそお忙しいのに長い時間留めてしまってすみませんでした」

「いいよ、僕が決めた事だし」



 目元をやんわりと細める姿はやはり後光が見えた。うう、手を合わせ合掌しそうだ……眩しすぎる。



「次回も、としたいところだけど、早まって一時帰国しなくてはいけなくてね」

「何かあったのですか?」


 何か自国でトラブルでもあったのだろうか。眉をさげる私にモブは違うよと首を振った。



「父上が帰国されたんだ」

「現当主様……ですか?」

「そうだね」



 現当主……現当主。何処かでとんでもない事を耳にしたような。凄くつい最近だったはず。どこだっけ。表情に出ていたのかモブはああと納得したように頷いた。


「僕の父上の名はアレク・レルトリッド・ロランだよ」



 アレク……アレク…………。


 その時リティカ・カルティロナ・ロラン王妃陛下の話がよみがえる。


 ーーあらやだ、()()は鼻が利くってだけよ。



「!」

「その様子だと誰かの話と合致したようだね。誰とは聞かないけど」


 乾いた笑いをするモブだったが、互いにそれが誰とは口にしなかった。



「帰国して母上にべったりしている今を逃すと、次にいつ会えるか分からないからね。母上には僕が帰国するまでは、絶対に離さないでと伝えてあるけど。今夜にでも発つ予定なんだ」



 どんな父親なのだ。


 不意に目の前に手を差し出され、当たり前のようにその手に自身の手を重ねた。暖かな体温が私の手を優しく包み込んでくれる。そして私の手を握りチョコレート色の瞳は困った表情で私と見つめ合う。



「少ない時間だったが、ラティエ嬢のことを知れて良かったよ」

「私もです!今日は本当にありがとうございました!」


 モブはめちゃくちゃいい人だった。後光が見えるほど!


 けれどモブは私の答えに少しだけ困ったように微笑めば、重ねられた手に少しだけ力を込められる。


「婚約者として見てくれたかな?()()()()



「~~~~!!」


 目を瞬かせカイン様(モブ)の言葉の意味を理解するのに数秒、一気に頬が赤く染まるのにそこから数秒、何か訳の分からない事を発すのに数十秒。

 ころころと表情を変えるラティエに、カインはその日初めての意地の悪い笑みを見せたのだった。








おや、急に恋愛がひょっこりでてきたぞ。

実はこの小説、恋愛のカテゴリーだとお忘れでしたか?


活動報告に少し7話の突っ込みしてます。

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